映画『聲の形』が第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した京都アニメーション。監督は山田尚子。4月21日公開の『リズと青い鳥』と合わせて、これまで制作スタジオ・京都アニメーションが、アニメという表現によって作り上げてきた映画作品の中でも山田尚子監督作品をピックアップし、振り返ってみたい。

映画になっても彼女たちの「友情」は変わらない『映画けいおん!』

2009年にTVアニメ「けいおん!」。2011年には『映画けいおん!』が公開された。

軽音部で日々を過ごす少女たちを、ガーリーかつポップに描いた本作は、TVアニメ放送当時からの人気をそのままに、劇場版は約19億円という興行収入を記録。深夜アニメから劇場アニメに至る流れを確立した作品の1つとなった。

それほどに注目を集めた『映画けいおん!』では、さぞ熱いドラマが繰り広げられるかと思いきや、そうではない。卒業旅行としてロンドンへ旅に出る少女たちだったが、彼女たちはいつもの日常とは離れた地でも、TVから映画へと描かれる場所を変えても、変わらなかったのだ。TVアニメの映画化といえば、普段とは違ったスペクタクルが展開するという定番を逆手に取り、「映画」という特別なステージでも変わらない少女たちの「友情」を描いたのだった。

市井の人々を描く松竹映画の遺伝子で「恋」を描いた『たまこラブストーリー』

「けいおん!」シリーズの後、2013年にオリジナルTVアニメ「たまこまーけっと」を制作。その1年後、TVアニメの続編となる劇場版『たまこラブストーリー』を手がける。

とある商店街に暮らす主人公・たまこたちを描いたTVアニメから一転、タイトルが変わり、儚げなたまこが描かれたキービジュアルが、アニメファンの話題を集めた。

そして公開された『たまこラブストーリー』は、配給の松竹が誇る名監督・小津安二郎や山田洋次が描き続けて来た、どこにでもいる人々の生活や人生の機微を描いた作品に仕上がっていた。

高校3年生となり、東京の大学へ進学を決めたたまこの幼なじみ・もち蔵は、ずっと想い続けて来たたまこに告白する。自分の中に芽生えた「好き」という感情を、少しずつ掴んで行くたまこのドラマを、タイトル通りに真っすぐ描く。当たり前だった日常が、誰かの決意と自らの意思で変わっていく。そんな松竹映画らしいドラマツルギーを、アニメならではのキャッチーさを随所に織り交ぜながら、1つの「恋の形」として、まとめ上げたのだ。

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

音楽と繊細な仕草で紡ぎ出す、『リズと青い鳥』という名の「愛の形」

最新作となる『リズと青い鳥』は、2017年に劇場版も公開されているTVアニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズと繋がる1作。吹奏楽部で、オーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルート担当の傘木希美という2人の少女の物語だ。

高校3年生となり、コンクールの課題曲「リズと青い鳥」の練習をする中、同名の童話に出てくるリズと少女に、自らを重ねていく。交わされる台詞は多くはないが、繊細な心情を表す作画、童話の中の別世界を水彩画のような鮮やかさで描く背景、演奏者の心境を表して交わっていく吹奏楽の音楽と、1歩1歩を彼女たちが踏み出す足音。映像表現のすべてを駆使して、ドラマが紡がれていく。

2人の少女たちが、自らの心に「リズと青い鳥」という曲・物語を通じて向き合っていくことで、気づいたこと――。そこから「愛の形」が生まれ、羽ばたいていく。

アニメという表現を用いて、「映画」という媒体を通じ、京都アニメーションの山田尚子監督が描いて来たさまざまな“形”。劇場に響く「リズと青い鳥」を耳にしたとき、きっとあなたの中にも、その新たな“形”が生まれるはずだ。

(文/加藤真大@アドバンスワークス)