競技かるたの世界を感動的に描いて大ヒットした前作の完結編『ちはやふる −結び−』で、初登場となるかるた界のレジェンド・周防久志名人を演じた賀来賢人が、役づくりの工夫や自身の転機について率直に語った。

若い世代とキャピキャピ?

Q:大ヒットした作品の続編への途中参加というのは、勇気が必要だったのでは?

なかなかハードルが高い役ですし、僕が変な芝居をしたら台無しになってしまう。集中力と緊張感が必要でした。

Q:それでも参加しようと思ったのはなぜですか?

前作がすごく面白かったので。若い世代向けなのかなと思っていたんですが、観たら全然そんなことはなく、人と人のつながりやどの世代が観ても普遍的に楽しめる映画でした。しかも、演じた周防はすごく魅力的な人でしたから、これはぜひと思いました。でも、『ちはやふる』シリーズに出演できるというと、広瀬すずちゃんとかとキャピキャピできると思うじゃないですか。僕は(太一役の野村)周平と一緒のシーンばっかりで、話が違うぞって(笑)。周平はすごくいい役者ですけど、野郎2人じゃキャピキャピしませんからね(笑)。

Q:周防さんはとても素敵な役です。

ある悲劇を背負っている上、最終的に周平の背中を押すという、すごく素敵な役ですよね。

Q:声が小さかったり、動きが妙だったりして、とても印象深かったです。

観ている方にある種の違和感を与えられるように心掛けました。圧倒的にかるたが強いけど、ちょっと抜けていてかわいらしいところを出して、落差を付けたいと思いました。なるべく無駄な動きはしないようにしたり、目線も動かさないようにしたりしました。でも原作で声が小さいという設定があって、技術的な問題ですごく難しくて、(小泉徳宏)監督と微調整しながら演じました。役づくりに関しては、僕が提案したことも監督からおっしゃっていただいたこともいろいろありましたが、一番大きかったのはビジュアルを完璧に作ってくださったこと。髪にエクステをつけて、なじませて、切って、というようなすごくセンシティブな作業をしてくださったんです。それがすごく自信になって、メンタルは無敵の状態でした。ありがたかったです。

弾けたキャラクターの確立、転機は舞台

Q:今回は主人公たちの先輩格でした。これまで制服を着る立場の役も多かったと思いますが、立ち位置の変化について思うところはありましたか?

個人的にこういうポジションは初めてで、下の世代の役者さんたちとの仕事もあまりなかったので、勉強になりました。でも、特に「制服卒業!」といった感慨はないです。まだこれから高校生もやるかもしれないし。それに、僕はこれまで舞台とかで、変な役をたくさん演じているので(笑)、いまさらどうこういうのはないです。

Q:コメディーなど、そうとう弾けた役もやられていますが、ご自身の転機になったのは?

舞台のお仕事です。福田(雄一)さんの脚本・演出の舞台はもちろんですけど、とにかく舞台でいろんなことをやらされ……じゃなくて、選んでやってきました(笑)。その経験は大きかったです。

Q:あえてそこを選んだのはなぜですか?

悔しかったんです。舞台には化け物みたいな実力をお持ちの役者さんがいすぎて。最初は「すごいなー」って見ていたんですが、そのうちに「この人たちみたいになりたい」って思うようになって。それで、すべってもいいからやれることをやろうと試した結果、少しずついろいろできるようになりました。それを、みなさんが知ってくださるようになってって、そこから面白い役が増えた気がします。

Q:それが周防さん役に結び付いた?

それはあります、絶対。何一つ無駄なものはなかったと思います。

Q:変わった人間を演じるのが面白いのですか?

ただ変わっているというだけではなく、「人間として面白い人」を演じるのが楽しいです。もしそういう人がいたら面白いなと、僕自身が思うのが大事だと思います。周防さんはすごく人間っぽくて、そういう役を演じるのは、役者冥利につきます。

とても幸せな美しい映画

Q:今後はどんな役をやりたいですか?

ドラマのあるラブストーリーがやってみただいです。ただキラキラしていたり、かわいらしかったりするだけじゃなく、人間としてちゃんとその人たちに共感できるような役に興味があります。職業でいったら医者とかもやったことがないので、ぜひ挑戦してみたいです。

Q:変わった人同士のラブストーリーではなく(笑)?

それはやりすぎですよね(笑)。

Q:完成品をご覧になって、どこが一番いいと思いましたか?

みなさんが一生懸命演じているのが本当に美しいと思いました。それだけで観る価値があります。僕なんかいいんですよ(笑)。それに、言葉がとても詩的です。観終わって、心に残るセリフがいっぱいちりばめられています。僕が言う「一瞬を永遠に留められることができるということを忘れないで」というセリフが好きです。葛藤とかいろいろあるけど、最終的にすごく幸せな美しい映画なので、いい気持ちを持って帰れると思います。

取材・文:早川あゆみ 写真:尾藤能暢