父親は、還暦を過ぎて未だ衰えを知らない“孤高のカリスマ”長渕剛。そして母親は、日本初のアクション女優として海外でも知られる“最強ヒロイン”志穂美悦子。2世俳優の中でもトップクラスに濃いDNAを持つ女優・文音。実はデビュー10周年の節目となる2018年は、毛色が異なる2本の出演作が立て続けに公開となります。アクションからコミカルな演技までこなした母のように、幅広い役柄を演じ分ける演技力でブレイクの兆しを感じる文音の最新出演作2作を紹介します。

日本アカデミー新人賞獲得から10年…再び映画の主演に返り咲き!

2008年の『三本木農業高校、馬術部』で、女優デビューでいきなり主演をつとめあげた文音。柳葉敏郎、松方弘樹ら大御所にも怯むことのない堂々とした演技で、新人とは思えない存在感を放ち、日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しました。

女優としてこれ以上ない順風満帆なスタートを切った文音ですが、ブレイクへの期待が集まる中、突如として表舞台から姿を消してしまいます。実は彼女、アメリカで1から演劇を学ぶことを決意し、単身、ニューヨーク・フィルム・アカデミーで約1年半、留学をしていたのです。

世界中から集まった競争心の激しい俳優の卵たちについていくのが精一杯の毎日の中、父親譲りの“反骨心”で次第に大きな役を掴み取るまでに成長した彼女。帰国後は、環境に変化をつけようと芸名から「長渕」を取り、映画、ドラマ、舞台と数々の作品で助演を経験します。そして2018年、デビュー作以来の主演にカムバックを果たしたのです。

まるでホンモノの孫? 豊かな感情表現でおばあちゃん子に!

(C)2018「ばぁちゃんロード」製作委員会

そんな久々の主演作『ばぁちゃんロード』(4月14日公開)は、文音の扮する孫娘・夏海が、足のケガをきっかけに内向きになってしまった祖母・キヨ(草笛光子)と一緒にバージンロードを歩くべく、二人三脚でリハビリに奮闘する様子を描いたヒューマンドラマです。

大好きな祖母を元気づけようと張り切る夏海という等身大の女性を、文音は、優しい声色や屈託のないクシャっとした笑顔などナチュラルな演技で表現しており、その姿はまさに孫娘そのもの。プライベートでも草笛と交流があるそうですが、キヨの言葉におどけて見せたり、リハビリを心配そうに見守ったりする姿からは、演技とは思えない祖母のことを大切にする優しさが伝わってきます。

感情を表に出せない難役も、細微な演技で体現!

(C)2018「おみおくり」製作委員会

文音は、間もなく公開の『おみおくり』(3月24日公開)でも、準主役として出演しています。本作は幼い頃に両親を亡くした文音演じる亜衣が、過去のトラウマを払拭するために高島礼子扮する納棺師に弟子入りし、人の死に触れることで、自分を見つめ直していく感動作です。

納棺師という仕事の性質上、故人との最期の別れに立ち会う際に感情を表に出すことははばかられます。その中で、目元、口元の僅かな変化によって、哀しさやいたたまれなさといった心の機微を絶妙に表現した文音の演技は秀逸。『ばぁちゃんロード』で見せたような天真爛漫な姿とはまた異なった、彼女の感情を抑えた演技は、彼女の女優としての幅を感じさせます。

映画『KIRI-「職業・殺し屋。」外伝-』(2015年)では、激しいアクションまでバッチリこなしていましたが、その時はさながら「女版ベストキッド」のように、母・志穂美悦子からアクションについて叩き込まれたのだとか。直近の2作ではその大器の片鱗を覗かせつつある文音。どんな状況でもめげない父の不屈の魂と、異なるタイプの役を演じ分ける母のような演技力を武器に、本格的にブレイクする日は近いかもしれません。

(文/バーババ・サンクレイオ翼)