今年もアカデミー賞の季節がやってきましたね。昨年は作品賞を間違って発表してしまうというまさかのハプニングがありましたけれど、毎年、何かしらのドラマがあるのがアカデミー賞授賞式。喜びや驚き、時には何かしらのメッセージを発する人などなど、これまで授賞式で飛び出した印象的な名スピーチをご紹介します!

「扉は開かれたのよ!」――ハル・ベリー

2002年の第74回アカデミー賞で、『チョコレート』の熱演が評価されたハル・ベリー。有色人種として史上初めての主演女優賞を獲得した彼女は、ラッセル・クロウから名前を呼び上げられた瞬間から「オーマイガー」を連発。会場中からスタンディングオベーションで祝福されたハルがステージに上がると、喜びと驚きで泣きながら「この瞬間は私が(オスカーを受け取るよりも)ずっと大きなもの。この瞬間はドロシー・ダンドリッジ、リナ・ホーン、ダイアン・キャロル、私を支えてくれたジェイダ・ピンケット(・スミス)、アンジェラ・バセット、ヴィヴィカ・A・フォックスのものです」とアフリカ系女優の名前を挙げて感謝した後、「すべての無名の有色人種の女性たちにチャンスが訪れたのよ。今夜、その扉が開かれたのだから!」とスピーチ。会場には涙を浮かべる人もいたほど大きな拍手が響き渡りました。

Photo/Getty Images エリー・サーブのこのドレスも素敵!と評判でした

「女性に平等な権利を!」――パトリシア・アークエット

2015年、『6才のボクが、大人になるまで。』で第87回アカデミー賞助演女優賞を受賞したパトリシア・アークエットは、ハリウッドに蔓延る男女不平等について訴えたことで物議を醸しました。彼女は檀上に上がると用意していた文を読み上げ、映画のスタッフ・キャストや家族に感謝を述べた後、最後に声をさらに大きくし、「子供を出産した全ての女性たち、この国の全納税者と市民たち。私たちは全国民の平等な権利を求めて今まで戦ってきました。そして今まさに平等な給与と権利に関して完全に決着をつけるべき、アメリカ合衆国の女性たちの時代が来たのです!」とスピーチ。会場は大きな喝采に包まれ、特にこの時、パトリシアと同じく助演女優賞候補になっていたメリル・ストリープは手を挙げて同意を示し、メリルの隣に座っていたジェニファー・ロペスも大きく頷いていました。実は後日、この発言によって仕事をふたつ断られたことを明かしているパトリシアですが、「全く後悔していないし、気にしていない」とキッパリ。

Photo/Getty Images かっこよすぎるパトリシア姐さん

「恥を知れ!」――マイケル・ムーア

コロンバイン高校の銃乱射事件を題材に銃社会アメリカの病巣を描いたドキュメンタリー『ボウリング・フォー・コロンバイン』で、2003年の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したマイケル・ムーア監督は、反共和党&当時の大統領ジョージ・W・ブッシュ反対派の急先鋒。プロデューサー陣を伴ってステージ上に上がった彼は、「我々は全員ノンフィクションを愛しているけど、今はインチキな選挙で選ばれた偽者の大統領の時代だ。大統領は偽りの根拠で戦争をしている」と痛烈に批判。最後は「ブッシュは恥を知れ!」と叫びつつ締めくくり、会場はブーイングと喝采が同時に巻き起こることに。ムーア監督自身は後に「ブーイングと拍手は半々くらいだったのに、放送ではブーイングの方が強調されていたんだ」と当時のことをボヤいていました。授賞式で政治的立場を明かすのはタブー視されることもあるけれど、この「恥を知れ!」はかなりインパクトの大きな言葉。意見を表明するにはかっこうの場になりえますよね。

Photo/Getty Images ピースサインでアピールのムーア監督

「信じる神がどんな名前であれ祈りましょう」――エイドリアン・ブロディ

2003年、第二次大戦を生き延びたユダヤ人ピアニストを演じた『戦場のピアニスト』で主演男優賞を獲得したエイドリアン・ブロディ。ニコラス・ケイジ、ダニエル・デイ・ルイス、ジャック・ニコルソン、マイケル・ケインという錚々たるノミニーの中で、まさか自分が史上最年少で受賞するとは全く思っていなかったらしく、興奮気味で壇上に上がると、そのままプレゼンターのハル・ベリーにブチューと長いキス! このロングキスはアカデミー賞史上の珍場面として今も語り草になっていますが、実はこの後のスピーチでエイドリアンはいいことを言っているのです。最初は混乱のまま、しどろもどろでスピーチを始めたものの、最後に戦争について言及。「僕はこの映画に出演したことで戦争での人々の悲しみや非人道性や戦争の影響を強く認識するようになった」「信じる神が、アラーとかどんな名前であれ、神のご加護がありますよう。平和のために祈りましょう」と震える声でスピーチ。会場はスタンディングオベーションと共に大きな拍手と歓声が起こりました。

Photo/Getty Images より一層八の字眉を強調させて感動のスピーチ

映画業界最大の式典のアカデミー賞だけに、さまざまな名場面が生まれますよね! 今年も感動のスピーチが聞けるに違いありません!

文=安藤千晴