映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、1982年に発表された絵本を原作に、1995年に公開されたロビン・ウィリアムズ主演『ジュマンジ』の続編にあたる作品です。前作はボードゲームの世界に迷い込むという物語でしたが、今回の舞台はテレビゲームの世界。高校生の主人公たち4人は、ゲームのキャラクターに姿を変えられ、ジャングルを探検することになります。

作中では主人公の一人スペンサーを、現実世界ではアレックス・ウルフが、ゲーム世界ではドウェイン・ジョンソンが演じます。映画冒頭でアレックス・ウルフが演じた気弱なオタク少年のキャラクターを、マッチョなドウェイン・ジョンソンが引き継いで演じているところは、映画の大きな見どころです。

このように一人二役ならぬ、多人数一役なキャスティングは、これまでもいくつかの映画でみられました。中には、123人一役という、主人公の外見がコロコロ変わりすぎる作品も……。そこで、多人数一役の面白さを、過去作の中に垣間見たいと思います。

ボブ・ディランが6人いる!…『アイム・ノット・ゼア』

「詩人」、「予言者」、「無法者」、「ニセ者」、「エレキギターの天才」、そして「ロックンロールの殉教者」……。人々がもつボブ・ディランへのイメージ、その6つの側面を6人の俳優が演じたのが『アイム・ノット・ゼア』(2007年)です。

この映画を観ると、ボブ・ディランというアーティストが備える多面性に驚かされます。中でも面白いのが、「ロックンロールの殉教者」を、女優のケイト・ブランシェットが演じていること! 女性が男性を演じているのですが、意外にもその見た目や口調、仕草が、往年のボブ・ディランを彷彿とさせるのが、この映画の面白いところです。

この作品がさらに面白いのは、俳優ごとに演じる物語のテイストが違うこと。「予言者」ことジャック・ロリンズはドキュメンタリー映画風、「エレキギターの天才」ことロビー・クラークは家族ドラマ風というように、ボブ・ディランの人生をさまざまな角度から見ることができるのです。ビートルズやブライアン・ジョーンズ、アレン・ギンズバーグなども出演しており、当時のショウビズ界の華やかな姿を見ることもできます。

「歌詞の無意味さこそ崇高なのに」、「俺は自在に変わる。自分でも正体不明だ」、「市民を代表してウソをばらまくペテン師」、「転がる石のように生きて(Like a rolling stone)」。6人のキャストがそれぞれ語ったセリフが、ボブ・ディランの人生を表しているかのようです。

ジョニデやコリン・ファレルが一役を演じる…『Dr.パルナサスの鏡』

2009年公開の『Dr.パルナサスの鏡』では、主人公のトニーを演じたヒース・レジャーが撮影中に急死。彼と親交のあったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルがトニー役を引き継ぐことで、主人公を4人の俳優が演じ分けるという、当初の構想にはない作品となりました。

では、なぜ4人が主人公を演じても、物語は破綻しなかったのか? それは、同作の摩訶不思議な世界観にあります。物語の舞台は移動式の見世物小屋「幻想館」。舞台中央に置かれた「鏡」に入ることで、鏡の中の世界では、その人がもつ欲望が具現化して現れます。この摩訶不思議な鏡が物語の軸であることで、本来はヒース・レジャーが1人で演じる予定だったトニーを「鏡の中に入ることで姿が変わる」=「トニーを複数の人が演じても良い」という発想になり、この四人一役という配役が生まれました。

作中では、あるマダムの内面世界が鏡によって具現化され、トニーが後から鏡に入ると、トニーは彼女好みのジョニー・デップに。さらに、トニー自身の願望の姿としてジュード・ロウに変化したり、一座のヴァレンティナの理想とする姿としてコリン・ファレルが演じるトニーが登場したりと、豪華俳優陣たちが1人のトニーを演じています。

不幸な出来事から図らずも生まれた四人一役でしたが、そのことが物語をより一層面白くしました。それも、数々のユニークな映画を生み出してきた、監督テリー・ギリアムの手腕あってこそといえるでしょう。

123人が演じた韓国人男性ウジン…『ビューティー・インサイド』

主人公を123人もの役者が演じた、前代未聞の作品が『ビューティー・インサイド』(2015年)です。コンセプトは“誰でも主人公の男を演じることが出来る映画”。応募された映像を元に、6つのエピソードで構成される長編映画です。

主人公のウジンは18歳の誕生日を迎えた日から、眠りから覚めるたびに、外見が変わってしまうようになります。その変化は老若男女も国籍も問いません。日本からは上野樹里が出演していますが、彼女の姿になったときには、韓国語は理解できても話すことができないという設定。外国人の姿になると、その母国語でしか話せないというアイディアが、物語をより面白くしています。

作中ではウジンが、ある女性をデートに誘うため、彼女に見合った姿になるまで、ひたすら待ち続けます。しかも、眠ってしまうと他の外見になってしまうので、睡魔に耐えようとする姿が面白くも悲しいところです。外見は変わっても、中身はそのまま。彼の内面の美しさに気づけるかどうかという物語は、主人公が2つの姿をもつ『美女と野獣』に通じるところがあるかもしれません。

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』/3月30日(金)より MX4D/4DX にて先行上映、4月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』では、あのドウェイン・ジョンソンが「出来ないよ!」と泣き言をいうなど、いままでにないロック様の姿を見ることができます。さらに、自撮り大好きで自己中心的なかまってちゃんの美人ベサニーは、コメディ俳優として人気のジャック・ブラックが演じる小太りの中年オヤジに。自分に自信がもてないマーサは露出の多いセクシーな女戦士に変身し、ベサニーから男を誘惑する方法を教えてもらいますが、当のベサニー自体の姿は中年オヤジ……というように、現実とは正反対の姿になった主人公たちが、爆笑の物語を展開していきます。

現実世界で自分の長所だったと思っていたところが、実は自分の悪いところだったというように、姿が変わることで初めて他人の気持ちに気づくことができるのは、二人一役の物語ならでは。ぜひ、彼らの成長物語を、映画館で確かめてみてください! 人は一歩踏み出す勇気があれば、変われることに気づかせてくれるはずです。

(文/デッキー@H14)