足元がぐずつき、スッキリしない天気が続く雨の時期は、憂鬱な印象が付きまといがち。しかし、映画において“雨”は、ただの演出にとどまらず、物語の重要な役割を果たし、これまで数々の映画で名シーンを生み出してきた。

眉月じゅんの人気コミックを実写映画化した『恋は雨上がりのように』(5月25日公開)でも、きっと雨が重要な役割を果たしているはず。今回は、そんな雨が印象的な映画をご紹介!

涙を雨で表現する王道『ティファニーで朝食を』(1961年)

大都会ニューヨークに憧れて田舎から上京し、自身の美貌を武器に毎晩パーティに繰り出して“玉の輿”を狙う自由奔放なホリーと、裕福な愛人をパトロンに付けて作家活動を行うポール。打算的な生き方をしている2人が同じアパートで生活するうちに惹かれ合い、紆余曲折を経て真実の愛を知るという、恋愛映画の名作中の名作が『ティファニーで朝食を』(1961年)だ。

主人公のホリーを演じるオードリー・ヘプバーンが、ティファニーのショーウィンドウを眺めながらパンをかじり、コーヒーを飲むシーンがあまりにも有名な本作。この作品で雨が降るのはラストシーンのたった一度だけ。しかし、それが非常に印象的で重要な役割を果たしている。

様々な壁を乗り越え2人がたどり着くラストシーンでは、プライドが高く人前では涙を見せないホリーと、ホリーとはわかり合えないと絶望したポールの涙を代弁した激しい雨が降り注ぐ。ようやく真実の愛を見つけた2人の心を潤していくかのように演出され、たった一つの雨のシーンでいくつもの感情を表現した、まさに映画史に残る名シーンとなった。

「雨のキス」の金字塔『きみに読む物語』(2004年)

第二次大戦前の1940年代と現代という、2つの時間軸の中でストーリーが進行していく『きみに読む物語』(2004年)は、現代のとある田舎町で、おじいさんが認知症を患ったおばあさんに、ある本を読み聞かせるところから物語が始まる。

1940年、別荘に訪れたお金持ちの娘・アリーに一目惚れした材木屋の少年ノア。ノアはアリーに少々強引なアプローチをかけ、2人は交際をスタートさせるが、アリーの母親の反対もあり、2人は離ればなれになってしまう。しかし、ノアは決して諦めず、365通の手紙を送りつづけるのだった。この悲恋の物語を読み進めていくうち、認知症のおばあさんが「この話を以前聞いたことがある」と、徐々に過去を思い出していくというストーリー。

『きみに読む物語』においての印象的な雨は、映画のポスターにも使用されているキスシーン。引き裂かれた2人が再会し、お互いの気持ちを確かめ合うシーンなのだが、激しい雨の演出によって、2人の情熱をより一層際立たせることに成功している。このシーンは2005年MTVムービー・アワードの「ベスト・キス賞」にも選ばれ、授賞式では主演のライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが壇上でキスシーンを再現するなど、本作の代名詞とも言える名シーンに仕上がっている。

雨は3人目のキャラクター『言の葉の庭』(2013年)

『君の名は。』(2016年)で国民的大ヒットを飛ばした新海誠監督の作品は、アニメとは思えない緻密で美しい景色の描写が大きく取り上げられることが多いが、特徴はそれだけではない。キャラクターの仕草や表情はもちろんのこと、雨や日差しなどの天候の表現からも人物描写を汲み取ることができ、それがストーリーに大きな説得力を持たせている。

『言の葉の庭』(2013年)は、雨の日の1時間目は庭園でサボることを日課にしている靴職人志望の高校生・孝雄と、その庭園で昼間からビールを飲んでいる雪野という女性が出会うところから始まる。次第に2人は惹かれ合っていくのだが、雪野の過去に起きたある秘密があきらかになっていく、というストーリー。

作品の舞台が梅雨の時期ということもあって、シーンの8割近くが雨のシーンで構成。夕立、天気雨、豪雨という雨の強弱だけでなく、景色の色味や陰影などでもキャラクターの感情を表現し、アニメーションでしか描けない表現方法で物語を展開していく。実写では見過ごしてしまうような、水たまりや雨に濡れた物などにインパクトを与える手法は、他の作品に例を見ない新海監督ならではの演出と言えるだろう。新海監督が「雨は3人目のキャラクターといってもいい」とコメントしているほど、雨が重要な役割を担っている作品だ。

新たなる雨の名シーンに期待!『恋は雨上がりのように』

『恋は雨上がりのように』5月25日公開(C)2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館

5月25日から公開される『恋は雨上がりのように』は、作家志望だった45歳バツイチ子持ちの冴えないファミレス店長・近藤と、アキレス腱の怪我で陸上の夢を絶たれてしまった女子高生・あきら、この28歳の年の差カップルの恋を描くラブ・ストーリー。

本作は同名漫画の実写映画化で、ファミレスの冴えない店長を大泉洋、ファミレスでバイトをする女子高生のあきらを小松菜奈が演じる。

物語は当初“年の差あるある”的なラブコメの様相を見せるのだが、作品が進むに連れ、近藤は青春真っ只中のあきらを見て、再び作家になるという夢へと駆り立てられる。そしてあきらもまた、近藤の背中に触発され、陸上競技への復帰を目指していくという、ただの恋愛関係にとどまらない、人間の成長を描いたストーリーになっている。

先日公開された予告編では、土砂降りの中に立ち尽くす女子高生のあきらに、そっと店長が傘を差しだす場面から始まる。また、ポツポツと降る小雨から激しい豪雨、背景の小さな窓の向こうにも雨が降っているなど、様々な雨が効果的に作品の中で使われていることが伺える。タイトルに「雨」が入っていることもあり、新たなる雨の名シーンが生まれることに期待したい。

文=ss-innovation.LCC