「陰陽師」シリーズ、「神々の山嶺」などで知られるベストセラー作家・夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を実写映画化した、日中共同製作映画『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』が話題を呼んでいる。

本作は、天才僧侶・空海と詩人・白楽天(後の白居易)が、中国の唐王朝を震撼させる怪事件の謎を探っていく、史上空前の極上エンターテイメント。中国では昨年12月22日に公開され、すでに興行収入で日本円にして90億を超えるヒットを記録している。監督は、世界的巨匠チェン・カイコー。出演者には、染谷将太、阿部寛、松坂慶子、ホアン・シュアンら、日中オールスター俳優陣が名を連ねている。ここでは、阿倍仲麻呂を演じた阿部寛のコメントを交えながら、本作の撮影秘話をご紹介しよう。

【長安の広大なセットは、なんと東京ドーム8個分!】

(C) 2017 New Classics Media,Kadokawa Corporation,Emperor Motion Pictures,Shengkai Film

物語の舞台は、唐時代の都・長安。昔、長安があった西安をロケハンしたものの、歴史的建造物は観光地化されており、当時の面影を残してはいなかった。そこで、美術スタッフたちはチェン・カイコー監督のアイデアを反映した長安を作り上げるため、広大な沼地を整備してオープンセットを建設。広さは、東京ドーム約8個分にも及び、建築には6年の月日を要した。「東京ドーム8個分とは思えない広さで、もっと大きく感じました。それほど、迫力があるセットでしたね」(阿部寛)

【セットが立派過ぎて、本物のお坊さんが住みついた!】

空海が密教を授かった青龍寺のセットは、チェン・カイコー監督の指示で、外観だけでなく、内装までこだわり抜いて作り上げたもの。撮影後は想定外の珍事が!「セットの完成度が高過ぎて、現在は本物のお坊さんが住みついたらしい。セットが本物のお寺になってしまったという(笑) 僕もそのセットを見ましたが、とても見事な出来でした」(阿部寛)

【監督が阿部寛に求めたのは、少女のような眼差し】

本作で怪事件の謎のカギを握る阿倍仲麻呂は、ほとんどセリフのない難役。「台本に、“15、6歳の少女のような眼差しで楊貴妃を見ている”と書いてあったんです。いまの自分の年齢で(※現在、53歳)、そういう気持ちになれるのか、そういう雰囲気が出せるのかと悩みました。しかも、セリフなしで切ない想いを表現するのはとても難しく、恐怖すら感じました。目の演技は、監督が成立させてくれたと思っています。正直言って、今後、こういう演技は出来ないですね」(阿部寛)

【エキストラが美男美女ばかりだった理由】

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長安の朱雀大街を通って宮城へと向かうシーンや圧巻の豪華さが目を引く極楽の宴のシーンなど、本作には多い時で1000人のエキストラが出演している。中国で映画の撮影をする際、撮影現場近くの住民がエキストラとして参加することがある。そのため、熱意に乏しく、撮影現場に来なかったり、本番中に居眠りをしたりするエキストラもいるそうだ。

しかし、チェン・カイコー監督の現場は、やる気に満ちた美男美女のエキストラばかり。まるで違う雰囲気だったとか。「なぜだろうと思ったら、みんな役者の卵たちで。チェン・カイコー監督の作品に少しでも参加したい、勉強したいという若者が多かった。なので、セットの隅々まで緊張感に満ちた現場でした」(阿部寛)

【阿部寛の身長が小さく見えた!? 不思議現象】

中国人は日本人よりも小柄という印象を持っている方は少なくないだろう。ところが、本作の撮影現場では、その先入観を覆す出来事があったという。「撮影のために泊ったホテルのエレベーターで乗り合わせた人たちが日々、僕と変わらない身長の人が多く、ここだけかな? と思ったら、玄宗皇帝役のチャン・ルーイーやほかの中国人俳優の方々も身長が高かった。極めつけは、エレベーターで現地のバスケ・チームのメンバーたちと乗り合わせたこと。220cmぐらいの大きな人たちに取り囲まれ、明らかに10人くらいの中で自分が一番小さかった。まれな経験でしたね。撮影前は、自分の身長の高さが阿倍仲麻呂を演じる上で障害になるかもしれないと思っていましたが、問題なかったですね」(阿部寛)

【楊貴妃役のチャン・ロンロンは阿部寛の大ファン】

『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993年)のコン・リー、『花の生涯~梅蘭芳~』(2008年)のチャン・ツィイーなど、チェン・カイコー作品のヒロインは、いずれ劣らぬ美女ばかり。本作では、絶世の美女・楊貴妃役に台湾出身の女優チャン・ロンロンが抜擢されている。

彼女は、台湾で日本の作品をたくさん観ており、特に阿部寛の大ファン。「チャン・ロンロンさんは僕が出た日本の作品を見ていてくれて、優しく接してくれました。僕は“楊貴妃を好きになる役”だったので、彼女の気遣いが嬉しかったですね。僕ら日本人が泊っているホテルに上海ガニの差し入れをしてくれた(笑)」(阿部寛)

話題に事欠かない本作。撮影期間5ヵ月、企画立ち上げから約10年の歳月をかけた一大プロジェクトが、日本で日の目を見るのはもうすぐだ。

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映画『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』
2月24日(土)より全国東宝系にて公開
公式サイト:http://ku-kai-movie.jp/
配給/東宝・KADOKAWA
(C) 2017 New Classics Media,Kadokawa Corporation,Emperor Motion Pictures,Shengkai Film

取材・文/田嶋真理 写真/横村彰