第25回ミスター立教、ホリプロによる「キャンパスター☆H50」グランプリ受賞。スタートラインからしてイケメンロードを約束されたにも関わらず、「2.5枚目俳優」を自称し、M-1グランプリに挑戦した変わりモノ俳優がいる。その男の名は、大野拓朗。

現在放送中のNHK朝ドラ「わろてんか」の漫才師役で認知上昇中の注目株だが、パパママ世代や子供たちの間ではNHKEテレ「Let's天才てれびくん」(2014年~2017年)の“大野課長”としてすでにブレイク済。大野自身も同番組を通して「怖いものがなくなった」と手応えと成長を感じている。子供番組がイケメンの何を変えたのか。

生まれた瞬間からずっとモテ期

「Let's天才てれびくん」は、てれび戦士と呼ばれる数名の子供たちが様々な企画に挑戦するEテレ平日の人気子供番組。大野は同番組に3年間、奇抜な衣装と漫画「ドラゴンボール」のサイヤ人さながらの逆立った髪形で“大野課長”としてレギュラー出演。子供たちを束ねるお兄さん的存在を、情熱的な演技で務め上げた。

「あの番組の面白いところは、プロデューサー以上に現場ディレクターの個性が強くて、ディレクターの一人一人が自分の担当回を番組史上最強のものにするという熱量がハンパではなかった。僕に対する注文も凄くて、普段の自分だったら絶対にできないであろうことを“大野課長”というぶっ飛びキャラを通してどんどんやらせてくれた。ある意味そこで俳優として吹っ切れたところもあるし、役者として怖いものがなくなった」と振り返る。

大野いわく「僕にはモテ期という概念がないくらい、生まれた瞬間からずっとモテていた」というイケメン。そんな経歴ゆえに、俳優としてイケメン的な役柄を与えられることも少なくなかった。しかし本人の心境としては複雑。「モテていたことへの反動なのか、自分としては外見のみのカッコよさというのはダサいという考え方でした。本当にカッコいいというのは、人を笑わせて幸せにできる人や、実力で結果を出す人。イケメン的カッコいい芝居を自分がしても、何一つ面白みを感じることがなかった」と葛藤があった。

 エンターテインメントの根本は「笑い」

(c)「台湾より愛をこめて」製作委員会

 そんな中で出会った“大野課長”というキャラクター。「あそこまでの変なキャラクターは初めてだったし、毎日が全力投球。共演する子供たちをいかに笑わせてNGを出してやろうかと思っていたほど。一方、ディレクター陣は僕にムチャブリをしてくる。もう大野課長というキャラクターが大好きになりましたよ」。スタッフが笑い、共演する子供たちが笑い、視聴者である“茶の間戦士”が笑う。その笑顔の中心には自分がいた。何を目指して表現していくべきなのか、見えた気がした。

「昔から僕は人の笑顔が好きでした。自分にとっての元気の源は“笑い”。だから僕を見てくれる人たちにも笑ってもらって、日々の栄養にしてもらえればいい。それが僕の求めるエンターテインメントの根本。もちろん男ですから『イケメン!』『カッコいい!』と言われるのは嬉しいです。でも『この人面白い!』と言われる方が、心の底から嬉しい」。

「Let's天才てれびくん」から得た想いは番組を飛び出し、俳優としての活動にも大きく役立っている。「わろてんか」のコミカルな役柄しかり、3月24日公開の主演映画『台湾より愛をこめて』での売れないお笑い芸人という役柄しかり。「朝ドラ出演発表の情報解禁前に『台湾より愛をこめて』の主演オファーをいただきました。この映画でも芸人か! とビックリしたけれど、撮影地は憧れの初台湾。ゴハンも美味しいし、人も街も温かい。最高の撮影になりました」。出会いが新たな出会いを生んで、いい経験を呼び寄せる。

24時間役者は苦にならない幸せな時間

(c)「台湾より愛をこめて」製作委員会

大野は「自分にとって『Let's天才てれびくん』の経験は、光栄と感謝という言葉でしか表すことができない」と俳優活動の原点として捉えている。しかしそこに立ち止まることも、良しとはしていない。パブリックイメージは長く張り付くと、時に足枷となるものだ。今の自分に課しているのは徹底した役作り。「わろてんか」のために住民票を大阪に移し、共演者の前野朋哉とは漫才コンビ・潮干狩を結成した。

「私生活にも役作りを持ち込むことによって、カメラの前で思いもよらないしぐさが出る。それが楽しいから味をしめちゃって、自分自身を毎回追い込んでいます。役によってファッションセンスも変わるので、知り合いからイメチェンと勘違いされたり……。役者業は仕事というよりも、趣味の延長、生活の一部。だからこそ役作りは何も苦にならない幸せな時間」と相好を崩す。

今年の11月で30代に突入する。「世間からの“まだ20代だから”という甘えは終わります。一つ一つの仕事で200点取ることを目指して取り組むことは変わらずに続けたい」と覚悟はできている。目標は「2.5枚目俳優で天下をとったら、次はガラッとイメージを変えて重みのある役に挑戦したい」という。未来予想図の下書きはできている。「富士登山で例えたら、2.5枚目俳優としてはまだ6合目くらい。いつ登頂できるか? それは神のみぞ知る天候次第ですよ!」。どんな向かい風にぶつかろうとも、大野は突き進むだろう。笑顔を心に宿して。

(取材・文 石井隼人)