3月3日(土)公開の『アイスと雨音』を手掛けた松居監督。若手ながら、『私たちのハァハァ』(2015年)、『ワンダフルワールドエンド』(2015年)で第7回TAMA映画賞最優秀新進監督賞を受賞。2017年のテレビドラマ「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」でもメイン監督・脚本を務めるなど、今最も注目されている32歳といえる。しかし、日本の映画界をしょって立つ新星は松居監督だけではないのだ。

そこで今回は、松居監督同様、きら星のごとく輝く「アラサー」の実力派監督3人をご紹介したい。

(c)「アイスと雨音」実行委員会

計算高き悪童、小林勇貴監督

1990年生まれの小林監督ほど「やんちゃ坊主」という言葉が似合う若手はいないだろう。本物の不良をキャストとして起用した『孤高の遠吠』(2015年)が数々の映画祭に出品されて喝采を浴び、大牟田4人殺害事件を題材とした『全員死刑』(2017年)で満を持して商業映画デビュー。重いテーマにもかかわらず「殺人シーンなのに思わず笑いがこみ上げてしまう」というぶっ飛んだ内容を、映画評論家の町山智浩氏が「計算され尽くした音楽とカメラワーク」「日本のスコセッシの誕生」と絶賛している。

VICE MEDIA JAPANが行っている「作家の脳みそとカメラが直結する<ケータイで撮る>映画プロジェクト」の一環として公開された『ヘドローバ』(2017年)には、小林監督が「ケータイで映画作ってるの、軽薄な感じがすごいイイですよね、なんか。厳かで芸術的なものみたいなもんを踏んづけてる感じが」とコメントを寄せ、“悪童”ぶりを遺憾なく発揮している。

揺れ動く女子の代弁者、山戸結希監督

1989年生まれの女性監督・山戸監督は鮮烈なデビューを飾っている。独学で映画を学び、大学の映研時代に撮影した『あの娘が海辺で踊ってる』(2012年)が第24回東京学生映画祭で審査員特別賞を受賞。2014年に公開された『5つ数えれば君の夢』は渋谷シネマライズの監督最年少記録となり、第24回日本映画プロフェッショナル大賞で新人監督賞を授与されるなど、華々しい成績だ。SNS上で「山戸ファン」を公言している著名人も少なくない。

山戸監督作品の魅力は、思春期の少女の言葉にならない葛藤や繊細な胸の内を生々しく、美しく描き出す表現力にある。哲学科出身らしい独特の台詞回しと瑞々しい感性が、若い女性を中心に多くのファンやクリエイターの心を鷲掴みにするのだろう。2016年には『溺れるナイフ』で初めて少女漫画の実写化に挑み、10代の少年少女の、刃物のような心を見事に描ききっている。

幻想と現実、静と動の融合で魅せる、安川有果監督

1986年生まれ。母を失った少女の心に潜む怪物を表現した『Dressing Up』(2015年)で第25回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞したのが安川有果監督だ。『Dressing Up』では、母親の狂気が娘の内面へと徐々に入り込み一体化していく様を、「リアル」と「ファンタジー」を絶妙なバランスで融け合わせ、グロテスクでありながら英文学のような気品さえ感じさせる映像に仕上げた。

安川監督が映画監督としての道を大きく踏み出すために一役買った故・沖島勲監督は、その引きずり込まれるような独特のカメラワークを「将来、日本のアントニオーニになるかもしれない」と、イタリア映画の巨匠ミケランジェロ・アントニオーニに例え、高く評価している。2017年の第30回東京国際映画祭で上映された『永遠の少女』でも、繊細な表現と脚本の手腕をいかんなく発揮、幻想と現実の入り混じる不思議な空気感で、観る者を魅了した。

(c)「アイスと雨音」実行委員会

映画界に一石を投じる若手監督たち。いよいよ公開となる松居大悟監督の最新作『アイスと雨音』は、小さな町で演劇に打ち込む少年少女達を描いたヒューマン・ドラマだ。せっかく決まった初舞台が急遽中止になり、現実と虚構の間でもがきあがく若者達をテーマにしたワンカット74分の衝撃作。そのリアルなストーリーはもちろん、プロアマ不問の公募によりキャストが選ばれており、俳優として活躍する若手から演技未経験の女子高生までフレッシュな新星が集まっていることでも話題を呼んでいる。そんな挑戦的な作品で松居監督はどのような感銘をもたらしてくれるのだろうか。ぜひ劇場で確認していただきたい。

(小泉ちはる@YOSCA)