40年以上の時を経て、今なおカルト的な人気を誇る『悪魔のいけにえ』(1974年)。そのマスターフィルムはニューヨーク近代美術館に永久保存されており、“ホラー映画界のカリスマ”といっても過言ではない作品です。そのシリーズ8作目となる新作『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』が5月12日に公開されます。

今回は、ストーリー紹介とともに、これまでにシリーズを観たことがない人でも新作を存分に愉しむためのハウツーとして、殺人鬼・レザーフェイスの魅力を分析! “中毒性のある恐怖描写”と“人間味のある殺人鬼”に焦点をあてて、ご紹介していこうと思います。

『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』は第1作の前日譚

レザーフェイスとは、チェーンソーを凶器に人間を殺害し、顔の皮を剥いでマスクにする殺人鬼です。ストーリーは第1作『悪魔のいけにえ』の前日譚となっており、レザーフェイスの少年時代が描かれています。

レザーフェイス少年は、テキサスの田舎町で旅行者などを襲って食人するソーヤー一家の末っ子。少女をめぐる陰惨な事件により更生施設へ入れられた彼は、10年後、入院患者とともに看護師を誘拐し、脱走を図ります。しかしそこには狂気に満ちた警官が待ち受けており、おぞましい逃走劇が繰り広げられていくのです。

劇中でレザーフェイス少年の誕生会シーンがありますが、狂った一家が用意したプレゼントは、なんとチェーンソー! 殺人鬼の知られざる過去が浮き彫りになっていきます。

“想像できそうな痛み”が中毒になる

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レザーフェイスの代名詞といえばチェーンソー。「ウィーーン」という音とともにレザーフェイスがチェーンソーを振りまわし、ためらうことなく人間を刻むシーンはいつ観ても痛々しいです。

一度のみならず、何度も刃を入れる様はまさに拷問。切り刻む以外に、四肢を切断する、背中に刃を刺し宙に持ち上げ貫通させる、というグロさ極まりない手法もあります。そのほか、精肉場の肉をミンチにする機械に人間を引きずり込む大仕掛け系も印象的でした。

しかし、こういった派手な演出より、むしろ地味な演出に底はかとない恐怖を感じます。たとえば、牛用の鉄製フックに人間を生きたまま吊るす、あるいは、フックを胸に引っ掛けて引きずる。このとき被害者はもちろん悲鳴の嵐です。

続いて、ひざまずいた人間の後頭部をハンマーで殴り続ける(これはレザーフェイスではなくジイ様と呼ばれる父親の行い)。地味ですが、この“想像できそうな痛み”こそが中毒のもととなり、鑑賞者は、恐怖という快楽に堕ちていく自分を止めることができなくなっていくのです。

また、シリーズを通して象徴となっているのが“肉”です。血と腐敗に満ちた屠殺工場、人肉を売り、人肉料理を食べるなどの狂気の行動。これらの描写を観ていると、鑑賞者はしだいに「人肉と牛肉、なにが違うの?」と自問するようになり、自分が狂いはじめていることに気づくのです。

レザーフェイスを生み出したトビー・フーパー監督はベジタリアンでした。彼にとって人肉を食べる殺人鬼は、動物を飼いならしシステマチックに屠殺することが善とされる世の中へのアンチテーゼだったのかもしれません。公開後、監督は「(このような映画は)2度と作れないし、作る気もない」という言葉を残しています。

そんなトビー・フーパー監督は昨夏、逝去。同作が最後のプロデュース作品となりました。

人間味溢れるレザーフェイスの魅力

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残酷非道なレザーフェイスですが、彼も人の子、人間臭いところがあるのです。同シリーズの恐怖の根源は、殺人鬼がゾンビでも悪霊でもなく、生身の人間であるというリアリズムにあります。

では、どんなところに人間らしさを感じるのでしょうか。『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』が1作目の前日譚であることに紐づけて、第1作でのシーンを中心に、レザーフェイスの性格を考察していきます。

まず、次々と現れる若者におろおろしたり悲鳴にビクついたりと、意外にも小心な面があるということ。自宅のドアを壊して長男にひどく叱られるシーンでは、まるで小さな子供のように取り乱します。

また、レザーフェイスにとって家族は絶対的な存在。一家は父親とレザーフェイスを含む兄弟の4人家族で、それぞれが屠殺の名人であったり人肉を売っていたりと、個性豊かに狂っています。そんな家族のために、レザーフェイスがお母さん役を演じて夕食の支度をするシーンがありますが、顔マスクの上に化粧をし、水玉のエプロンをつけて楽しそうに家族サービスをする姿はいじらしく、可愛いらしいとさえ思えてくるから不思議です。

そして2作目ではなんと、レザーフェイスは女性に恋をしてしまい、迷いながらも狂った家族から彼女を守るという驚きの行動に出ます。家族至上主義のレザーフェイスが見せる葛藤に、人間の心の機微を感じざるを得ません。

さらには、巨漢のわりに足が速く、物はちゃんと片付けるという几帳面な一面も。同シリーズが愛され続けているのには、こういった、どうも憎めないレザーフェイスの人柄が一役買っているのに違いありません。

彼はいかにして生まれたのか、テキサスの片田舎で一体何が起こったのか。殺人鬼・レザーフェイスの少年期を描いた新作は、そんな心理的欲求をついた待望の新作です。5月、ついにその真相が明らかになります!

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『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』
5月12日(土)より新宿シネマカリテ他にて全国順次公開
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(奈良田ナオコ@YOSCA)