今からちょうど20年前に放送された「神様、もう少しだけ」(1998年・フジテレビ系)。援助交際によってHIVに感染してしまった女子高生と人気音楽プロデューサーの恋愛を描いたドラマで、その衝撃的なテーマや展開に、放送当時に釘付けとなった人も少なくないでしょう。

同作で深田恭子とともに主演を務めたのが、金城武。深田が演じた真生とともに、困難に立ち向かう音楽プロデューサー・啓吾を演じて人気俳優に。その後も、ドラマや映画などで活躍していましたが、近年は日本のメディアで姿を見かけることが少なくなっていました。

そんな金城が、この春公開の『恋するシェフの最強レシピ』で久々に日本のスクリーンに帰ってきます。その姿は、20年前と比べて勝るとも劣らない美男子のまま! ここでは、どこかミステリアスで時の流れさえも感じさせない“完璧”俳優、金城武の魅力を改めてご紹介します。

おディーン様、大谷亮平につながる“逆輸入俳優”の先駆者

連続テレビ小説「あさが来た」(2016年)で女性たちを虜にしたディーン・フジオカや、大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年)でハイスペックイケメンを演じた大谷亮平。海外で活躍の後、日本でブレイクした彼らは“逆輸入俳優”と呼ばれ方々で引っ張りだこですが、20年前にその道を切り拓いたのが金城武なのです。

ディーンは「第2の金城武」と呼ばれていたり、大谷は「逃げるは恥だが役に立つ」放送時のインタビューにおいて「金城武さんのように、日本でも中国でも活躍できる仕事スタイルはうらやましかった」と憧れを口にしていたりすることからも、その存在の大きさがうかがえます。

台湾生まれの金城武は、スカウトによって芸能界入りすると、高校卒業後には歌手デビュー。若手俳優らと並んで「台湾四小天王」と呼ばれ、黄色い声援に包まれる日々を送りました。その後、ウォン・カーウァイ監督に見初められ『恋する惑星』(1994年)に出演すると、続々と香港映画のオファーが殺到し、90年代後半には日本のCMやドラマにも活躍の場を広げます。その中で出演したのが、日本で彼の名を轟かせることとなった「神様、もう少しだけ」でした。

金城が現在の逆輸入俳優たちと異なるのは、台湾人と日本人のハーフであること。大多数の逆輸入俳優が生粋の日本人であるのに対し、金城は幼い頃から台湾の風を肌で感じ、中学では日本人学校、高校ではアメリカンスクールに通うなど、さまざまな国の文化に揉まれて育ちました。その結果、海外との行き来が今ほど頻繁でなかった20年前に、いち早く“逆輸入”が成功したのでしょう。

ハイスペック過ぎて、複数言語の演技も朝めし前

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金城武を語る上で欠かせないのが、堪能すぎる語学力です。金城は、日本語のほか、中国語(北京語、広東語、台湾語)、英語を自在に操るマルチリンガルで、芸能活動においてもその能力をいかんなく発揮しています。

『恋する惑星』では、バーで出会った美女に日本語、広東語、北京語、英語を駆使して話しかけるシーンを難なく演じ、ディズニー映画『ターザン』(1999年)では、日本版、香港版、台湾版の吹き替えを1人で担当。2013年に放送されたエバー航空のCMでは、出演のみならず、日本語、中国語、英語の3バージョンすべてのナレーションもこなしています。

また、金城が出演している映画の制作地を見てみると、日本、香港、台湾、中国、アメリカと実に多彩。国を問わずチャレンジングな姿勢で俳優業に取り組んでいることがわかります。作品公開時のインタビューにも各国の言語で応じており、アメリカCNNのインタビューでは、ハリウッドにおけるアジア人俳優について「アジアの著名な俳優がハリウッド映画に出演する機会を得ても、演じる役はすごく限られていると感じる」と流暢な英語でコメント。語学力のみならず、さまざまな国での経験が伴う金城だからこその説得力を感じさせました。

向かうところ敵なしの王子様かと思いきや、意外な一面も

ワールドワイドな活動に加え、美しいその容姿も金城武の魅力のひとつです。エンポリオ・アルマーニやプラダのアジア人初の広告塔になったり、「世界でもっともハンサムな顔100人」に例年のようにランクインしたりと、話題に事欠きません。もはや欠点なんてないのでは……と思ってしまう完璧ぶりですが、金城にも人間味を感じさせる一面があるのです。

それは、根っからのゲーム好きであること。カプコンのTVゲーム「鬼武者」シリーズでキャラクターの声を担当することが決まった際、担当者に「声だけじゃなく制作にも携わりたい」と熱意を伝えた金城。実際に、長時間の打ち合わせに何度も参加したり、キャラクターのデザイン案をいくつも考案したりと、制作スタッフの一員として全面的な協力を惜しみませんでした。

これらのエピソードも相まって、金城の“オタク説”はこれまでもファンの間でまことしやかに囁かれ続けてきました。本人もそのことは知っているようで、『恋するシェフの最強レシピ』のプロデューサーを務めたピーター・チャン監督との対談で「世間が抱く金城武のイメージを傷つけないために、夜遊びなどを控えて引きこもっていたら、本当にオタクになってしまった」と語っています。他の俳優にはない神秘的な雰囲気が持ち味ですが、オタク気質はそれゆえに育まれたもののようです。

そんな金城武がこのたび出演する『恋するシェフの最強レシピ』は、彼にとって16年ぶりのラブコメディとなりました。金城が演じるのは、上海の会社を買収するエリート社長でありながら、“絶対味覚”をもつ美食家のルー・ジン。どんな有名料理長が供する料理にも満足できずにいた彼ですが、ある見習い女シェフの料理にだけは満足することができたのです。それをきっかけに“食”を通じて心を通わせていく2人。ところがそこに、さらに腕の立つ美人シェフが現れて……。

近年は『レッドクリフ』(2008年)や『捜査官X』(2011年)などの硬派な作品に出演することの多かった金城ですが、本作ではかっこよさはそのままに、18歳も年下の女性に翻弄されるキュートなキャラクターを熱演! クールで完璧な側面と、時にオタク化してしまう人間味あふれる側面の両方を持ち合わせる、金城の魅力が滲み出た作品となっています。往年のファンはもちろん、これまであまり知らなかった人も、きっと虜になることでしょう。

『恋するシェフの最強レシピ』は、3月10日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開です。

(鈴木春菜@YOSCA)