女優・吉永小百合さんの出演映画120本目の節目にあたる、北の三部作のラストを飾る映画『北の桜守』。北海道の雄大な大地を舞台に、大戦末期から高度経済成長期という激動の時代を生き抜いた“親子の物語"。今回は、本作の監督でもあり、映画『おくりびと』で米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎(たきた ようじろう)監督に、吉永さんの魅力や本作の魅力、また監督を目指したきっかけなどを語っていただきました。インタビューから、クリエイターなら忘れてはいけない大事な思いが見えてきました。

現場の雰囲気を変える桁違いのスーパースター、女優・吉永小百合。

(C)2018映画「北の桜守」製作委員会

Q:本作は、吉永小百合さんにとって出演映画120作目にあたる記念すべき作品となりましたが、最初にこの話を聞いたとき、どのように感じられましたか?

いつかは吉永さんとお仕事をご一緒したいと思っていたので、「やっときた!」という感じでした。同時に、吉永さんが主演される作品は“吉永小百合の映画"になります。そこで、どれだけ“滝田洋二郎の映画"にできるのか?ということを考えました。その両方がないと映画が輝かないですから。

Q: 監督から見て、吉永小百合さんはどのように映りましたか?

桁違いのスーパースター。デビューから60年、世の人のあこがれの存在として常に生きてきて、常にずっと輝き続けている女優。僕だけでなくすべての人が感じていると思いますが、“特別な人"だと思います。もちろんご本人の努力のたまものだと思いますが、実際に今回撮影して、改めて “スター性"を感じました。吉永さんがいらっしゃるだけで現場の雰囲気が変わるというか。何も言わなくても大事なことが伝わってくる、そういう方です。

Q:今回は、“親子の物語”でもあり、“老い”もテーマになっていますね。

(C)2018映画「北の桜守」製作委員会

吉永さん演じる「てつ」と堺雅人さん演じる「修二郎」は少し特殊な親子関係です。お互いにコンプレックスをバネにして生きてきたたくましい一面があって……。なんだかんだ言ってもやっぱり親子なんだなという“絆”をしっかり描こうと思いました。そして、“老い”ですよね。誰にも訪れる死の一歩手前の時間。自分の両親に置き換えると、リアリティを持って感じるはずです。僕なんかもそうですが、吉永さんも自分の母親を思い描いていたとおっしゃっていました。その自分のところにやってきた“老い”に対して困っている感じをきちんと伝えたいと思いました。

Q:自分の老いに戸惑っている「てつ」の心情やサハリンからの引き上げを描くところは、劇中劇のように“舞台”で表現されていますが、これはどのようにして生まれたのでしょうか?

(C)2018映画「北の桜守」製作委員会

サハリンからの引き上げや戦闘シーンなど映画でやっても説明的になってしまうところは、あえて“舞台"という箱の中で表現してもらうと面白いのではと考えてこのような形にしました。そしてその中で心理描写みたいなものをうまく表現することできたらと思い、演出はKERAさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)にお任せしました。カメラで録っているのは僕なんだけど舞台はKERAさんの演出。てつの心理も舞台ならではの演出で表現されたことで、面白くなったと思います。(インタビュー前編はここまで)

取材・文 玉置晴子

滝田洋二郎(映画監督)
1955年生まれ、富山県出身。1981年に成人映画の監督としてデビュー。1986年に『コミック雑誌なんかいらない!』がニューヨーク映画祭で絶賛され話題に。2004年に『壬生義士伝』で日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。2008年に制作した『おくりびと』で部国アカデミー賞外国語映画賞を受賞。日本映画では初となる快挙だった。その後も『天地明察』(12年)『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』(17年)など作品を公開。2014年には紫綬褒章を受章した。

『北の桜守』
監督:滝田洋二郎
キャスト:吉永小百合、堺雅人、篠原涼子、岸部一徳、高島礼子、永島敏行、笑福亭鶴瓶、中村雅俊、阿部寛、佐藤浩市 配給:東映
(C)2018映画「北の桜守」製作委員会
3月10日(土)全国ロードショー