「何を抜かしとんのじゃ、ワリャァァァ」。耳をつんざく男たちの怒号が飛び交うバイオレンス映画『孤狼の血』(公開中)。強面の男ばかりが画面狭しと欲望を振りかざす“圧倒的な熱量”の中で、ひときわ存在感を放っているのが、真木よう子が演じた「クラブ梨子」のママ、里佳子です。

妖艶な着物やドレスを着こなす里佳子は、まさに“夜の蝶”のごとき艶やかさですが、ヤクザが集うクラブのママだけあって色気以上に“漢気”を漂わせています。そんな肝がすわった強い女性像に、演じる真木よう子が実にしっくりとハマるんです。それはなぜか? その理由を彼女の“ハマり役”からひも解いてみましょう。

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ギラつく昭和の男たちにそっと寄り添う…男心を掴むママの凛とした佇まい

映画の舞台となるのは、昭和63年の広島。そう聞くと、仁侠映画の最高峰『仁義なき戦い』シリーズをつい思い起こしてしまいますが、“警察小説×仁義なき戦い”と評される原作の映画化だけあって、劇中でも、暴力団対策法成立直前の騒然とした空気感を色濃く漂わせています。

広島の暴力団組織「加古村組」と、地場の老舗である「尾谷組」との苛烈な抗争を軸にしながら、壮絶な人間模様が描かれる本作。「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」と言い切る、暴力団との癒着などの黒い噂が絶えないベテラン刑事・大上(役所広司)を主人公に、警察VS暴力団といった巨大組織の思惑をも巻き込んで、怒涛の展開が繰り広げられていきます。

そんな男くさい仁侠の世界の中で、「クラブ梨子」のホステスたちは一服の清涼剤。マドンナでもあるママの里佳子は、強面の構成員相手に、妖艶な笑顔で魅了する一方で、大上ら刑事にも分け隔てなく包み込むような母性を漂わせる側面も。まさに酸いも甘いもかみ分けた、“オトナの女”といったママの雰囲気は、真木よう子本人とも相通じるところがありそう…!?

(C)2018「孤狼の血」製作委員会

媚びることなく“本気”で生きる。強い女の生き様が体現できる稀有な存在

女優としてキャリアを積み重ねてきた真木よう子ですが、2001年のスクリーンデビュー以降、転機となった作品といえば、オダギリジョー演じる主人公の【訳ありな昔の恋人】を演じた『ゆれる』(2006年)。主人公とその兄(香川照之)の確執を生むきっかけともいえるキーマン的な役柄で、オダギリジョーとの濃密なラブシーンも話題を集めました。

また、吉田修一の原作小説を映画化した主演作『さよなら渓谷』(2013年)で演じたのは、【夫を告発する内縁の妻】という難役でした。レイプ事件やDV被害など、重苦しいテーマを抱える作品ですが、【過去を背負って生きる女性】を見事に演じきったことで、女優としても国内外で非常に高い評価を得たのです。

このほかにも、ドラマ化に続いて映画化もされた「SP(エスピー)」シリーズや「MOZU」シリーズで、特殊任務に就く【男に媚びない強い女性】を体現してきた彼女。こうした男社会の中で生き抜いてきた役柄からも、どこか“クールビューティー”な印象を受けるのかもしれません。

ところが、です。近作となる17年放送のテレビドラマ「セシルのもくろみ」の宮地奈央役は、そうしたクールさとは真逆で、新境地ともいえる役柄でした。宮地は、生活感丸出しの主婦でありながら、一流のモデルになるべく奮闘するというキャラクターです。これは是枝裕和監督の映画『そして父になる』(2013年)で見せた【明るくたくましい母親像】とも共通しますが、この“肝っ玉母ちゃん”的な宮地役は、とても鮮烈な印象を残したのです。

こうして振り返ってみると、女性として妻として母親として、年齢を重ねることでより多彩な表情を見せ、そのキャリアを築いてきたことが分かりますね。

(C)2018「孤狼の血」製作委員会

真木よう子自身、「3人の兄弟に囲まれた環境で育ったせいか“男勝り”な性格」と明言していますが、女性らしいルックスとは相反した内面との“ギャップ”こそ、最大の魅力なのかもしれません。

男社会の中でも、しなやかに、強くたくましく生き抜く“オトナの女”――『孤狼の血』で見せるそんな里佳子というキャラクターには、数々のキャリアを積み重ねてきた今の真木よう子だからこその、説得力があるのではないでしょうか。

(文/晴スミス・サンクレイオ翼)