文=木俣冬/Avanti Press

テレビドラマの人気ジャンルといえば、“事件もの”と“医療もの”と言われて久しいが、4月クールのドラマも、引き続きその傾向が強い。

主演・坂口健太郎
「シグナル 長期未解決事件捜査班」4月10日(火)よる9時放送開始
(C)カンテレ

なにより“警察もの”がずらり。ざっと挙げてみると、謎の無線機を使って過去と交信することで事件を解決するSF的なミステリー「シグナル 長期未解決事件捜査班」(カンテレ・フジテレビ 火曜よる9時)、井ノ原快彦が正義感あふれる巡査部長を好演する「特捜9」(テレビ朝日 水曜よる9時)、ノンキャリアでたたきあげの刑事(内藤剛志)の地道な捜査を描く人気シリーズ「警視庁・捜査一課長 season3」(テレビ朝日 木曜よる8時)、波瑠と鈴木京香、女性のバディもの「未解決の女 警視庁文書捜査官」(テレビ朝日 木曜よる9時)など。上川隆也が八千草薫の執事に扮する「執事 西園寺の名推理」(テレビ東京 金曜よる8時)は、主人公の民間人が、警察よりも鮮やかに事件を解く話だが、事件ものということで、ここにカテゴライズしておく。

大人向けから若者向けまで、オーソドックスなものから変わり種まで、各種取り揃っている。気になるのは、未解決事件を扱うドラマが2作もあること。過去にも未解決事件を扱うドラマはあった。“未解決”という言葉には何か不思議な魔力があるようだ。

それから、二宮和也が主演の日曜劇場「ブラックペアン」(TBS 日曜よる9時)は海堂尊原作の医療ミステリーで、事件ものと医療もののハイブリッドということと、「陸王」(2017年)、「99.9-刑事専門弁護士-」(SEASONⅠ2016年、 SEASONⅡ2018年1月)と高視聴率を叩き出している時間帯日曜よる9時なので、期待がかかる。

○○出身キャストに注目! 4月期ドラマの新たなキーワードとは?

とはいえ、“事件もの”と“医療もの”というキーワードばかり取り上げてもおもしろくないと思っていたところ、新たなワードが現れた。

“朝ドラ”である。ドラマの主人公及びメインキャストに“朝ドラ”出身者が目白押しなのだ。

「シグナル」は坂口健太郎、「未解決の女」は波瑠と鈴木京香と、3人とも朝ドラに関係している。坂口は「とと姉ちゃん」(2016年)でヒロイン(高畑充希)の相手役だった。波瑠は「あさが来た」(2015年)のヒロイン、鈴木京香は「君の名は」(1991年)のヒロインで、「わろてんか」(2017年)では主人公の義母役だった。

「ブラックペアン」で二宮演じる主人公のライバル役、竹内涼真は「ひよっこ」(2017年)でヒロイン(有村架純)の初恋の相手を演じたが、今回、「わろてんか」のヒロイン・葵わかな演じる新人看護師と恋愛関係になるかもしれないらしい。ちなみに、竹内は、「過保護のカホコ」では高畑充希演じる主人公の彼氏役で、朝ドラヒロイン制覇を目指しているのかと思うほど。……冗談はさておき、朝ドラ出身者はまだまだいる。

主演・吉高由里子(右)、事務官役の安田顕(左)
「正義のセ」4月11日(水)よる10時放送開始
(C)日テレ

「リーガルハイ」で法廷劇をエンタメ化した脚本家・古沢良太が、コンゲーム(信用詐欺)ドラマに挑む「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ 月曜よる9時)の詐欺師のメンバーのひとり東出昌大は「ごちそうさん」(2013年)のヒロイン(杏)の夫役で、のちに実際結婚した。新米検事の活躍を描く、阿川佐和子原作の「正義のセ」(日本テレビ 水曜よる10時)の吉高由里子は「花子とアン」(2014年)のヒロイン。

最近、毎クール必ずある復讐もの「モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―」(フジテレビ 木曜よる10時)は「あさが来た」でブレイクしたディーン・フジオカが主役。2組の夫婦の日常をリアルに描くという触れ込みの「あなたには帰る家がある」(TBS 金曜よる10時)の主人公(中谷美紀)の相手役は「あさが来た」の主人公(波瑠)の夫役でドラマを大いに盛り上げた玉木宏。朝ドラのなかでも人気の高かった「あさが来た」の主要キャスト3人が、今期、別々のドラマを牽引することは興味深い。

