ジョージ・クルーニーといえば、“一生独身宣言”をして数々の美女と浮き名を流してきたかと思えば、突然美人弁護士と結婚し、さらに双子の子どもに恵まれるなど、プライベートで大いに注目を集めているハリウッドスターの1人。

日本では、「『オーシャンズ』シリーズと、コーヒーのCMに出ているダンディなおじさん」というイメージの人もいるかもしれないが、俳優以外にも監督・制作・脚本を担当したり、政治に関しても積極的に意見を述べたりと、多彩な活動で常に注目を集めている。

そこで今回は、俳優としてではなく、監督としてのジョージ・クルーニーにフォーカスして、彼の監督作を3本紹介したい。

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信念を貫くジャーナリストを描いたノンフィクション『グッドナイト&グッドラック』

1本目は、「赤狩り」という共産主義者を排除する動きが猛威を振るっていた1950年代のアメリカを舞台にした『グッドナイト&グッドラック』(2005年)。「テレビ・ジャーナリズムの父」と称されるエドワード・R・マローと番組スタッフが、恐怖政治にも似た「赤狩り」に対し、メディアを通して戦った実話を基に制作された。ニュースキャスターでもあったクルーニーの父親の影響があったと言われており、彼自身も「父へのラブレター」であると語っている。そんなクルーニーの情熱が随所にうかがえる。

全編モノクロで紡がれる本作は、当時のマッカーシーの実際の映像を使っていたり、番組の最中でも当たり前のようにタバコを吸うマローの姿が登場したりと、1950年代にトリップしたような感覚をもたらしてくれる。また、音楽も映画に華を添えている。ダイアン・リーヴスが本作品のサントラでグラミー賞を受賞しただけあって、彼女の歌声と映画にマッチしたジャズは聴きどころ。

一見堅く見えるテーマを、細部にこだわることによって様々な観点から楽しめる作品に仕上げたクルーニーのセンスが光る。クルーニー自身は、マローの相棒役で出演しているが、かっこいいところは全て主役のデヴィッド・ストラザーンに譲ったようで潔い。

一歩間違えば、自身やスタッフ、テレビ局の人間にも危険が及ぶ状況で信念を貫くマローの姿に胸が熱くなると同時に、現代のメディアやジャーナリズムの在り方について考えるきっかけを与えてくれている本作は、アカデミー賞6部門にノミネートされ、ヴェネツィア国際映画祭、グラミー賞においても各部門で受賞。社会派映画なので、当時の社会情勢を頭に入れてから観るとさらに面白く感じるはず。

政界の裏側を淡々と描くサスペンス『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』

2011年公開の『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』は、この決戦の日を前にして繰り広げられる舞台裏を描いた政治サスペンスだ。アメリカ大統領選挙において最大の山場と言われる「スーパー・チューズデー(決戦の火曜日)」。大統領選挙のための予備選・党員集会が多くの州で行われ、候補者たちの今後の展開は、この日を無事乗り切れるかどうかにかかっている。

信じていた人物に裏切られたり、敵の汚い策略にはまってしまったり、尊敬する人物のトンデモ事実を知ってしまったりといった政治のドロドロした裏側が淡々と描かれる本作。初めは仕事に誇りと情熱を持っていたスティーブンが変化していき、ラストの彼の表情は見る人に強烈な印象を残す。『グッドナイト&グッドラック』で描いた、「信念を貫く主人公」とは反対に、スティーブンは生き残るために信念を失うのだ。

注目すべきは、「最も大統領になって欲しい俳優」とも称されるクルーニーが、ズバリ大統領役で出演している点。「誰もこの役をやりたがらなかったから自分が演じた」とのことだが、決して清廉潔白ではない大統領役を引き受けた真意はいかに……。

弁護士の妻を持ち、現大統領への批判もしっかりと述べる姿から、政界進出もまんざらではないように思えるクルーニーだが、この作品を観ると期待とは裏腹な、彼の政界への見解が垣間見えるように思えてしまう。

クルーニー監督最新作!『サバービコン 仮面を被った街』

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クルーニー監督の最新作『サバービコン 仮面を被った街』は、昨年、彼と人権弁護士の妻が、人種差別反対運動団体に多額の寄付を行ったことからも、人種問題への関心の高さがうかがえる。

舞台は1950年代のアメリカ。白人のみが暮らす閑静な住宅街、サバービコンに、アフリカ系アメリカ人一家が引っ越してきたことから不穏な空気が漂い始める。そんなある日、ロッジ家に強盗が押し入り、妻のローズが死に至るという事件が発生して……。

ロッジ夫妻にマット・デイモンとジュリアン・ムーアという豪華キャストを迎え、『ファーゴ』(1996年)、『ノーカントリー』(2007年)など多くの代表作を持つコーエン兄弟が脚本を担当。前述の2作品と同じく社会派映画ではあるが、ブラック・コメディ要素も織り込まれており、今までの社会派作品とは少し異なる仕上がりになっているようだ。『グッドナイト&グッドラック』や『スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜』同様、彼の作品を通してアメリカ社会を見つめてみるのはどうだろうか。

『サバービコン 仮面を被った街』は、5月4日(金・祝)より、からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で順次公開。

(佐々木希@YOSCA)