誰でも一つや二つ、大好きなおふくろの味があるのではないでしょうか。今回は、GW直後ゆえうっかり忘れがちな母の日(今年は5月13日)にちなんで、映画に登場する世界のおふくろの味をご紹介。それぞれに思い出の詰まった料理は、あなたのおふくろの味も思い起こさせるかも。今年の母の日はいつもと違った楽しみ方もいいかもしれませんよ。

<フランス>

『レミーのおいしいレストラン』:ラタトゥイユ

映画『レミーのおいしいレストラン』より - Buena Vista / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ひょんなことからパリの一流レストランに紛れ込んでしまった料理好きのネズミのレミーが、料理が全然ダメな見習いシェフのリングイニとコンビを組み、人気料理を次々と生み出していく、ディズニー/ピクサーの人気作品『レミーのおいしいレストラン』。天敵となる料理批評家のイーゴをも虜にしたのが、本作の代名詞とも言える定番メニューのラタトゥイユ。南フランスの家庭料理の代表格であり、日本でも夏野菜が出回る時期の作り置きメニューとして定着しつつある、野菜のトマト煮込みです。

野菜がたっぷりとれちゃう超万能メニュー、ラタトゥイユ

 温かいまま食べても、キンキンに冷やして食べても、さらにはそのまま食べても、パンにはさんだりパスタなどを和えて食べてもおいしいというスーパーメニュー。どんな野菜を入れるのが定番か、トマトソースの隠し味は何か、どんな風にして食べるのか……などなど、定番かつ万能メニューだけに、「家庭の味」もバラエティーに富んでいることでしょう。

『大統領の料理人』:サントノーレ

こちらがキャラメルにクリームたっぷりのサントノーレ!

 フランスの片田舎で小さなレストランを経営するオルタンスは、ある日突然、大統領専任のシェフに任命される。これまで女性の料理人がいなかった、超男社会の官邸の厨房でさまざまな嫌がらせを受けつつも、大統領と心を通わせ、食べる人の幸せを追求した絶品料理で期待に応えていくが……というのが、実話を基にした映画『大統領の料理人』。ミッテラン元フランス大統領の就任時のエピソードであり、高齢なこともあり家庭料理を望んだということから、本作に出てくるフランス料理はちょっと頑張れば家で再現できそう! というおもてなし料理的なフランス料理ばかり。中でもこのサントノーレは、主人公オルタンスが「おばあちゃん直伝!」と劇中でもその特徴を語る自信作。カラメルを塗った小さなシューをパイ生地のふちに置いていき、中央にクリームをたっぷり。フランスでは特別な日に食べられることが多い定番ケーキだけに、思い出と共にその味がよみがえるスペシャルなスイーツといえそう。

<アメリカ>

『ソウル・フード』:フライドチキン、コーンブレッド、マカロニ・アンド・チーズなど

映画『ソウル・フード』より - 20th Century Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

 アフリカ系アメリカ人の伝統料理の総称、ソウルフード。フライドチキンになまずのフライ、豚足の煮込みに肉団子、マッシュポテト、ブラックアイドピーズ、コーンブレッド、そしてマカロニ・アンド・チーズなどなど、アメリカが舞台(特に南部)の映画を観ていれば、よく出てくる食べ物ばかり。種類も豊富であり、各家庭や地域、ルーツによってなど、定番メニューは変わります。

フライドチキン&マカロニ・アンド・チーズは中でも大定番!

 その名も『ソウル・フード』という本作では、主人公の祖母にあたるビッグママが作るソウルフードを食べるために、毎週日曜の夕飯に家族が一堂に会すという設定。ビッグママがこん睡状態になったことから、3人の姉妹、そしてそれぞれの家族が次々とトラブルに見舞われバラバラになってしまうのですが、その家族の絆の象徴がまさに“ソウルフード”なのです。嫁ぎ、子供が生まれ増えていく家族、その全員分を母と姉妹で準備する様はまさしくおふくろの味が継承されていく瞬間と言えるでしょう。

『ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた』:パイ

映画『ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた』より - Fox Searchlight / Photofest / ゲッティ イメージズ

 アメリカ料理の代表格といえば、ハンバーガー、ピザに並んで出てくるのがパイではないでしょうか。映画『ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた』は、パイ専門のダイナーを舞台に、ウェイトレスかつパイ作りの名人でもある主人公の成長を描いたラブコメディー。

日本ではアップルパイがダントツ!?

 アップルパイ、パンプキンパイ、ピーチパイにチェリーパイ、そして劇中にバリエーションを変えながら3度も登場するチョコレートパイ! といった定番の甘い系から、ミートパイやキッシュといった総菜系まで、おいしそうなパイが次々に登場。27種類のパイがメニューに並ぶ専門ダイナーが存在することからも、アメリカ人のパイ好きが想像以上だとうかがえます。主人公のジェナもその名人級のパイ作りは母親譲りであり、自身のパイ専門店を持つのが夢。生まれてくる娘と一緒にパイを作るシーンも印象的です。

<イギリス>

『パディントン』『パディントン2』:マーマレードサンド

映画『パディントン2』よりマーマレード作りをするパディントンがたまらなくキュート! - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 なかなか家庭料理が連想されにくいイメージのイギリス料理ですが、有名なイングリッシュブレックファストやティータイムの定番といえば、ジャム! その中でもイギリスらしいといえば、このマーマレードではないでしょうか。そして、マーマレードといえば、やっぱりパディントン!! 大好きなルーシーおばさん特製のマーマレードジャムをたっぷり挟んだサンドイッチは、トレードマークの赤い帽子の中に忍ばせた非常食になったり、最新作『パディントン2』では新しい友情の架け橋になったりと、みんなを夢中にしてしまいます。

皮を刻み、コトコトと煮込んだら出来上がり!

