文=新田理恵/Avanti Press

本年度米アカデミー賞に作品賞など4部門でノミネートされている『君の名前で僕を呼んで』(4月27日公開)は、LGBT映画というカテゴリーを超えた初恋の物語だ。とにかく、主演のエリオを演じるティモシー・シャラメとオリヴァーを演じるアーミー・ハマーの2人がまぶしい。地上の楽園のようなロケーションで繰り広げられるラブストーリーの登場人物として、これ以上ないほどふさわしいキャスティングといえる。そこで、ネクストブレイク俳優の筆頭として今ハリウッドで注目を浴びている新星ティモシーと、完璧なハンサム、アーミーの魅力を紹介したい。

夏の北イタリアで出会った17歳のエリオと大学院生のオリヴァー

1983年、柔らかな日差しが降り注ぐ夏の北イタリア。17歳のエリオは、大学教授の父、聡明な母とともに、自然に囲まれた古いヴィラでひと夏を過ごす。文学や歴史、音楽の話をしながら、プールや川で泳いだり、気持ちの良い庭で食卓を囲んで新鮮な卵つきの朝食や夕べの一時を楽しんだり、まるで有閑貴族のように暮らす一家。家の中の一切合切は働き者のメイドが世話をしてくれる。

そこへやってきたのは、24歳の大学院生オリヴァー。父の研究を手伝うインターンだ。輝く金髪に青い瞳、190センチを超える逞しい身体。まるで彫刻のように美しい彼に、エリオは心引かれていく。エリオは初めて味わうときめきに従い、少しだけ人生経験を積んで“曖昧に生きる”術も身につけたオリヴァーは、そんなエリオを受けとめていく。

ハリウッド最注目の新星ティモシー・シャラメ、年を取っても大丈夫?

エリオを演じるティモシー・シャラメ

エリオを演じるティモシー・シャラメは、1995年生まれの22歳。ニューヨーク出身だが、父親はフランス人、母親はロシア系ユダヤ人とオーストリア系ユダヤ人の流れをくむアメリカ人で、ヨーロッパにルーツを持つ。

母と姉は女優、叔父は映画監督、祖父は脚本家という恵まれた芸能一家に育ち、フランス語が堪能で、本作出演時にはイタリア語も学習。劇中で弾くピアノやギターも本人の演奏という多才ぶりで、まるで二次元の世界から出て来たような男の子だ。『君の名前で僕を呼んで』には、そんな彼の、少年から大人に変わる貴重な時期のきらめきがたっぷり詰まっている。

演技力も、本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたことから証明済み。一部では「レオナルド・ディカプリオ以来の才能」と言われているそうだが、レオ好きの筆者から見ても、どちらかというと個性派のレオに比べてクラシカルな美形。劇中で時折見せる陰鬱な眼差しや物思いにふける表情が意外と苦み走っていて、なんだかニコラス・ケイジのように見える瞬間も。毛髪が、という問題ではなく、たとえ若さゆえの美しさを失っても、味わいを増して息の長い活躍が期待できそうな予感がする。

ウディ・アレン監督の新作『A Rainy Day in New York(原題)』への出演や、ブラッド・ピット製作の新作『The King(原題)』ではヘンリー5世を演じると伝えられるなど、今後の出演作も目白押し。まずは本作と、やはり本年度アカデミー賞に5部門でノミネートされている6月公開の『レディ・バード』でヒロインの彼氏を演じるティモシーをチェックしてほしい。

“オシャレじゃない”二枚目マスクで役の幅を広げるアーミー・ハマー

オリヴァーを演じるアーミー・ハマー

エリオの母親が、オリヴァーをまぶしそうに眺めてこう言う。「映画スターみたいね」。

もちろん、本当に映画スターなのだが、アーミー・ハマーはそう言われるにふさわしい正統派のハンサム。ただし、映画の舞台である80年代がハマる二枚目で、決して"オシャレな顔"ではない。それが『ソーシャル・ネットワーク』で演じたマーク・ザッカーバーグに出し抜かれる双子のエリート大学生のように若干情けなくも見えるし、『ローン・レンジャー』のヒーローのようにコミックの世界の住人にもぴったりくる。ステレオタイプにはまらず、役の幅を広げるために一役買っている。

そして、そこはかとない「イイ人」感がこの人にはある。一度映画のPRで来日した彼を取材する機会があったのだが、アイドルばりのポージング(両手を組んだ上にあごをのせたポーズとか……)をカメラマンに求められてもニコニコ応えてくれる様子に「恐ろしくイイ人!」と大興奮した記憶あり。

そんな人柄の良さは、華麗なる彼の家系に由来する、育ちの良さからくるものだと思う。曾祖父は石油王のアーマンド・ハマー、父親は複数の会社を経営するバリバリのビジネスマンという富豪一家の御曹司として育った。とはいえ、スポイルされたボンボンではなく、家族の猛反対を押しきり、俳優の道を目指した反骨精神もある。

2010年にモデル兼TVタレントのエリザベス・チェンバースと結婚し、かわいい娘と息子がひとりずついる。妻の故郷テキサス州サンアントニオにベーカリー「Bird Bakery」をオープンし、共同経営しているという一面も。美男美女のおしどり夫婦でパン屋さん経営なんて、どこまで好感度を爆上げする気なのか。こんなパーフェクトな人がいるなんて、世の不公平に打ち震える。

ティモシーとアーミー、『君の名前で僕を呼んで』のパーフェクトなふたりの逢瀬は、神々の戯れにも似ている。その世俗から隔離されたようなムードが、まっすぐ人を愛する心の尊さ、二度と戻らない初恋の輝きを際立たせる。