3月30日にヴェトナム戦争末期の国家機密文書をめぐって報道の自由と信念を問う『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』、4月20日にはVRゲームに興じる近未来世界を描いたSFバトル・ファンタジー大作『レディ・プレイヤー1』と、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作2本がたて続けに日本で公開される。

若き日より、その名を世界中に轟かせ続けるスピルバーグ。そんな彼の新作が同時期に数本も発表されるのは、実は今回が初めてではない。彼とともに映画ファンとしての人生を歩んできた者としては、「これはまた傑作になるな」といった予想でニンマリさせられるものがあるのだ。

少しでも多くの映画を発表したいという貪欲な姿勢

今回の偉業に関しては、『レディ・プレイヤー1』を製作中に『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』の脚本を読んだスピルバーグが、「アメリカ報道機関の現状と相通じるものがあるこの事件を、今すぐ映画化するべきだ」と思い立ち、2017年5月30日から『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』のメインユニット撮影をはじめ、およそ50日で撮了し、同年12月22日に限定公開を成し遂げた(2018年1月12日に全米拡大公開)。

一方、CGを駆使した『レディ・プレイヤー1』はポスト・プロダクションなどにじっくり時間をかけて、2018年3月29日に全米公開。そして真逆のジャンルながら、両作品ともに各方面から絶賛されている。

もともと早撮りで知られるスピルバーグは、じっくり腰を据えて撮るというよりも、撮りたいものを少しでも多く撮り続けていきたいという、幼いころからの映画マニア気質を露にした、貪欲な姿勢を貫いてきている。そのため、監督作品がおよそ半年おきに発表されることもしょっちゅうだが、そういったときの作品ほど出来が良く、人気が高い。

そのはじまりは、1982年に発表されたホラー映画『ポルターガイスト』(米:6月4日/日:7月17日公開)と、SFファンタジー映画『E.T.』(米:6月11日/日:12月4日公開)から。正確には『ポルターガイスト』はトビー・フーパー監督作品だが、当時のハリウッドでは複数の映画を同時に監督することが禁止されていた。そのため、『ポルターガイスト』の脚本を記したスピルバーグは、敬愛する『悪魔のいけにえ』のフーパーに監督を依頼し、自らは『E.T.』を監督しつつ、双方のロケ地を同じにして『ポルターガイスト』の現場にもちょくちょく足を運ぶなどのこだわりを示していたのだ。

結果、『ポルターガイスト』公開時は「これはトビー・フーパーの映画か、スピルバーグの映画か?」といった議論がなされたものだが、個人的には双方の長所がミックスされた快作だと思う。そして『E.T.』に関しては、もう説明不要なまでにスピルバーグを語る上で欠かせない代表作として屹立している。

この後、1980年代のスピルバーグは自身の製作会社アンブリンを拠点に(90年代以降はドリームワークス社も加わる)、ほぼ毎年のように監督作品と、製作もしくは製作総指揮作品を連打していく。中でも1989年には『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(米:5月24日/日:7月8日)と『オールウェイズ』(米:12月22日/日:1990年4月6日公開)を発表しており、前者は言わずと知れた人気冒険シリーズの第3弾。後者はスピルバーグ自身が生涯のベストテンに入れている“A GUY NAMED JOE”(1943年/日本未公開)のリメイクで、オードリー・ヘプバーンが最後に出演した映画ということもあって、ファンの人気は高い。

齢70を迎えても変わらないエネルギッシュな活動

そして1993年。現代に恐竜が蘇る驚異のSF映画として映画技術の大革新をもたらした『ジュラシック・パーク』(米:6月11日/日:7月17日公開)と、第二次世界大戦中に数多くのユダヤ人の命を救ったドイツ人の魂の記録『シンドラーのリスト』(米:12月15日/日:1994年2月18日公開)。真逆のジャンルながら、ともに映画史上に残る傑作がほぼ同時進行で作られていたという奇蹟を、今回の『ペンタゴン・ぺーパーズ 最高機密文書』と『レディ・プレイヤー1』の同時期公開によって思い出してしまった次第である。

その後も1997年の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(米:5月23日/日:7月12日公開)と、黒人奴隷をめぐる歴史劇『アミスタッド』(米:12月17日/日:1998年2月28日)、1998年の戦争映画大作『プライベート・ライアン』(米:8月24日/日:9月26日公開)を、ほぼ半年に1本の割合で発表するなど、エネルギッシュな創作姿勢を一貫して保ち続けているスピルバーグ。

21世紀に入っても、その姿勢に何ら変わりはなく、2002年に『マイノリティ・リポート』(米:6月17日/日:12月7日公開)と『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(米:12月25日/日:2003年3月21日公開)。2005年に『宇宙戦争』(米&日:6月29日同時公開)と『ミュンヘン』(米:12月23日/日:2006年2月4日公開)。2011年に『タンタンの冒険/ユニコ-ン号の秘密』(米:12月21日/日:12月1日公開)と『戦火の馬』(米:12月25日/日:2012年3月2日公開)……と、振り返るに改めて驚愕するほかない。

2015年の『ブリッジ・オブ・スパイ』(米:10月16日/日:2016年1月8日公開)と2016年『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(米:7月1日/日:9月17日公開)も、およそ9か月という短いスパンで公開されている。やはり気分は、どことなく同時期公開なのであった。

ふと気がつくと齢70を迎え、今や名匠の地位に坐するスピルバーグだが、本人はそう言った威厳などどこ吹く風で、ただただ映画を撮りたくて撮りたくて仕方がない、ジャンルも問わない映画愛が、これまでも、そしてこれからも数多くの名作を生み出す起爆剤に成り得ているのだと確信している。

(文・増當竜也)