 イギリスでは、柑橘の種類の違いのほか、一種か多種か、甘いタイプか苦みをきかせたものかなどなど豊富なマーマレードジャムがジャムコーナーに並んでいるだけでなく、日本の梅の時期にスーパーに梅の袋詰めが並ぶように、マーマレード用のオレンジが並んだりするのだとか。作るのはひと手間かかりますが、保存食もまたおふくろの味の定番。ふとした時に作ってみたくなるものです。

『ハリー・ポッター』シリーズ:シェパーズ・パイ

映画『ハリー・ポッターと秘密の部屋』より - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ひき肉とみじん切りにした野菜を炒めてトマトソースなどで味付けした、いわゆるミートソース的なものを皿に敷き詰め、その上にマッシュポテトを重ねオーブンで焼いたシェパーズ・パイもしくはコテージ・パイ。使うひき肉の種類でそれぞれの呼び名で呼ばれていますが、イギリス家庭料理の定番人気メニューです。そう、ハリー・ポッターも大好物のあの料理といえば、思い浮かぶ人も多いかもしれません。

ハリーの大好物!間違いないおいしさです

 原作シリーズ第2作「ハリー・ポッターと秘密の部屋」では、校則を破り罰を言い渡されたハリーとロンが、夕飯に好物のシェパーズ・パイを見ても食欲がわかなかった……と具体的に登場。映画ではその食事シーンはありませんが、ラストの食事シーンでそれらしきものが並んでいるようにも見え、まさに子供が喜ぶメニューとして、パーティーメニューとしても定番のようです。それゆえ、昨今は日本でも給食に登場しているところも多いのだとか。もちろんUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)でも人気メニューです。

<日本>

『かもめ食堂』:おにぎり

お弁当に夜食、思い出いっぱいのおにぎりはやっぱりソウルフード!

 日本食といえば、やっぱり白米。映画『かもめ食堂』でも、主人公サチエと知り合ったミドリが、初めてサチエの自宅でふるまわれた白米を食べて涙するシーンがあります。ですが、おふくろの味といって「白米!」という人はあまりいないでしょう。そう、そこにひと手間加わったおにぎりこそ、具や形、そしてさまざまな思い出と共に、おふくろの味として心に刻まれているのではないでしょうか。かもめ食堂では、サチエいわく「おにぎりは日本のソウルフードだから」ということで、彼女が考える定番おにぎりである、うめ・鮭・おかかの3種セットが看板メニューとして提供されています。早くに母を亡くしたサチエにとっては、父との思い出であるおにぎり。「おにぎりは人に作ってもらう方がうまいんだ」という父の言葉は、おにぎり同様シンプルながら妙な説得力と共に胸に響きます。

『はなちゃんのみそ汁』:みそ汁

おにぎりとの名コンビでもあるおみそ汁……ほっとします

 おにぎりと並ぶ、おふくろの味大定番といえば、やっぱりみそ汁ではないでしょうか。日本全国、みその種類も違えば、具はなんでもありのみそ汁。家庭の定番はもちろん、地域の定番なども知ってみると、その奥深さに驚かされることばかりです。映画『はなちゃんのみそ汁』では、ガンのため33歳という若さで亡くなった主人公が、闘病生活の中、自分が死んでも娘が困らないようにと、4歳になった娘にみそ汁作りを教えていく姿が描かれています。劇中に登場するのは豆腐とわかめといった王道の具材。シンプルですが、かつおぶしを削るところからはじまる丁寧な工程で作られたみそ汁には驚くほどの深みがあり、そしてたっぷりと込められた愛情の隠し味で世界に一つしかないおふくろの味が完成するのです。

<インド・パキスタン>

『スタンリーのお弁当箱』:カレー(インド)

インドのお弁当といえばこのスチール製ランチボックス!

 思い出の食事といえば、お弁当を思い起こす人も多いのではないでしょうか。毎日のお弁当はもちろん、遠足や運動会、花見などのイベントでのお弁当で、定番や入っていてうれしかったおかずなど、思い出があるはず。その名も『スタンリーのお弁当箱』という本作は、インドの小学校を舞台にした、家庭の事情でお弁当を持ってこられない少年スタンリーと、彼を助ける友達の友情物語。カレーやビリヤニ、サモサにチャパティ、ポテトのロティといった母親の手作り料理がお弁当箱に詰められ登場します。中でも、キーアイテムとなるスチール製の4段式弁当箱に詰められた豪華弁当は、これぞインド料理! といわんばかりのフルコースで胃袋を刺激してくれます。

『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』:マトン・ビリヤニ(パキスタン)

映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』より、まさにビリヤニを受け取った瞬間! - Lionsgate / Photofest / ゲッティ イメージズ

 パキスタン料理の定番ビリヤニ。米とスパイス、肉や魚、野菜などで作る、ざっくりいってしまうと炊き込みご飯のようなものですが、このビリヤニがキーアイテムとして登場するのが、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』。パキスタン出身のアメリカ人コメディアン、クメイル・ナンジアニの実話を本人主演で映画化。親から押し付けられる伝統やしきたりに反発し、コメディアンになる夢を追い、白人女性の恋人エミリーとの愛を貫いたクメイルが、旅立ちの日に絶縁状態となった母親から渡されるのが、彼の好物でもあるマトン・ビリヤニです。

これがビリヤニの定番スタイル!

 現在は両親とも和解しており、先月行われた第90回アカデミー賞の授賞式でもプレゼンターとして登場するなど、夢をかなえアメリカで成功を収めているクメイル。言葉では突き放しても、強い絆を示すことができるのもまた、母の料理の強みなのかもしれません。

シネマトゥデイ編集部・浅野麗