電車に乗っていた時に、突然同じ車両で喧嘩が始まってハラハラ……なんて経験をしたことはありませんか? 降りようにも、走行中は降りられないという電車のシチュエーションは、喧嘩という思いがけぬ経験をよりスリリングなものにしますよね。

映画でも、高速鉄道列車内で謎のウイルスが急激に蔓延する『新感染 ファイナル・エキスプレス』(2017年)や、実際に起きたテロ事件を映画化した『15時17分、パリ行き』(現在公開中)など、電車を舞台としたサスペンスは、1つのジャンルとして確立されています。近年、数多くの電車を舞台とした映画が製作されているので、ここで電車ならではのハラハラ感が満載な映画を、ご紹介したいと思います。

劇薬を載せた暴走機関車が脱線の危機に!『アンストッパブル』

まず紹介したいのが、暴走する無人電車の圧倒的な迫力を緊張感たっぷりに描く、2001年にアメリカで起きた貨物列車の暴走事故をモデルにした『アンストッパブル』(2010年)です。飛散すれば深刻なダメージを与える有害物質を積んだ電車が、トップスピードで暴走。“魔の大曲り”と恐れられる急カーブで電車が脱線し、市街地に甚大な被害を与える前に、なんとしてでも電車を停止させようとするベテラン機関士たちの決死の作戦が繰り広げられます。

ばく進する最新鋭ディーゼル機関車に必死に追いすがる疾走感や、ヘリから機関車に乗り込もうとする機関士たちの手に汗握る危険な作戦、多くの乗客が乗った列車との正面衝突の危機など、制御不能に陥った電車を舞台にしたパワフルな展開には、誰しも息を飲むことでしょう。

電車で起きた殺人事件、密室がさらなる謎を呼ぶ……『オリエント急行殺人事件』

電車の持つ“密室性”という特性を上手く活かしているのが、アガサ・クリスティの傑作ミステリーを豪華キャストで映画化した『オリエント急行殺人事件』(2017年)です。もはや、あらすじは不要かもしれませんが、名探偵ポワロが、偶然乗り合わせた、トルコからフランスに向かう豪華寝台列車「オリエント急行」内で起きた殺人事件を名推理で解決していきます。

ポワロは大富豪のラチェット殺しの犯人を割り出すため、乗務員1名と乗客12名の計13人の取り調べを開始。限られた客だけが利用する寝台列車に加え、列車は雪のため立ち往生していて、外から誰も近づくことができない“密室”状態なのですが、容疑者には全員アリバイがあり……。電車という密室空間が、事件の謎をさらなる深みへと誘い、濃密なミステリーとなって観る者の知的好奇心を刺激します。

走り続ける列車の最後部から先頭を目指せ!『スノーピアサー』

次に紹介するのは、一風変わった電車ムービー『スノーピアサー』(2013年)です。物語の舞台は、氷河期となった近未来の地球。全人類は、永久機関として開発された箱舟列車スノーピアサー号内で暮らしています。車内は、教育エリア、飲食エリアなど用途別に車両で区切られており、富裕層は列車の前方で優雅な日々を送り、貧困層は列車の後方で人間の尊厳も踏みにじられる過酷な生活を強いられています。

貧富による階級社会が描かれた本作では、箱のように区切られた車両が長く連なるという電車の特徴が、そのまま階級差による居住スペースの違いという痛烈な社会批判として活きています。列車の最後部に暮らす貧困層が先頭を目指し、反乱を企てていきますが、車両ごとに訪れる試練を打ち破っていく姿にはグッとくるものがあります。

駅の数だけ仕掛けられる罠、いつもの通勤電車が勝負の場に『トレイン・ミッション』

(C)STUDIOCANAL S.A.S.

最後に紹介したいのが、3月30日より公開される、ニューヨークの通勤電車を舞台にした映画『トレイン・ミッション』です。物語は、主人公のマイケルが、仕事の帰りに電車に乗っていると、向いに座った謎の女から「乗客100人のうちから普段見かけない1人を探し出せば、10万ドルあげる」という高額の賭けを申し出されるところから幕を開けます。

最初は半信半疑だったマイケルですが、途中の停車駅で、謎の女からの脅迫文を受け取ったことで物語は急展開。10年間通い続けた通勤電車が、突如、命を懸けた勝負の場へと変わってしまうのです。

元刑事だった勘と見知らぬ人々の切符をヒントに、着実にターゲットを絞り込んでいくマイケル。しかし、ようやく探し出したと思った人物が途中下車してしまい……。停車駅での乗客の乗り降りという特徴が、物語をさらに複雑&ミステリアスにしていきます。加えて、終着駅までに見つけ出さないといけないというタイムリミット、停車駅ごとに仕掛けられる新たな謎と罠など、電車の特性を存分に利用したスピーディーな展開には、息つく暇もありません。

私たちの足となり、日々の暮らしを支えてくれる電車ですが、その身近な存在にドラマティックな味付けが加わることで、別世界への入り口が開かれます。映画ならではなハラハラドキドキの展開に、乗り遅れのないようご注意を!

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)