松坂桃李が男娼を演じ、鮮烈なベッドシーンに挑んだ『娼年』(4月6日公開)。メガホンをとった三浦大輔監督は、本作に関し「性描写には一切妥協しなかった」とコメントしていますが、その言葉通り、とても大変なことになっているんです!

ほぼベッドシーン!? 過激な演出が話題を集めた舞台版「娼年」

『娼年』は、無気力な生活を送る“普通”の大学生が、ボーイズクラブにスカウトされて娼夫となり、女性の多彩な欲望と切ない想いに触れて人間的に成長するヒューマンドラマです。原作は2001年に直木賞候補にもなった石田衣良による同名恋愛小説で、性描写を美麗な筆致でつづり評判となりました。

映画に先駆け、2016年には、同じく三浦大輔演出×松坂桃李主演のタッグで舞台化もされたこの作品。ステージ中央にしつらえられたベッドの上で、俳優陣が一糸まとわぬ姿で体を重ねあわせ、“性の極限”を表現した三浦監督の大胆な演出は一大センセーションを巻き起こしました。

舞台としては珍しいR-15指定も話題となり、その前評判の高さからチケットは発売即時にソールドアウト。数少ない当日券を求めて長蛇の列ができたという伝説を生んだのです。

映画『愛の渦』は5/6がヌードシーン!“大胆過ぎる”三浦演出!

三浦監督は、これまでも生々しいセックスシーンを映画で手がけてきた“鬼才”です。乱交パーティに集まった男女8人にフォーカスした『愛の渦』(2013年)では、池松壮亮と門脇麦という若手実力派俳優を主人公に据え、秘密クラブとなったマンションの一室でパートナーチェンジをしながらセックスを謳歌する人々の本音を活写。本編123分のうち着衣シーンはなんと18分30秒のみという思い切った演出方法が衝撃を与えました。

また自身が手掛けた舞台を映像化し、専業主婦と年下男性の不倫を描いた『裏切りの街』(2016年)でも、寺島しのぶ扮する主婦が、出会い系サイトで知り会ったフリーター(池松壮亮)と惰性的なセックスの関係を続けたことで破綻していくという、性におぼれる人々の姿を赤裸々に描きました。

欲望の向こう側にある人々の“本質”をすくい取った『娼年』

(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

センセーショナルな題材を“鬼才”三浦監督が手がけた映画『娼年』は、肉薄した映像が生む圧倒的なリアリティとともに、人が持つ欲望をつぶさに映し出していきます。

松坂演じるリョウは、ボーイズクラブのオーナーの目の前というシチュエーションの中、謎の少女と体を重ね合い、さらにキャリアウーマンやセックスレスの主婦など、さまざまな女性と経験を重ね、十人十色の欲望を肌で感じ取っていくのです。

これらの女性とリョウの営みを、三浦監督は時に上から俯瞰し、時に横からフォーカスするなど計算し尽くされたカメラアングルで肉薄。愛の交歓を続ける2人の表情や息づかいまでしっかりと漏れ伝わってきます。

その映像表現は衝撃的かもしれません。しかし、三浦監督は真正面から向き合うことで人間の持つ欲望を肯定。登場人物たちが抱える複雑な想いや心の機微までも見事にすくい取り、“人間”そのものを浮き彫りにしていくのです。

(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

娼夫という仕事を通して人間的に成長していく主人公。「女なんてつまんないよ」と無気力だったリョウですが、肉体のコミュニケーションを経て、女性のさまざまな欲望の本質を目の当たりにすることで、変化が生まれていくのです。女性たちに気持ちを寄り添わせることで、自らも解放されていくリョウを、松坂は激しくも繊細という、相反する表情を同居させた演技で体現しています。

三浦監督は「セックス描写を重ねながらも、エロスではないものを描くことを貫き通した作品。だからこそ感触は清々しくてポップなものです」と本作への想いを明かしています。その想いを共有する松坂も、3月中旬に行われた完成披露イベントで「最初は面食らうかもしれませんが、劇場を出るときにはきっと軽やかな会話が繰り広げられると思います」と語っています。

“肉体のコミュニケーション”と同時に“人間的成長のドラマ”が描かれることで、意外にも爽やかな余韻に包まれる『娼年』。この映画でしか得られない後味を是非体験してみてはいかがでしょうか。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)