2015年夏に封切られたパート1以降、コンスタントに新作を発表する、人気アウトロームービー『闇金ドッグス』シリーズ。「1」から主人公・安藤忠臣を演じてきた山田裕貴は、最新主演作「8」を「いちばん『闇金ドッグス』らしい作品」と語る。「人間の愚かさが醜く、美しく出ていた。素直な汚さに“あぁ、人間だな”って思いました」

若くしてヤクザの親分にまで昇りつめたものの、早々に引退後は闇金業社「ラストファイナンス」の社長となった忠臣。元ホストの司(青木玄徳)と共に、欲に溺れ、闇に放り出された債務者たちと生々しい人間ドラマを繰り広げてきた。本作の撮影前、山田は忠臣を演じる難しさを感じていたと明かす。

「前回の『6』『7』で恋愛に触れた辺りから“この先、どうやって忠臣を生かしていこうか?”と考え始めました。債務者側のドラマが色濃く描かれた、今回の台本を読んだ時にも、忠臣というキャラクターをどう出していこうか?と考えたんですけど、敢えてなにもしないことだなって。闇金業者として淡々とお客さんを相手にする、忠臣のブレない感覚を見せていこうと。やっぱり俺が考えちゃったら、それはもう役ではなくて、俺になっちゃうと思ったんですよね」

(c)2018『闇金ドッグス8&9』

パート8では、生活保護を受けながら、のうのうと暮らす湯澤賢一(仁科貴)家族の地獄絵図が描かれる。仕事のトラブルから脳卒中を患い、昏睡状態に陥った長男をめぐる、後半の一家の修羅場は震撼必至だ。

「(撮影現場で相対した)ゲス家族は衝撃でしたね!いつも自分でも台本を越えなきゃとは思ってるんですけど、湯澤家のみなさんがハードルをいくつも飛び越えた、素晴らしい芝居をしてくれたんで、助けられました」

山田が印象に残っているのは、支給日までの生活に困った賢一が、妻と娘を伴い、忠臣の元を訪れるシーンだ。

「忠臣が『あと一万、誰か借りるか?』と札をかざしたとき、一万円に飛びつく三人の様子を見ていたら、あまりにも滑稽で、笑っちゃったんですよね。本当に救いようがなくて、笑えてきちゃった。“ここで忠臣の感情を見せても、つまらないかなあ?”とも一瞬思ったんですけど“いや、ここは感じたまま、素直にそう生きてみよう”って。台本に『笑う』と書かれてあったわけじゃなく、そうしようと決めてたわけでもない。ただ、現場で生まれた感覚でした」

(c)2018『闇金ドッグス8&9』

不確かさから、人生のリアルは生まれる。常々「役を演じる」のではなく「役を生きる」と言う山田の、芝居の真骨頂はここにあるのかもしれない。

「忠臣だから、こういうことは言わないとか、これはやらないとか、そういう風に役を狭めてしまうのは面白くない。“人間だし”って思ってます。それは忠臣に限らず、どの役でも素直にそこ(現場)に居ることを心がけていて。(長年演じ続ける忠臣として、新作の現場に入る時も)考えすぎないようにしていますね。新作の準備として、シリーズ全作を観直すこともしないです。全部観返して、その続きをやろうとすると、作品と作品の間に流れているはずの忠臣の時間がなくなっちゃうというのかな。むしろ、その時間を感じてもらえるようにしたいと思っているんです。これまでの時間経過の中で、忠臣にどんな変化があるだろうか? 『6』『7』を経てなのか、『4』『5』を背負ってなのか? ということは考えますけど」

(c)2018『闇金ドッグス8&9』

かわいた忠臣の笑いから、今後のシリーズの展開も生まれた。

「さっきプロデューサーさんと少し話してたんですけど、忠臣があそこで笑っちゃったってことは、賢一たちを見下すような悪い部分を持っているということ。今までだともうちょっとフェアに、客を扱っていたと思うんですけど、人間を下に見始めちゃったんですよね。それがこれから先の布石になっていくんじゃないか? 最終的には、忠臣が自分の闇に呑まれていく、みたいな展開も面白いよねって。そういう感覚で捉えれば、パート1から、もし『10』『11』があるならば、ちゃんと人生が見える作品になるんじゃないかなって思うんです。『9』の最後に『おまえ、警察に目をつけられてんじゃねえよ』というセリフがあったんですけど、それも警察に目をつけられたってことじゃないですか? 『10』にめがけて、あまりにもうまく話が膨らんでいくので“わあ、すげぇ!”って(笑)。プロデューサーさんとか監督とか、映画を作る人ってすげぇなあって思いました」

『闇金ドッグス8』(4月14日公開)
『闇金ドッグス9』(5月19日公開)
監督:元木隆史 脚本:池谷雅夫 出演:山田裕貴、仁科貴、タモト清嵐、結城さなえ、佐藤日向/小倉久寛、青木玄徳 配給:AMGエンタテインメント (c)2018『闇金ドッグス8&9』製作委員会

制作:キネマ旬報社