『逃げ恥』作者の「デイジー・ラック」、豊川悦司は朝ドラで少女漫画家

ほかに「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年)の原作者・海野つなみが描く女性4人のリアルな本音が滲む「デイジー・ラック」(NHK 金曜よる10時)には、「純と愛」(2012年)のヒロイン役だった夏菜が出演。

「おひさま」(2011年)で助演した田中圭と、「花子とアン」(2016年)でブレイクした吉田鋼太郎が、同性愛を演じる「おっさんずラブ」(テレビ朝日 土曜よる11時15分)など、ほぼ20%超えを誇る高視聴率ドラマ・朝ドラの出演者は認知度と好感度が抜群だから、起用されやすいのだろう。この傾向は今後も強くなっていく可能性はありそうだ。

当の朝ドラは、北川悦吏子が、片耳を失聴しても明るく前向きに生きていくヒロイン(永野芽郁)を描く「半分、青い。」(NHK 月~土あさ8時)だ。いままでにない胎児から登場するヒロインだとか、くらもちふさこの漫画を、豊川悦司演じる漫画家が描いているという設定など、話題に事欠かない。

ユニーク企画ドラマも要チェック!

とはいえ、朝ドラ色のないドラマにも、注目作は多い。新卒営業マンの、恋や仕事を生々しく描いた新井英樹の漫画のドラマ化「宮本から君へ」(テレビ東京 金曜深夜)は池松壮亮主演、真利子哲也演出で、見ごたえありそうだ。

主演・池松壮亮「宮本から君へ」
4月6日(金)深夜0時52分放送開始
(C)「宮本から君へ」製作委員会

土田英生脚本の「崖っぷちホテル!」(日本テレビ 日曜よる10時30分)、菜々緒が得意の悪女を演じる「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」(日本テレビ 土曜よる10時)、「半沢直樹」(2013年)「陸王」などの八津弘幸による脚本、松岡昌宏が女装する「家政夫のミタゾノ」(テレビ朝日 金曜よる11時15分)、神木隆之介が学校弁護士を演じる「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」(NHK 土曜よる8時15分)、SNSで盛り上がっている漫画のドラマ化「やれたかも委員会」(TBS 火曜深夜)など、ユニークな企画ものもチェックしておきたい。

ちなみに、「やれたかも委員会」に出演する山田孝之も「ちゅらさん」(2001年)でヒロインの弟として注目されたが、現在、その頃の印象を大きく覆して活動しているため、朝ドラ関連にはカウントしないこととする。

新パートナーの剛力彩芽
「家政夫のミタゾノ」出演:松岡昌宏 剛力彩芽
テレビ朝日系 毎週金曜夜11:15~(※一部地域除く)
4月20日(金)スタート!

あの人気シリーズの続編も! この春出会う新ドラマに期待

最後にもうひとつ、配信ドラマを。堤幸彦監督と植田博樹プロデューサーが「ケイゾク」(1999年)、「SPEC」(2010年)の続編の「SICK’S 恕乃抄」(Paravi)の配信作に挑んでいる。しかも、1日、1、2分ずつの放送で、1話の全貌がわかるのは1カ月くらいかかるという画期的な方式(ピンチョス配信)。Youtubeなどで短い動画を楽しむ人が増えている時代に、この企画がどう受け取られるか注目だ。ちなみに、「SICK’S」には、松田翔太、徳井優、佐野史郎、竜雷太と大河ドラマ「西郷どん」の出演者が多い。少しでも視聴者に引っかかりをつけたいと思うと、朝ドラとか大河に乗っかるほうが得策ということなのだろうか。

今回のコンビは木村文乃と松田翔太
SPECサーガ完結篇「SICK’S 恕乃抄」 (C)TBS
4月1日(日)サービスが開始された動画配信サービスParaviオリジナルドラマ第1弾

そういえば、前述した「コンフィデンスマンJP」の古沢良太が、3月31日放送の「新・週刊フジテレビ批評」で「好調に見える局も、守備を固めて失点しないようにしているように思える」と指摘していた。当人の新作は、“朝ドラ”出演者を盛り込みつつも、口八丁手八丁で強者から大金をせしめる詐欺師のドラマ。過去の成功体験に縛られず、飄々と新しく面白いドラマを作りあげようとする姿勢は頼もしい。

安定したものの楽しいし、守りの中から新たな潮流が見えてくることも期待したい、春4月。あなたはどれを視(み)ますか?