4月7日公開の映画『私は絶対許さない』は、看護師でSM嬢の雪村葉子氏が、15歳で集団暴行被害を受けたことを赤裸々に綴った告白手記が原作。主観映像演出という斬新なスタイルを用いて、精神科医でもある和田秀樹が監督した。家族の迎えの車を夜の無人駅で待っていたことから、見知らぬ男5人に拉致され、集団暴行されてしまう主人公・葉子を体当たりで演じたのが、NHK大河ドラマ「西郷どん」にも出演した女優の西川可奈子だ。

“#MeToo”他人事ではいられない

平穏な生活を送っていた15歳の少女の人生を一変させた、集団暴行というあまりにも残酷な行為。しかし雪村氏の手記を映画化する上では避けては通れない表現でもある。ゆえにR18指定作品ともなった。西川はなぜ引き受けたのか。

「同じ女性として目を背けることはできないし、現在の“#MeToo”運動にも表れているように、性被害は世界的にも社会問題化しています。私自身、過去に危険な目にあいそうになったこともありました。他人事ではいられないと思ったし、雪村さんが体験されたことを自分という肉体を通して広く知らしめるべきだと思った」と、同じ女性としての責任感と使命感が女優魂を叩き起こした。

背中を押したのは母親の言葉

それでも怖い。疑似とはいえ、5人の男たちに乱暴に連れ去られ、身ぐるみはがされ、次から次へと……だ。「人って本当に恐怖を感じると声が出ない。“助けて”というセリフも、かき消されてしまうかのような小さな声でしか言えませんでした。男性5人に囲まれて押し付けられると女性は抵抗すらできない。生きたいからこそ無抵抗になってしまった雪村さんの当時の心境が痛いほどに理解できた」と痛々しい場面を回想する。

集団暴行シーンの撮影が行われたのは、全体の撮影の中盤あたり。当該シーンを終えた直後に連絡を入れたのは、母親だった。「自分に一番近い存在で、相談できるのはいつも母。私のしたいことを前向きに捉えてくれて、プッシュしてくれる。この役が決まったときも『とにかく応援するから頑張って』と言ってくれた。驚きも困惑もなくただ『頑張れ』と背中を押してくれた」。肉体的にも精神的にも辛い局面を乗り越えた後の母からの「お疲れ様」という言葉で、これまでの苦労が吹き飛んだ気がした。

この作品に携わって良かったと思える

主観映像という通常の撮影とは違うスタイルにも一苦労。演技をする西川の目の前に小型カメラが固定されているような状況で、カメラマンとの阿吽の呼吸が必須だった。「監督からの演出が付いた後に、カメラマンの方と動きの一つ一つを確認して、一心同体のような気持ちでいました。走るシーンではカメラ機材にぶつかりまくるし、2人同時に転んだこともあるくらい」と思い出し笑い。

目の前にカメラがあることから、共演者の目を見て芝居することができず、感情の入れ方にも悩んだ。それに「主観映像って……主演なのに私がほとんど映らないってこと!?」とも驚いた。だが完成した作品を目にして、主観映像スタイルだったからこそ題材とテーマがしっかりと描けたと納得。「観客は実際に私が見たものを通して、すべてを目の当たりにすることになるし、目をそむけたくなるくらいのリアリティを感じることもできる。斬新な撮り方でしたが、この撮り方だからこそ成立した映画だと思えた」と体感型の衝撃を予告する。

本作を通して「女優として怖いものがなくなった」という自信も芽生え「やっとスタート地点に立てたようなものなので、目の前にあることをコツコツと。この映画を通して私の名前を覚えてもらい、誰からも求められるような女優を目指していきたい」と気持ちを新たにする。

劇中では成人した葉子(平塚千瑛)の前に過去の幻影として西川演じる葉子が現れるという展開があるが、公開を迎える今、撮影当時の自分に西川はなんと声をかけるのだろうか? しばらく考えたのちに西川は「1年後にこの作品に携わって良かったと思えるよ、と言いたいです」とまっすぐ前を向いた。

(取材・文/石井隼人)