「絶対に狙われたくない殺人鬼」といえば思い浮かぶのは、『13日の金曜日』(1980年)のジェイソン、『エルム街の悪夢』(1984年)のフレディ、そして「レザーフェイス」ではないだろうか。レザーフェイスとは、のちのホラー映画に多大な影響を与えた故トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(1974年)に登場する大男だ。テキサスの一軒家で家族とともに暮らしており、近隣を訪れる老若男女を襲ってはチェーンソー片手に殺戮の限りを尽くす。皮を剥いで仮面を作ったり、骨を収集して飾ったりするというその異常な行動には戦慄するしかない。

5月12日に全国公開される『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』は、怪物・レザーフェイスがいかに誕生したかを描く、『悪魔のいけにえ』の前日譚であり、トビー・フーパー監督が手がけた最後のプロデュース作品でもある。ホラー映画ファンにとってはまさに「待ってました!」と喝采を送りたくなる映画だ。

今回は、『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』をより楽しんでいただくため、同シリーズから、本作を語る上で欠かせない『悪魔のいけにえ』、『悪魔のいけにえ2』(1986年)、『悪魔のいけにえ3 レザーフェイスの逆襲』(1990年)の3作をご紹介したい。

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伝説はここから始まった『悪魔のいけにえ』

レザーフェイスが世に初めて登場した『悪魔のいけにえ』は、5人の男女が、墓荒らしの横行するテキサスを訪れる道中で、自傷癖のある奇妙なヒッチハイカー(レザーフェイスの兄)を乗せたことをきっかけに、惨劇に巻き込まれていくというストーリーだ。

レザーフェイスがチェーンソーで人間を切り刻むシーンや、生存者が捕らえられて殺人一家と食卓を囲まなくてはならなくなるシーンは衝撃的だ。(主人公やヒロインが「狂気に満ちた一家と食卓を囲む」というシチュエーションは、その後も数多のホラー映画やホラーゲームで使われることになる名シーンだ)。

チェーンソーを担ぎ、物凄い速さで追いかけてくるレザーフェイスは、まさに「悪魔」と呼んで差し支えないだろう。映画としては短めだが、当時から今に至るまで他のホラー作品に絶大な影響を与えており、数々のフォロワーを生み出している。映画だけでなく、大人気ホラーゲーム「バイオハザード7 レジデント イービル」にも『悪魔のいけにえ』を彷彿とさせるシーンが取り入れられているほどだ。

前日譚である『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』を観る前に、是非もう一度チェックしておいていただきたい。

レザーフェイスが女性に恋!?

前作から13年後のテキサスを舞台にした『悪魔のいけにえ2』。同作では、レザーフェイスに殺された男の叔父・レフティが、甥の敵討ちのため、殺人一家について調査をする姿が描かれる。しかし正統派続編であるにも関わらず、少し作品の毛色が違うのが特徴だ。

本作でもレザーフェイスの凶行は変わらない。彼はドライブ中の2人の高校生を殺害するのだが、高校生たちはレザーフェイスに追われている間、生放送のラジオ番組に電話をかけていたため、レザーフェイスの凶行は電波に乗って全国に流れるのだ。これを聞いていたレフティは、千載一遇のチャンスとばかりに番組を担当していた女性に連絡を取り、レザーフェイスの居場所を突き止めようとする。

ここまでのあらすじを読んでも、前作とそこまで毛色は変わらないと思うかもしれないが、本作の見どころは「レザーフェイスが女性に恋をしてしまう」という要素だろう。

息をするように人を殺す残虐な殺人鬼と思われたレザーフェイスが、彼女を殺すのをやめ、家族にも嘘をつく姿は、思わず彼の人間臭さを感じさせる。レザーフェイスといえば境遇の似ているジェイソンと比較されがちだが(どちらも醜い顔を隠すために仮面を被っており、棲家に近づく者を息の根が止まるまで執拗に追い回す)、この人間臭さこそジェイソンと一線を画している点だ。

もしレザーフェイスとジェイソンが膝を突き合わせて朝まで語り合ったなら、レザーフェイスは「女の子を好きになっちゃうなんてダメだね、ボク」なんて思春期真っ盛りの男子高校生の如くもじもじ訴えるのかもしれない。『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』を観る際に、この時の彼を思い出すはずだ。

恐怖よ再び、レザーフェイスの復活!

シリーズ3作目となる『悪魔のいけにえ3 レザーフェイスの逆襲 』。監督をジェフ・バーに変えて、レザーフェイスが元気な(?)姿で4年ぶりにスクリーンに帰ってきた本作。

レザーフェイス含む殺人一家・ソーヤー家の顔ぶれには、新たにレザーフェイスの母や娘なども登場。被害者を食肉用のフックに吊るし、殺すシーンでは「殺人一家ここにあり」という恐怖をまざまざと見せつけてくれる。「狂気に満ちた一家と対峙する」というシリーズの面白さはそのままに、ドンデン返しがあるなどエンターテインメント性のより増した一作となっているのだ。

殺人を犯し、墓を荒らし、人の皮でできたマスクを被る……。そんな狂った殺人鬼・レザーフェイスは実在するシリアルキラー、エド・ゲインを彷彿とさせる。エド・ゲインも、レザーフェイス同様人を殺し、人の皮で衣服を作り、人肉を食らっていた。猟奇殺人鬼がいつまでも世間で語り草となるように、それをモデルにした殺人鬼も恐ろしいまでのインパクトと恐怖を観る者に与える。

『LEATHER FACE レザーフェイス―悪魔のいけにえ』では、少年・ジェドが覚醒し、殺人鬼・レザーフェイスへと変貌を遂げる瞬間が描かれる。ソーヤー家の異常な環境の中で育ったジェドは、5歳の誕生日にチェーンソーをプレゼントされ、家族が運営する農場で少女の変死体が発見されたことを機に更正施設に収監される。そして10年後、ジェドは他の少年達に強いられて看護師を誘拐し、精神病院から脱走。逃走劇を繰り広げるが、警察官に追われ、やがて悲劇のどん底へと追い詰められていくのだ。

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監督を務めたのは、スプラッター・サスペンス映画『屋敷女』(2007年)で世界的な注目を集め、その後『リヴィッド』(2011年)や『恐怖ノ白魔人』(2015年)を手がけたジュリアン・モーリーとアレクサンドル・バスティロのコンビ。また、『SOMEWHERE』(2010年)のスティーヴン・ドーフや、『死霊館』(2013年)のリリ・テイラーが重要な役を担っている。

ジェドを取り囲むのは、更生施設で出会った錯乱状態の患者たち、執拗なまでに彼を追う狂気に満ちた警官、そして殺人を正当化する家族……。ホラー映画史に名を残す殺人鬼誕生の裏に一体何があったのか、スクリーンから目が離せない。

『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』
5月12日(土)より新宿シネマカリテ他にて全国順次公開
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(小泉ちはる@YOSCA)