ふたたび走り出すために

前作『全身小説家』から23年ぶりの新作『ニッポン国VS泉南石綿村』、そして『さようならCP』『極私的エロス・恋歌1974』『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』まで、映画作家・原一男の軌跡を総まくりする――『タブーこそを撃て!原一男と疾走する映画(ムーヴィー)たち』はまさに、ドキュメンタリスト・原一男本の決定版である。 「『全身小説家』までを一周目と考え、『ニッポン国VS泉南石綿村』を2周目のスタート地点と位置付けている」原監督はそのために「一周目の全作品を徹底検証する必要がある」と言っている。

辺見庸、庵野秀明、柳美里、四方田犬彦、大塚英志、三浦雅士……本書に収められたいくつもの「批評」「対話」への返答、そしてクラウド・ファンディングで支援してくれるファンへの想いを聞いた。

――「『ゆきゆきて、神軍』以上の映画は、撮れないだろうと思っていたけれど……」。新作『ニッポン国VS泉南石綿村』が東京フィルメックスで上映された際、映画評論家の佐藤忠男さんに言われたことばの先を、監督は気にしていましたね。

原 プロフェッショナルに映画と向き合っている人のことばによって、次の作品へ向け助走し始めることが出来るんです。だからこれまでの私の作品を対象に様々なことばが交われているこの本は、今後の作家活動の指針になると思っています。

原一男監督

――この本で辺見庸さんは、『ゆきゆきて、神軍』では天皇の問題をもっと掘り下げるべきだったんじゃないかと話しています。

原 『ゆきゆきて、神軍』の主人公は奥崎謙三ですが、彼に追及される元上官たちは戦後36年当時の日本人のリアルな姿であるわけです。それを映像できっちり捉えることも重要だった。

――「原さんはアスベストに興味があるかどうか、分からない」とも言っています。原告団の主義主張に、本気で加担しているわけではないと。

原 たしかにただの裁判闘争の記録に留まっていたら、映画とは言えないでしょう。もっと抽象的な、人間存在とはこういうものだという表現まで達しないと。

――劇映画以上にシビれる『ゆきゆきて、神軍』の構図を塚本監督は、絶賛していましたね。奥崎謙三が動き出す冒頭、山間を縫うように進む花嫁行列……。原監督はもともとスチールを勉強なさっていて、その後映画を志すことになりました。その際に違和感みたいなもとはあったんでしょうか。

原 ムービーにはムービー独自の美学があるんだけれども、スチールの美学が中々抜け切らない。そんな感覚は、ずっとありましたね。

――今回クラウドファンディングの特典のひとつとして、原監督のトーク付きで、『ゆきゆきて、神軍』を出張上映するというメニューを用意しています。

原 求められて『ゆきゆきて、神軍』を上映する場に向かうことで、意外な返球があるかもしれない。そんな期待があります。

――それとスチールから出発した原監督がファンを撮影するという、貴重な機会も用意しています。

原 原点であるスチールカメラマンに戻って、ファンと正対する――だからその意味でも、一巡したって感じますね。

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