文=志水京子/Avanti Press

メジャーリーグでは、大谷翔平選手の投打の二刀流が大きな話題を集めているが、映画の世界でもひとつのフィールドにとどまらない二刀流クリエイターの作品が注目を集めている。5月11日公開の『ラブ×ドック』もそのひとつ、監督はテレビ界のヒットメーカー、鈴木おさむだ。多彩な活躍が作品にどう影響しているのか、鈴木と同じく多方面で才能を発揮するクリエイターとの共通点からヒットの秘密を探ってみた!

人気クリエイターはジャンルの枠を軽々と超える!

まず、鈴木おさむ。放送作家として活躍しながら、エッセイ「ブスの瞳に恋してる」シリーズが累計60万部を記録、『ハンサム★スーツ』(2008年)などヒット映画の脚本を手がけ、作詞、舞台演出、ラジオパーソナリティとしても人気。二刀流ではおさまらない活躍だ。

宮藤官九郎も同様。脚本家、映画監督、演出家、俳優、ミュージシャンとして異彩を放つ。脚本を担当する6月30日公開の映画『パンク侍、斬られて候』や、来年のNHK大河ドラマ「いだてん」も、時代劇、オリンピックが独特の視点で描かれることが期待される。

コメディアン、俳優、彫刻家と多彩な顔を持つ片桐仁も気になるところ。片桐は、又吉直樹原作の映画『凜』への出演がリリースされたばかりだが、ドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」(TBS系 SEASONⅠ2016年、 SEASONⅡ2018年1月)で使った“カレイphone”などの粘土作品を集めた「ギリ展」が全国巡回中であるように、単なる出演者で終わらないのだ。

俳優の大泉洋も、演劇ユニットTEAM NACSで脚本・演出に挑み、彼のいるところはいつも笑いにあふれている。彼がキャスティングされる理由は、まず、その絶妙なアドリブ力。脚本にはないが、その人物らしさを表現しなければならないシーンで力を発揮する。そしてもうひとつ期待されるのが、ムードメーカーとしての役割。演じるのはもちろんだが、制作を進めるうえでも必要な存在なのだ。

主演・綾野剛
『パンク侍、斬られて候』6月30日より丸の内TOEIほかにて全国公開
(C)エイベックス通信放送

笑いのセンスがヒットを生む!?

彼らに共通するのは笑いのセンスだ。人を楽しませることはもちろん、時代を読む力や、日常の憂さを晴らさせるような要素が散りばめられている。

また、彼らには異分野に踏み出していくことを厭わない行動力がある。それゆえ、つながりが想像できない幅広い人脈を持っている。そのネットワークが彼らのものづくりを支えるためか、作りだすものにもジャンルに縛られないオモシロさがあるのだ。

吉田羊(左)と野村周平(右)
『ラブ×ドック』5月11日(金) TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
(C)2018『ラブ×ドック』製作委員会

二刀流だから生まれた映画『ラブ×ドック』の魅力

“ラブドッグ”とは、遺伝子レベルで恋愛を診断するクリニック。過去に恋愛で痛い目にあってきたパティシエの飛鳥(吉田羊)は、クリニックで処方される“危険な恋を抑制する薬”で恋愛の軌道修正をしようとするが……。

『ラブ×ドック』では、鈴木監督の人脈をいかしたキャスティングが光る。吉田羊、玉木宏、吉田鋼太郎らが「鈴木さんなら!」と出演を快諾。吉田の、「エンタメ界の中枢を担う鈴木おさむ監督が料理する吉田羊が我ながら楽しみ」のコメントが代表するように、キャストは鈴木にどう料理されるのかを楽しんだようだ。

吉田羊(左)と玉木宏(右)
『ラブ×ドック』5月11日(金) TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
(C)2018『ラブ×ドック』製作委員会

また、スタッフも多彩な才能が集結した。スタッフクレジットも独特で、「撮影」「照明」「美術」といった表記はない。ミュージックディレクションは加藤ミリヤ、後半に登場する主題歌では、キュートな歌声も披露する。アートディレクションを飯田かずなが担当するほか、アートアクアリウムアーティストの木村英智、フェイククリームアートの渡辺おさむらが、カラフル&ポップなセンスをさく裂させている。

「亀ハメ覇大王」、「お酒とスポーツ」など挿入歌の歌詞も担当した鈴木は、テレビ番組で視聴者から寄せられた多くの恋愛体験を読むうちに、大人の女性が見たくなる恋愛映画を作りたくなったという。本作はまさに独身女性への応援歌のような仕上がり。甘くてちょっと苦い。でもまた食べたくなる。そんな、極上のケーキを食べた気分になれる映画なのだ。