文=木俣冬/Avanti Press

「シグナル 長期未解決事件捜査班」が攻めている。テッパンの“事件もの”、しかも“未解決事件”というそそる要素だけでなく、“時間SFもの”が入ることで、鮮度が上がった。

もし正義感の強い警官が過去を変えられるとしたら?

主人公・三枝(坂口健太郎)は、小学生のとき、同じ学校の少女が犯人に連れさられたところを目撃したにもかかわらず、少女を救うことができなかったことを悔やんでいた。

成人し警官となった三枝は、あるとき、過去と現在を結ぶ謎の無線機を手に入れ、長期間、未解決となっている連続殺人事件を解決する。“過去は変えられない”と思っていた彼に、“過去は変えられるかもしれない”という可能性が拓かれていく。

「シグナル 長期未解決事件捜査班」火曜21時放送 (C)カンテレ

坂口健太郎が演ずる警官が取った行動とは…!?

「シグナル」第1話は、2010年、巡査だった三枝が、1995年、連続女子誘拐殺人事件を担当している大山巡査部長(北村一輝)と無線でつながる。大山との交信で、三枝が未解決殺人事件の容疑者の死体を見つけたことによって、事件は解決。この事件こそ、三枝のトラウマになっていた少女殺人事件だった。

「シグナル 長期未解決事件捜査班」火曜21時放送 (C)カンテレ

そして、第2話。2018年、三枝はアメリカでプロファイリングの研修を経て警部補となり、日本に戻ってきて、2010年の時効撤廃によってできた〈長期未解決事件捜査班の専門部署〉に配属される。三枝が配属後はじめて担当した事件は、1997年に起きた女性連続殺人事件。ここでまた三枝は無線を通じて、97年の大山刑事(北村一輝)と会話する。

大山はちょうどその女性連続殺人事件を担当していて、三枝との会話から、事件を未然に防ぐ。過去が変わったため、2018年も変わり、記録写真から遺体が消え、メモの文字が“死亡”から“未遂”に変わる。でも、三枝以外は、変わったことに気づいていない。

「シグナル 長期未解決事件捜査班」火曜21時放送 (C)カンテレ

3話も引き続き、1997年の女性連続殺人事件。三枝たちが動き出したことによって、20年ぶりに犯人が犯行を再開。上から捜査にストップがかかる。未解決事件を暴くことは、それまでの警察の無能ぶりを明るみにすることにも繋がる。警察の上層部に何か含みがありそうで、97年以降、行方不明になってしまった大山の行方も気になる。

「シグナル 長期未解決事件捜査班」火曜21時放送 (C)カンテレ

“過去を変えたい”、“未来を変えたい”という切実な祈りを通奏低音にしながら、“様々な事件と時間が絡まり合った、その先にあるものは何か?”という謎解きのスリルが楽しめる、凝りに凝ったエンタテインメントになっている。

カンテレがアップデートした“新しいドラマ”のカタチ

いま、テレビドラマに求められるものは、基本は勧善懲悪、ストーリーはシンプルに一直線にラストまで進むもの、何かひねりを加えるとしたら、途中で状況に逆転が起きることは好まれる。こういう時代に、こんなにも話があっちこっちに飛ぶ上、過去が変わると未来も変わっていくような、見ているうちにじわじわと違う世界になっているという複雑きわまりない構成のドラマを、ゴールデンタイムに放つ制作会社としてのカンテレ(関西テレビ放送)が凄い。

フジテレビ系列で放送されているが、作っているのはフジテレビではなく、カンテレ。この制作会社は、火曜9時の時間帯に「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」(2015年)、「嘘の戦争」(2017年)、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(2017年)、「FINAL CUT」(2018年)と立て続けに良質のサスペンスを送り出し、カンテレのドラマは面白いという信頼を勝ち取っている。

「シグナル 長期未解決事件捜査班」火曜21時放送 (C)カンテレ

構成に凝るということは、それだけしっかり脚本を練らないといけない。よくぞ、こんなに時間をかけて練られたドラマを……と思ったら、2016年に韓国で放送されたドラマのリメイクだそう。さらに、本編の各話をつなぐチェインストーリー(登場人物の過去や隠された秘密を描くもの)を、GYAO! とカンテレが共同制作し、無料配信している。これは、井上真央主演ドラマ「明日の約束」(2017年)や「FINAL CUT」でも行われた企画の第3弾になる。

現在を生きる三枝と、過去に存在する大山は、いわば、時空を超えてつながるバディ(相棒)。事件ものにバディは必須なので、「シグナル」は、予定調和の“事件もの”や“バディもの”に、時間SFを加え、アップデートした新感覚のドラマに挑戦しているともいえるだろう。これはまさに“未来を変えようとする”試みである。

これからのエンタテイメントに視聴者が求めるもの

一時期、SFは数字の取りにくいジャンルとして敬遠されていた。ところが、アニメ映画『君の名は。』がメガヒットして以来、平行世界を描く“時間SF”などは特に好ましいジャンルへと変わって来ている。もっと遡ると『バック・トゥ・ザ・フューチャー』というタイムスリップ映画のヒット作があって、“今”を変えるために“過去”を変えたいという願望は、エンタテインメントの普遍的なモチーフとなり得るのだと示してくれる。

誰しも、“もしあのとき、こうできていたら……”という悔いと願いを抱きながら、生きている。「シグナル」は、“事件”を“相棒”と共に解決し、“過去をやり直す”願望を叶えてくれるドラマだ。世の中、みんな“すっきり”したいんだと思う。ドラマのなかで複雑に絡み合う事件と時間の関係性や、無線機の謎が最終的に解けたら、そりゃあもうすっきりすること間違いない。三枝と大山が出会うときが来るのか楽しみ。