ハリウッドでは、マーベルやDCなどのアメコミを原作とした映画が数多く製作され、日本でも少女漫画など様々な作品が映画化されています。アート系映画というイメージの強いフランスでも、実は「バンド・デシネ」と呼ばれるコミックスを原作とした映画が作られています。間もなく公開のフランス映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(3月30日公開)もそのひとつ。ところでこの「バンド・デシネ」をご存知でしょうか?

9番目の芸術!? アート性の高さが売りの「バンド・デシネ」

(C) DARGAUD 1971, 1984, by Mezieres, Christin

「バンド・デシネ」とはフランス語で、直訳すると「絵が描かれた帯」。つまりはフランス語圏の漫画を意味します。しかし、ストーリー重視の日本のものとは異なり、バンド・デシネは“イラスト”重視。サイズも、日本の漫画は174×112の手のひらサイズのものが多いですが、バンド・デシネはほとんどがA4以上。ページ数は、50ページほどとかなり少なめです。

イラストを重視しているため、中身もオールカラー。コマ割りも大胆で、1ページを1コマで使うことも珍しくありません。物語をイラストで語るため、背景までびっしりと描き込まれており、そこには壮大なスケールを感じさせます。そのアート性の高さから、フランス語圏では「9番目の芸術」と認識され、しばしば研究の対象となっているバンド・デシネは、これまでにも数多く映画化されてきました。

有名キャラクターから、ちょいエロまで! こんなにあったバンド・デシネ原作映画

数ある作品でも、有名なのが『バーバレラ』(1968年)です。原作は大人向けバンド・デシネとしてエポックメイキング的な作品で、映画でも無重力でのストリップシーンや、性的な拷問装置のシーンなど、SFとエロスが合わさった描写は話題を集めました。

氷河期の近未来を舞台に、箱舟と化したノンストップ列車の中で生きる人々を描いた『スノーピアサー』(2013年)も「Le Transperceneige」というSFバンド・デシネが原作。その突飛な設定は、作家性の強いバンド・デシネならではと言えるかもしれません。

また、スティーブン・スピルバーグが監督を務めた『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(2011年)や青色の肌をした小さな体の『スマーフ』(2011年)などのキャラクターも、実はバンド・デシネが基になっています。最近では、往年の名作バンド・デシネがハリウッドで作られるなど、国の枠を飛び越えて映画化されるということも多くなっています。

『スター・ウォーズ』にも影響を与えた? 傑作SF「ヴァレリアン」

(C) 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION

そんなバンド・デシネにおいて、頻繁に取り扱われてきたジャンルがSFです。作家の多くが1人でイラストを描き上げているため、作家性を発揮するには、想像力がモノを言うSFはピッタリだったのかもしれません。実際60年代後半以降は、ジャン・ジロー(メビウス)、ジャン=クロード・フォレストなど、有名なSFバンド・デシネ作家が次々に誕生していきました。

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』も、1967年にピエール・クリスタン(原作)とジャン=クロード・メジェール(作画)の手で生み出された「ヴァレリアン」というバンド・デシネが原作。ビジュアル面で『スター・ウォーズ』シリーズにも影響を与えたという伝説的なこのバンド・デシネを、リュック・ベッソン監督が映画化しました。銀河をパトロールする連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌが、ある宇宙ステーションの裏にうごめく陰謀へと立ち向かっていくというお話自体は割とオーソドックスですが、何より見ごたえがあるのが、超ビッグスケールの映像美です。

(C) 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION

極彩色に彩られたぶっ飛んだ宇宙や、ユニークなクリーチャー、超巨大な宇宙ステーションや斬新なデザインの宇宙船など、とにかくド派手で、観たことのないような映像が全編にわたって続きます。ベッソン監督は、コンセプトアートを固めるのに3年も費やしたそうですが、どのシーンを切り取っても1枚の絵として成立するような、ビジュアル的な魅力が本作には溢れています。

ベッソン監督は1997年の『フィフス・エレメント』というSF作品でジャン=クロード・メジェールにデザインを依頼しています。メジェールからは、「なぜ『ヴァレリアン』を映画化しないのか」と言われたそうですが、「当時の技術ではその世界観を再現することはできなかった」と語っています。ベッソン監督が満を持して映画化した本作、その独創的な映像美にぜひ酔いしれて欲しいです!

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(文/ケヴィン太郎・サンクレイオ翼)