1980年代の北イタリアの避暑地を舞台に、17歳の少年と24歳の青年の、人生初にして、生涯忘れられない恋の痛みときらめきを描いた『君の名前で僕を呼んで』(4月27日より公開)。17歳のエリオを演じたティモシー・シャラメが、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、22歳にして史上最年少での受賞もささやかれるなど、その瑞々しい演技は高い評価を集めています。

17歳の少年が恋焦がれる相手を演じるのは、生粋のセレブ俳優アーミー・ハマー

エリオが恋に落ちる相手は、毎年夏に家族で訪れる北イタリアのヴィラに、大学教授の父の研究を手伝うインターンとしてやってきた24歳の大学院生オリヴァー。反発しながらも、磁石のように惹かれあった二人は、かけがえのない親密な時間を共に過ごすのですが、夏の終わりと共にオリヴァーが去る日が刻々と近づき、二人は離れ離れになってしまいます。

まじめで人当たりもよく、誰もが認める好青年オリヴァーを演じるのは、今年1月に公開された『ジャコメッティ 最後の肖像』にも出演していた、生粋のセレブ俳優アーミー・ハマー。身長195㎝という恵まれたスタイルと端正な顔立ちで、清潔感と品の良さがにじみ出るハマーは、17歳のエリオが同性ながらも恋焦がれる相手にふさわしい魅力を兼ね備えた人物です。

『17歳の肖像』にも通じる、年上男性とのビタースイートな初恋

17歳の若者と年上男性との劇的な恋と聞いて思い出すのが、ロネ・シェルフィグ監督がキャリー・マリガンを主演に迎え、ビタースイートな初恋を通じて大人の階段を駆け上がっていく少女の姿を描いた『17歳の肖像』(2009年)です。

ロンドン郊外で退屈な日々を過ごしていた早熟な女子高生のジェニーが、知的で大人の包容力に溢れた謎の男デイヴィッドと知り合い、さなぎが蝶に変身するかのごとくみるみるうちに洗練されていくのを目の当たりに出来る本作。恋愛は甘くて美しいだけでなく、痛みも伴うのだということを思い知らされるほろ苦い作品です。知識も経験も自分よりはるかに豊富な年上の相手に惹かれていくジェニーの心情は、『君の名前で僕を呼んで』のエリオとも共通する部分があります。

『アデル、ブルーは熱い色』も顔負けの、エロティックな「桃のシーン」

一方、エリオとオリヴァーの同性同士の運命的な恋という側面にスポットを当てるとするなら、レア・セドゥ演じる青い髪の画学生エマと、アデル・エグザルコプロス扮する女子高生アデルの大胆なラブシーンも話題になった、アブデラティフ・ケシシュ監督による『アデル、ブルーは熱い色』(2013年)を想起させられます。

信号ですれ違う二人が、視線を交わすドラマティックな出会いのシーンが印象的な『アデル、ブルーは熱い色』では、アデルがその際に脳裏に刻まれたエマを思い浮かべて、夢想にふけるエロティックなシーンが登場します。『君の名前で僕を呼んで』にも、10代後半の少年の内側に渦巻く性的なエネルギーを表現するにあたって、「桃」を使った象徴的なシーンが登場するので、ぜひ注目してみてください。

『君の名前で僕を呼んで』のなかで、もっとも話題を集めているのが、繊細さと激しさを同時に垣間見せるエリオの表情にフォーカスした、3分30秒にも及ぶ長廻しのラストショットです。もちろんこのシーンのすごさは言わずもがなですが、私が一番心を打たれたのは、エンディングよりすこし前に交わされる、エリオと父親の対話の場面。父というよりも人生の先輩として、あの夏エリオの身に起こった出来事や、そこに生まれた関係性が、いかに奇跡のような特別な瞬間であったのかを、エリオの父親は言葉を尽くして語りかけます。その光景は、父が息子に贈るメッセージとして今まで見たどの映画よりも美しく、奥深く感じられました。賞レースの行方も気になるところではありますが、多くの人の記憶に残る名作のひとつになると私は確信しています。

(文/渡部喜巴@アドバンスワークス)