今年のアメコミ映画、マーベル映画の超大本命と言えば『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』になるわけですが、その前に公開される『ブラックパンサー』の存在を忘れてはいけません。一連のマーベル映画=マーベル・シネマティック・ユニバースの中でも傑作の呼び声が高く、あの批評サイト、ロッテン・トマトで一時、批評家の支持率100%をマークするなど高評価を得ています。

神秘の国の若き王×ヒーロー

(c) Marvel Studios 2018 All rights reserved

まずどういう作品かと言うと、ブラックパンサーという文字どおり“黒い豹”を模した特殊スーツを着た主人公が活躍します。その正体は、アフリカにある神秘の国ワカンダ国の若き王ティ・チャラ。実はワカンダはヴィブラニウムという超物質を有する国であり、それで栄えているのですが、この物質が世に出回ると危険なのでずっとその存在を隠しているのです。

そしてティ・チャラはかつてこの国に押し入り、ヴィブラニウムを盗んだ極悪人が再び動き出したことを知り、彼を追って韓国の釜山へと向かいます。しかしこれは彼を待ち受ける試練の始まりでしかなかった。果たしてティ・チャラは真の王そしてヒーローになれるのか、というお話です。

初の黒人が主役のアメコミ・ヒーロー映画

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昨年DCの『ワンダーウーマン』が公開され社会現象になったように、この『ブラックパンサー』もまたアメコミ映画の歴史を変える可能性を秘めています。それは一体どういうことなのか? 

まず『ブラックパンサー』はマーベル・シネマティック・ユニバースの中で初の黒人が主役のアメコミ・ヒーロー映画です。黒人ヒーローは今までの作品に多数登場していますが、タイトルにこのキャラクターの名前がつく、つまり主役をはる、のは初めてなのです。 そして『ワンダーウーマン』(2017年)が本格的な女性ヒーローが主役の作品であり、監督も女性(パティ・ジェンキンス)で“女性映画”として注目されたように、『ブラックパンサー』も監督が黒人(ライアン・クーグラー)で、主要キャストはほとんど黒人ですから“黒人映画”として評価される面があります。

実際、ブラックパンサー自体、コミックの歴史においても本格的な黒人ヒーロー第一号(1966年にデビュー。ちなみにアメリカで人種差別を禁じた公民権法が施行されるのが1964年です)だったのです。

人種テーマだけではないメッセージ

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さて僕は本作を観る前、人種にフォーカスが当たっているから、この映画は評価されていると思っていたのですが、この作品が持つメッセージ性は必ずしもそれだけでないと思いました。

この作品で描かれるワカンダはヴィブラニウムという絶大な力を持った、ある種のパラダイスです。だから国際社会との関係を断ち、事実上“鎖国”しています。しかし若き王ティ・チャラは様々な試練を経てワカンダ・ファースト(ワカンダが幸せならそれでよい)でいいのか? という疑問にぶちあたります。

そしてティ・チャラがとった行動とは? そう『ブラックパンサー』はヒーローアクション物でありながら、国益か国際社会への貢献か? に悩む若き王の物語でもあります。このドラマ性が本作を見応えのあるエンターテインメントに仕上げているのです。

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しかし固苦しい映画では決してない! テンポもよくスーパーアクションの連続! 海外のサイトに007のアクションと『星の王子NYに行く』(1988年公開、エディ・マーフィーの代表作)の楽しさという評がありましたが(笑)、まさにそういう感じです。しなやかなブラックパンサーの動きを活かした活躍はかっこ良すぎの一言。今年のハロウィンはブラックパンサーに扮する子どもが増えそうです。

物語の中盤の見せ場は韓国・釜山でロケしたカーチェイスですが、ここでブラックパンサーが使う車はTOYOTAのLEXUSで、アメコミ×アフリカ×アジアの素敵なコラボレーション。そしてワカンダの美術・デザインが本当に素晴らしくて、この世界にドップリとはまっていたい、と思うハズです。なおブラックパンサーを支えるのが、元カノでスパイ、かわいい妹だけど天才科学者、代々つかえる親衛隊長が凄腕の女戦士と素敵な女性陣ばかり! 女子が大活躍するアドベンチャー映画としての魅力もあるのです。

(文・杉山すぴ豊)