アニメーションのデジタル化が当たり前の時代となって久しい現在、アナログにこだわって作品を作り続けているアニメーション作家がいる。

村田朋泰。人形を少しずつ動かしながらそれを一コマずつ撮影していく人形(パペット)アニメーションの手法で作品を発表し続け、世界中で高く評価されている存在だ。

NHK Eテレのプチプチ・アニメ『森のレシオ』やMr.Children『HERO』のミュージックビデオなどを手掛けた人といえば、その作風をおわかりいただける方も多いかと思う。

そんな村田朋泰監督が、およそ15年にわたる創作活動の中から厳選した作品群をまとめた特集上映『村田朋泰特集 夢の記憶装置』が、3月17日より東京・シアター・イメージフォーラムを皮切りに、全国順次公開される。

“記憶”というキーワード

『白の路』(C)TMC

そのラインナップは、記憶や信仰、祈りをコンセプトに作られた映像叙事詩《生と死にまつわる記憶の旅》シリーズの『木ノ花ノ咲クヤ森』(Galileo Galilei『サークルゲーム』MV)、『天地』、『松が枝を結び』(本邦初公開)や、《路》シリーズ『朱の路』、『白の路』(Mr.Children『HERO』MV)、《家族デッキ》シリーズ『家族デッキvol.1高田家の春』、『家族デッキvol.2家族旅行』、そして『森のレシオ(こうかんトリ)』。

いずれも4分から16分強の短編ばかりなので、一気に魅入りながら鑑賞することができる。

『家族デッキ』(C)TMC

彼の作風は“記憶”というキーワードから察しがつくように、どこかノスタルジックで一見微笑ましいものがある。《家族デッキ》シリーズなどはまさに昭和下町テイストで、懐かしいことこの上ない。

だが、その奥にはどこかしら切なくも哀しい人の運命性などが秘められており、それは時に残酷なまでに厳しい描写となって顕れることもある。

画を通して訴えかける挑戦

こうした姿勢を一貫させているのもこの才人ならではの持ち味で、《生と死にまつわる記憶の旅》シリーズはまさにその筆頭として挙げられよう。

特に2017年に完成したばかりの最新作『松が枝を結び』で繰り広げられる双子の少女の確執と運命は圧巻だ。(監督自身が一卵性双生児ということもあり、“対”の関係性に非常に興味があるのだとか。ダイジェスト版が監督のホームページで見られるので、ご参考までに)

『松が枝を結び』(C)TMC

またキャラクターだけでなく背景などの自然描写も濃密で、日本列島が形成されていく天地創造の模様を描いた『天地』のように、火山の噴火や地震などの大自然の脅威までも、ストップモーション・アニメーションを主体として見事に表現されたものもある。『松が枝を結び』の津波の描写にも驚かされる。

セリフはなく、あくまでも画を通して見る者に訴えかけていく挑戦的趣向も、昨今のセリフまみれの映画やドラマを見慣れた向きには刺激的ではあるし、脳内感性を鍛えるにももってこいだ。(キャラが何をしゃべっているのかを脳内で考えつつ、好きな声優の声をアテながら見ていけば、もっと楽しくなる!)

真のエンタテインメントとは

『森のレシオ』(C)NHK・NEP・TMC

こういったアーティスティックかつ実験精神みなぎるアニメーション作品は、一見どこか敷居が高そうに捉えられがちではあるが、実際のところはCMやミュージックビデオなど日常的なものであることに気づきさえすれば、そう堅苦しいものでもない。(そういえば劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズも毎回オープニングにはクレイ・アニメーションが採られているが、あれも楽しい)

またそのことは、これまで多くのミュージックビデオやNHKアニメなどを手掛けてきた村田監督が実践&証明してきたことでもある。

芸術と娯楽を分けた論調は昔も今もよく目にするところではあるが、本来、芸術は娯楽の1ジャンルに過ぎないと思うし、真のエンタテインメントとは、それに触れる者の心や感性などを啓蒙してくれるものである。

村田朋泰監督作品もまた極めて優れたアーティスティックなエンタテインメントとして、見る者の心を豊かに啓蒙してくれるものばかりなのである。

日頃TVなどの商業アニメーション作品しか触れたことのない方などにも、この機会にぜひ村田作品で楽しい体験をしていただきたいと切に願う次第である。

(文・増當竜也)