米アカデミー賞のレッドカーペットでセレブたちがまとうドレス=オスカードレス。現在は、ブランドからギャラを受けとり、そのブランドのドレスやジュエリーをオスカードレスとしてまとうセレブが少なくありません。しかし、90年代初頭までは、オスカードレスをセレブが自前で調達していた時代もありました。そこで今回は、オスカードレスがビジネス化してしまった理由と、セレブが自前で調達した過去のオスカードレスを4着ご紹介します!

ビジネス化されたオスカードレス

高級ブランドの広告に出ているセレブがそのブランドのドレスを着てレッドカーペットに出席するのはもはや常識。例えば、シャーリーズ・セロンやジェニファー・ローレンスが着るディオール(第85回アカデミー賞のセレモニーでジェニファーが転んでしまったあのドレスです!)、アリシア・ヴィキャンデルが着るルイ・ヴィトンなどがそう。彼らは広告に出演するほか、レッドカーペットなどのイベントでクライアントのブランドを装う契約をしています。

しかし、例えブランドと長期の契約をしていなくとも、多くのブランドがセレブにお金を支払い、オスカードレスを着てもらっているのも現実。ケイト・ブランシェットやエミリー・ブラントをクライアントにもつセレブスタイリストのジェシカ・パスターが海外雑誌『The Cut』に語ったところによると、スタイリストは3万ドル~5万ドル(330万円~550万円/1ドル=110円換算)、セレブ本人は10万ドルから25万ドル(1,100万円~2,750万円/1ドル=110円換算))もブランドからギャラとして支払われているそう。

こんなふうに、セレブがブランドのアンバサダー的役割を果たすことは、ブランドにとっては安いPRとなり、セレブにとってはブランドとの長期契約につながる可能性が出てくるので、お互いにとって利益があるものだとジェシカは説明します。

そういえば、2017年にはシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドとメリル・ストリープがオスカードレスを巡って論争を戦わせました。メリルのためにドレスを無料でデザインしていたカールは、ギャラを支払ってくれるほかのブランドにメリルが途中で鞍替えしたと非難。一方、メリルはシャネルをキャンセルしたのはお金が理由ではないと反論しました。

結局、カールが自分の勘違いだと認める形で決着がつきましたが、広告契約をしていなくとも、オスカードレスにギャラが発生することがあるのは周知の事実のようです。

セレブスタイリストが存在しなかった頃

いまやすっかりビジネス化してしまったオスカードレスですが、以前はセレブが自分でドレスを調達していました。セレブスタイリストという職業が人気になってきたのは、パパラッチがセレブを追い掛け回すようになった1990年代初頭。この頃から、ヴォーグ誌などのファッション雑誌でも表紙にセレブを起用するようになり、セレブのプライベートスナップが様々な雑誌に掲載されるように。その結果、セレブはオフの日のファッションにもスタイリストを雇うことになりました。

そんなスタイリストがオスカードレスにも関わるようになったのは自然の成り行き。現在ではスタイリストの協力なしに、オスカードレスを選ぶセレブのほうが少ないかもしれません。それでも、1990年代前半までは、多くのセレブが自分でオスカードレスを選んでいたのです。

最近ではスタイリストが選ぶ、無難すぎるオスカードレスが非難を浴びるときもありますが、80年代から90年代のオスカードレスはセレブが自分で選んだがゆえに個性的なものが勢ぞろい。そんなオスカードレスを4着ピックアップしてみました。

1989年、ジョディ・フォスターのブルードレス

Photo/Getty Images

第61回アカデミー賞授賞式において、『告発の行方』(1988年)で主演女優賞を受賞した際に、ジョディ・フォスターが身につけたブルーのドレス。お尻に大きなリボンがついたこのドレスのデザイナーは不明ですが、ジョディがミラノのブティックで自ら買い求めたもの。

ところが、この丈が短いドレスは正装に似つかわしくないと不評を買うことに。レッドカーペットには、ロングドレスのイヴニングドレスが正装だと考えられているからなのです。これに懲りたせいか、この後、ジョディはレッドカーペットにジョルジオ・アルマーニのイヴニングドレスを着ることが多くなりました。

1989年、デミ・ムーアのサイクルパンツ

Photo/Getty Images

先述のジョディ・フォスターと同じ授賞式に、デミ・ムーアはコルセットにサイクルパンツというユニークな出で立ちで登場。なんでもこの奇抜な衣装はデミが自分でデザインしたものだとか!

ブラット・パックと共演した作品『セント・エルモス・ファイアー』(1985年)や『きのうの夜は…』(1986年)で人気を博したデミ・ムーアですが、このオスカードレスをまとったときはまだアイドル女優としての印象が強かったもの。次の年に公開された『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)が大ヒットし、大人の女優への仲間入りを果たしました。

Photo/Getty Images

事実、1992年のアカデミー賞のセレモニーでは、ヴィンテージのライラックドレスを貫禄たっぷりに着こなしました。

1990年、キム・ベイシンガーの片袖ドレス

オスカードレスを自らデザインしたセレブはデミ・ムーアだけではありません。第62回アカデミー賞授賞式のキム・ベイシンガーも自作デザインのドレスで登場。しかし、非アシメトリーのネックラインやゴールドの刺繍と手袋が、マイケル・ジャクソンのようだともエルヴィス・プレスリーのようだともメディアに揶揄されてしまいました。

Photo/Getty Images

1998年の第70回アカデミー賞授賞式では、ミントグリーンのエレガントなエスカーダのドレスで現われたキム。見事、『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)でアカデミー賞助演女優賞に輝きました。このときのドレスはいまでも歴代のベストドレスの1枚だと言われており、先に述べたセレブスタイリストのジェシカ・パスターがセレクトしたものだそうです。

1996年、シャロン・ストーンのGAPタートルネック

ファッション界でミニマリズム旋風が巻き起こっていた1990年の第68回アカデミー賞授賞式では、シャロン・ストーンがオスカードレスにGAPのタートルネックをコーデして話題を集めました。これには80年代の華美で装飾過多なスタイルから、シンプルでより機能的なスタイルへと移行したトレンドの影響が見られます。人々はゴージャスなものよりも、動きやすくてコスパのよいものを求めていました。

ハイファッションとカジュアルファッションをミックスすることにより、“高級ブランドのイヴニングドレスをまとう”というレッドカーペットの暗黙のルールを打ち破った画期的なスタイル。

Photo/Getty Images

この2年後にも、シャロンはヴェラ・ウォングのロングスカートにGAPの白シャツを合わせてオスカー授賞式に出席しました。シャロンが魅せたミックススタイルは、いまでもアカデミー史上に残る90年代のアイコニックな装いだと言われています。

ブランドとセレブのアンバサダー関係やセレブスタイリストが台頭する前のオスカードレスは、よくも悪くもセレブの個性が活かされたスタイルが多かったよう。この時代のように、セレブ自身が冒険するオスカードレスをもっと見てみたいものですね。

(文・此花さくや)

【参考】

http://www.businessinsider.com/how-much-celebrities-paid-to-wear-dresses-on-red-carpet-2015-6