“見た目は赤ちゃん、中身はおっさん”なハイスペック・ベイビーが巻き起こす騒動を描いた、アニメーション『ボス・ベイビー』。その日本語吹き替え版で、ボス・ベイビーの声を担当したムロツヨシが、自身の少年時代の思い出や良き相棒の存在について語った。

アフレコ収録現場はまさかの一人で驚き

Q:初となるアニメーションの吹き替えのオファーが来たときの感想は?

マネージャーから「赤ちゃん役です」と聞いたときは、「ん、どした?」という感じでしたが、「中身はおっさんです」と聞いて納得しました。初めての吹き替えのプレッシャーもありましたが、いつも初めての撮影現場に行くときは、「怖がらず、小さくまとまらない」と決めているので、今回も同じ気持ちで臨みました。ただ、アフレコ収録というと大勢の声優さんが同じスタジオに入ってやるイメージが強かったので、「マイクの前に出るタイミングが難しそうだな」と思っていたんです。でも、収録現場は僕一人だけだったので、それには驚きました(笑)。

Q:アフレコや本編の感想、またボス・ベイビーのキャラクターの印象を教えてください。

台本に書かれたセリフを決められた秒数でピッタリ合わせるアフレコの作業は難しくて、とてもやりがいがありました。この映画は、一人の少年が兄になっていく成長物語と、赤ちゃんの姿をした男の人生の選択について、ユーモアを交えて描いた作品なので、家族やカップルそろって楽しめる作品だと思います。すぐにお金で解決しようとするところなど、赤ちゃんだから許されるところもありますが、ボス・ベイビーは中間管理職という立場でありつつ、スゴく仕事ができる奴だと思います。だから、いろいろ共感しちゃいました(笑)。

ギャップありまくりなムロツヨシの真実

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Q:劇中、ボス・ベイビーはティム少年と大ゲンカの末、相棒(パートナー)となっていきますが、ムロさんにとっての相棒といえる存在は?

残念ながら女性ではなく、ほとんど仕事のなかった10年前から一緒にいる男性マネージャーです。かなりケンカもしましたけど、徐々に映画やドラマ、舞台などに呼ばれるようになって、今回は初めてのアニメーションの吹き替えオファーですからね。お互いいい意味で利用し合って、自分を高め合えるという意味では、ティムとボス・ベイビーの関係性にも似ているかもしれません。

Q:ギャップも魅力的なボス・ベイビーですが、ムロさんのギャップについて教えてください。

みなさん「明るく愉快でおしゃべりな人で、一緒にいたら楽しいだろうな」と言ってくれますが、仲がいい人には「一緒にいたら、こんなにつまらない人はいない」と言われます。スイッチを切ってしまうと、まったくしゃべらなくなりますから(笑)。あと、あまり後輩に優しくない。僕は体育会系体質なので、礼儀や態度に厳しいんです。「これぐらいできないと、ほかの撮影現場で恥をかく」と思ったら、周りがドン引くほど叱ることもありますね。僕にとってゆとり世代だろうが、何世代だろうが関係ないので。

Q:そんなムロさんの中で、赤ちゃんっぽい部分があれば教えてください。

新井浩文には甘えっぱなしで、常に「寂しい」と言っています。彼はちょっと特殊能力の持ち主で、こっちが何か愚痴ったところで何も返ってこないんですが(笑)、そのマイナス要素を吸い取ってくれるんです。普通なら吸い取った相手も疲れてしまうと思うんですが、彼はそれをどこかに捨てられる能力がある。だから、僕も全力で甘えられます。最初は勝手な思い込みもあって、そこまで仲良くなかったです。だって、変なこと言ったら、殴ってきそうな奴じゃないですか(笑)。

結婚願望と子供ほしい願望

Q:新井さんのほか、多くの俳優仲間から慕われているムロさんですが、それは少年時代に培われた人間力なのでしょうか?

親戚の家に預けられていたこともあって、周りからかわいそうな子だと思われたくないあまり、無理にでも元気な子を演じていました。小学生や中学生の頃は「ものまね四天王」ブームで、お楽しみ会などでは森進一さんのものまねをするコロッケさんをものまねしていました。それで一学期は人気者なのに、二学期には普通の人になって、三学期には飽きられるサイクルが続いていました(笑)。あと、その頃になると、異性の子と話せなくなる子もいると思うんですが、僕は家に帰れば女性ばかりだったこともあって、誰にでも「遊ぼう!」といえる子でした。ただ、そのテンションが苦手な子もいるのは、今も昔も変わりません(笑)。

Q:このような作品に参加したところで、ムロさんの中で、結婚願望や子供がほしい願望は高まりましたか?

30代の頃は、結婚願望や子供がほしい願望はなかったです。でも、42歳になり、こういう作品に携わったことで、“なくはない”になりました。誰かの家に遊びに行けば、子供がいる環境も増えました。だから、父親としての自分を想像する機会も増えましたが、どうも赤ちゃんを巧くあやすことができないんです。それを察しているのか、相手の赤ちゃんも僕もいい距離を保っている。だから、いい父親になれるかはわかりません(笑)。

ヘアメイク:灯(ROOSTER)

スタイリスト:森川雅代(FACTORY1994)

取材・文:くれい響 写真:高野広美