福士蒼汰の最新主演作『曇天に笑う』が、3月21日より公開される。柔和な笑顔が魅力的で、ラブストーリーにも多数出演している福士だが、彼は“アクションもできる役者”なのだ。「仮面ライダーフォーゼ」(2011年〜2012年)での主人公役に始まり、活劇の比重が高い『神さまの言うとおり』(2014年)や『無限の住人』(2017年)にも出演。そんな彼のアクション魂は『曇天に笑う』で遺憾なく発揮されている。

接近戦で魅せる本格志向

明治初期を舞台にした『曇天に笑う』で福士蒼汰は、町を守る神社の14代目、曇天火(くもう・てんか)を演じている。本作では、伝説のオロチ(大蛇)復活を阻止するため、そして可愛い弟たちを守るため、忍者軍団、風魔一族と闘う天火の姿が活写されている。

なんと言っても見どころは、まとめて20人もの相手と一戦を交えるクライマックスだ。天火の武器は「鉄扇」という鉄を骨組みに使用した扇で、短く小さく、刃物ですらない。よって、限りなく素手で闘う接近戦となる。

たとえば刀と刀では、間合いを測って一気呵成に畳み掛けるという緩急もつけられるが、天火のアクションはいきなり相手の懐に飛び込んで、バッタバッタと打ち倒していくというもの。殺陣というより、格闘技に近い。時代劇なのに、きわめて現代的な格闘技であるという点が目にも鮮やかだ。

接近戦は、文字通り相手にギリギリまで近づくためリスクがあり、相手にヤラれる可能性も非常に高い。事実、天火は何度も倒されるが、その都度立ち上がる。ヤラれたっていい、また立ち向かっていけばいい。そんな豪快で一本気な戦闘スタイルが、天火の含みのないカラッとしたキャラクターと相まって、観る者の心を燃え上がらせるのだ。

自然に身体が動いてしまう!

福士は『図書館戦争』シリーズで岡田准一と共演し、兄のように慕っている。岡田はもはや我が国を代表する本格活劇俳優のひとり。岡田の影響があるのか、福士もまたジークンドーやカリといった格闘技を学び、研鑽を積んでいる。映画のための付け焼き刃ではなく、きちんとトレーニングを積み、技の遣い手へのリスペクトを欠かしていないから、福士のアクションには本物の迫力がみなぎっている。

筆者は、木村拓哉主演『無限の住人』の撮影現場で、アクションに挑む福士の姿を見つめたことがある。福士は木村扮する主人公に対峙するラスボスを演じていたが、自分の出番がないときも、木村の出演場面をずっと凝視していた。見ているだけではない。自らの身体を動かしていた。その様は、彼方にいる対戦相手の動きに応戦しているように映った。

後日、福士に問いかけると、その動きは無意識だったという。おそらく、自然に身体が反応していたのだろう。つまり、それだけアクションというものが身体の中に染み込んでおり、必要なときに発芽する体質と化していると言えるのではないだろうか。

木村拓哉はテストも本番も完璧に決めてくる演じ手だが、『無限の住人』のときの福士は、テストでは「あれ?」と思うほど軽い仕上がり。ところが本番ではばっちり、重量感のあるアクションを的確に完成させていた。あの緩急のつけ方も福士ならではだろう。

『無限の住人』では、まるで斧のような重い武器を使いこなしていたが、『曇天に笑う』は一転、小さな武器で艶やかな立ち回りを見せた。どデカい刀がメインとなるであろう『BLEACH』(7月20日より公開)では、どんな活劇を体現しているのか。はやくも楽しみだ。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)