2017年に韓国で公開された作品の中で第4位の成績を収めた『犯罪都市』が、4月28日より日本公開される。本作は、実に「胸板の厚い」娯楽活劇だ。主演は日本では昨年に公開された『新感染 ファイナル・エクスプレス』で人気が爆発しているマッチョな純情派、マ・ドンソク。彼の胸板ももちろん厚いが、映画そのものの醍醐味がとにかく分厚いのだ。

観る者を作品に引き込む「腕っ節」の良さ

韓国映画には実際に起きた事件を映画化する、いわゆる「実録もの」が多い。本作も、2004年に起きた韓国系中国人暴力組織が一斉摘発された事件を基にしている。

韓国映画では警察を、“アテにならない無能な組織”として描く作品が多いが、『犯罪都市』では、強力班(日本で言うところの強行犯係。凶悪事件を担当する刑事たちが属する課)の捨て身の任務を讃えている点が異色だ。言ってみれば、これは警察の復権映画でもある。

だが、ご都合主義の勧善懲悪ものと勘違いしてはいけない。本作には、実にダイナミックかつパワフルな求心力で、ぐいぐい作品世界に引き込んでいく「腕っ節」の良さがあるのだ。

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新興勢力が旧世代を駆逐

本作に登場するのは、「朝鮮族」と呼ばれる韓国系中国人の少数民族から成るギャング団。抗争が激化している複数のヤクザ組織を、ギャング団は蛇のように丸呑みしていく。情け無用で、躊躇一切なしのギャング3人組の凶行は、タメやハッタリを効かした韓国ヤクザたちの古い性質を蹴散らし、瞬く間にのし上がっていく。旧態依然のヤクザたちが、ハイスピードな新興勢力によって駆逐されていく様は、爽快感を通り越して、恐怖さえ感じさせる。

なぜなら、その過程は、デジタル化の激しい余波によって、それまでのビジネスの在り方が根底から覆り、途方に暮れる現代社会の縮図のようにも感じられるからである。クールに現実を見据えて、切り取っていく悪玉の横行は、観る者の首筋にナイフを突きつけ、その冷たさで震え上がらせるだろう。

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マ・ドンソク、ここにあり!

こうしたデジタルなヒールに対抗するのは、きわめてアナログな刑事である。

ヤクザたちとも持ちつ持たれつの関係をキープしながら「やるときはやる」男を、マ・ドンソクが快演。銃に頼らず、一貫して素手。それも拳を使わず、平手打ちで相手を迎え撃つアクション・スタイルは、そのバチンバチンという人肌のサウンドと共に、情の深さを体感させる。

上司に媚びないどころか、タメ口で渡り合い、部下には思いやりを持って接する、懐深い主人公。気の利いた台詞こそ吐けないが、女に弱いというチャームポイントもあり、強面ながらに憎めない風情がビシバシ漂う。

マ・ドンソクは、イカツイ顔立ち、ガタイであるにもかかわらず、実は根が優しいキャラクターで知られている。韓国では「マ・ドンソク+ラブリー」を意味する「マブリー」なるニックネームで愛されているが、彼の性格を存分に活かしたナイスな役どころである。

豪快で、ある意味「動じなすぎ」のアナログ刑事と、俊敏かつ、冷徹きわまりない「不動」のデジタル・ギャングが、いかなる対決を繰り広げるかは観てのお楽しみ。空港の大きなトイレで、ふたりきりで行われるそのシークエンスが観たこともないバイオレンスに仕上がっていることだけは指摘しておきたい。

「どこまでやるの?」という疑問に「まだまだ、やるぞ!」と応え続ける、超特盛り、全部のせ感覚のアクションに次ぐアクションに、ぶちのめされること間違いなし。

『犯罪都市』は設定、洞察、演技、質量、活劇、満腹感。エンタメに欠かせない要素をすべて次の次元にアップデートさせた映画と言えるだろう。まさに「胸板の厚すぎる」頼りになる一作である。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)