2016年12月に公開された『イノセント15』で、あまりにも過酷な日常を生きるヒロインを演じた女優・小川紗良。観る者をハッとさせる原石の輝きが、そこにはあった。撮影当時18歳だった小川は現在21歳。女優のみならず、映画監督としても地道にキャリアを積んでいる。4月14日からは出演作『聖なるもの』が公開。独立独歩、我が道を往く新世代ならではの躍進と魅力に迫りたい。

「撮る」と「撮られる」を両立する才能

小川は高校生向けの情報誌「HR」の専属モデルとなったことからキャリアをスタート。彼女自身も高校生だったが、学校行事の記録映像を手がけたことから映像クリエイトに興味を持つようになったという。

小川は現在大学生だが、既に3本の短編映画を監督しており、そのすべては、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に出品されている。2017年に製作された『最期の星』は、企画から編集まで、彼女が在学する早稲田大学で教鞭をとる是枝裕和のアドバイスがあったという。是枝はプロデューサーとしての手腕も確かで、かつては西川美和を監督デビューさせた実績もある。いずれは、小川もメジャーシーンで活躍する映画監督に成長するかもしれない。

今年2月に公開された小川の主演作『ウィッチ・フウィッチ』の酒井麻衣監督は、小川を「監督仲間」と表現しているが、小川の強みはインディーズシーンにおいて、「撮る側」と「撮られる側」を行き来していることにあるかもしれない。

自身の高校時代をモチーフにした『最期の星』では演出に専念しているが、前2作では自ら出演している。つまり、映像被写体としての自分を客観的に見る目が、したたかに備わっているのだ。

「才色兼備」も「二足の草鞋」も超えていく

岩切一空監督の『聖なるもの』では、そんな小川紗良の独自性が伸びやかに発揮されている。4年に一度現れるという「伝説の美少女」に出逢い、映画づくりを開始した大学生の主観を綴る本作で、小川は独りよがりになりがちな主人公を辛辣に諭す女子大生を演じている。

自分の監督作を準備していながら、請われたから女優として参加したという設定が、小川の実人生とも重なり、本作において鮮やかな効果をあげているのだ。冷ややかな排他性と、引き受けたからには何が何でも全うするというド根性が、不思議な同居を見せるこのキャラクターは、作品のアクセントとして機能。ときにムーディーに流れがちな映画に、楔を打つ役割を果たしている。

小川はこんなふうに、物語にピリリとスパイスを効かせることができる一方、出世作『イノセント15』では不幸のどん底にありながら、不屈の透明感をまとっている少女を切々と体現している。あどけないルックスに大きな変化は感じられないが、キャラクター自体は別人のようで、作品が求める方向性、ニュアンスに無理せず「染まれる」才能が既に開花している。

(C)2017『聖なるもの』フィルムパートナーズ

女優が監督を志すようになる例はいくつもある。だが、被写体として「選ばれた」タイミングと、映像制作を「選んだ」タイミングが一致する女性はなかなかいない。小川紗良は、彼女だけのタイミングで、「撮ること」を「撮られること」に活かしながら、また、「撮られること」を「撮ること」に活かしながら、有機的なキャリアを育んでいくに違いない。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)