3月になると相次いで公開される“春休み映画”。7歳の少年のもとに弟としてやってきた赤ちゃんとの日々を描いたアニメ映画『ボス・ベイビー』(3月21日公開)もそのひとつですが、子ども向け映画とあなどるなかれ。実は、社会で汗水たらして働く大人にこそ刺さるポイントが満載なのです。

(C) 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

昼夜を問わない呼び出しは、まさに「ブラック企業」!

ストーリーは、主人公の少年・ティムのもとに、黒いスーツに身を包んだ赤ちゃん「ボス・ベイビー」がやってくることからはじまります。一見かわいらしいボス・ベイビーですが、その実態は口が悪いおっさんキャラという、ちょっと変わった赤ちゃんだったのです。

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ボス・ベイビーは、両親の前では無垢でキュートな赤ちゃんを演じていますが、ティムに秘密を知られてしまったため、彼を脅してきます。それまで親の愛情をひとりじめしていたティムはボス・ベイビーに振り回され、また自分より泣き叫ぶ赤ちゃんを優先する両親を見ているうちに、寂しさをつのらせていきます。

お兄ちゃんになったティムの心細さに共感することはもちろんですが、どんなに遅い時間でも、ボス・ベイビーから泣き声の“招集”がかかると黙って対応する両親の姿は、まるでブラック企業に勤めるサラリーマンのよう。子どもの有無にかかわらず、働いたことのある人であれば「お疲れ様」と肩を叩いてねぎらいたくなるような描写が続きます。

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本作は、『赤ちゃん社長がやってきた』という絵本にインスパイアされてつくられたもの。これまでにもさまざまな切り口で育児は描かれてきましたが、赤ちゃんを“家の社長”=ボスに見立てるという斬新な手法で、子育ての経験がない人にもそのハードさを解らせてくれます。特報映像で「“おむつ”それはパワーバランス。俺のウンチを拭くのは大人!」となんの悪気もなく言い切るボス・ベイビーを見ていると、この世でもっとも強いのは、実は赤ちゃんなのでは……とさえ思えてくるのです。

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日常の風景も、2大アニメーション会社の手にかかればスペクタクルに!

本作は、アニメーションならではの映像世界もとても魅力的。『怪盗グルー』シリーズや『SING/シング』(2016年)などのヒット作を連発しているユニバーサル・スタジオと、『シュレック』シリーズなどを手がけたドリームワークス・アニメーションが初のタッグを組んで制作されたもので、2大アニメブランドの手腕が随所に光っています。

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特筆すべきは、日常にあふれる何気ない風景を壮大な世界に仕上げている点。ボス・ベイビーとティムが攻防戦を繰り広げる子ども部屋や庭、コンクリートの道路などは、臨場感のあるカメラワークとテンポの良いやりとりによって、ドキドキとワクワクに満ちたスペクタクルとして描かれます。

しかしカメラが引いて両親の目線になると、まるでアクション映画のようだった光景も、ただ彼らがのんびり遊んでいるようにしか映りません。このシーンを見た瞬間、ハッとさせられる大人は筆者だけではないでしょう。見慣れた光景も、子どものみずみずしい感性をもって見つめれば、きらめく別世界に変えることができる。そんな大切なことを、大人になると本当に忘れかけてしまうのだと思い知らされます。退屈な日常を前に「なんかいいことないかな……」なんてつぶやいている人にこそ、きっと深く響くはずです。

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こうして観客がすっかり子ども目線で物語を追うようになった頃、いよいよ2人は恐ろしい陰謀を企む強大な組織に立ち向かうことになります。敵対していたはずのティムとボス・ベイビーの間にも次第に関係が築かれ、一人っ子だったティムは少しずつ成長し……。思い切り笑わされた後にやってくるラストは、じわじわと乾いた心を潤してくれます。

全米で公開されるやいなや2週連続で1位を記録し、全世界ですでに540億円以上を叩き出している本作。日本語版の吹き替えは、ボス・ベイビーをムロツヨシが、ティムを芳根京子が演じるとあり、こちらも大きな注目を集めています。ギャップがありすぎる強烈キャラ、ボス・ベイビーが巻き起こす笑いと感動を、ぜひ劇場でお楽しみください。

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『ボス・ベイビー』は、3月21日(水・祝)より全国ロードショーです。

(鈴木春菜@YOSCA)