YouTuberやVR作家などデジタル技術の進化により、昔では考えられなかった職業が次々と誕生しています。しかし、その逆もしかりで、歴史を振り返ると、今聞けば耳を疑ってしまうような職業が多数存在しました。特に“江戸時代”は、珍職業の宝庫だったんです!

お偉いさんの“オナラ”を肩代わり!

現代とは異なり身分制度が敷かれていた江戸時代。良家の人物ともなるとその行動に品格が必要とされます。「屁負比丘尼(へおいびくに)」とは、ずばり屁を負う比丘尼のこと。比丘尼は“出家した女性僧”をさし、良家の妻女や娘に付き添い、彼女たちがオナラをしてしまった時に、「今のは自分です!」と名乗り出て身代わりになった職業だったそうです。

この屁負比丘尼は別名、科負(とがおい)比丘尼とも呼ばれ、オナラ以外のはしたない行いや過失も代わりに背負いました。いくら身分社会とはいえ、「どんだけ甘やかされているんだよ……!」と思ってしまうのは筆者だけではないはず。……というより、オナラってそんなに罪深いことなのでしょうか。

ちなみに、江戸時代はやけに生理現象に紐付いた職業が多く、他人の尿を回収し肥料として農家に売りつける「小便仲間」や、金をもらい愛人になった後、時期を見計らっておねしょをして、相手から縁を切らせるという一種の詐欺行為を働く女性「小便組」なども存在したそうです。

離婚を望む妻の最後の手段!

江戸時代は、離婚率が現代の倍以上だったとも言われています。しかし不平等なことに、夫が暴力を振るおうが、女と不貞をはたらこうが、夫からの離縁状がないと離婚は成立しませんでした。そんな立場に置かれた女性の救済となったのが「縁切寺」です。『駆込み女と駆出し男』(2015年)の題材にもなったので、映画ファンならご存知かもしれません。

縁切寺に女性が駆け込むと、寺は夫を呼び出して事情聴取し、示談での調停をはかります。それでも離婚に応じない場合は、女性が足かけ3年、尼として寺の仕事をこなし、禁欲生活に励めば、公的に離婚が認められるというものでした。ちなみに、千葉県の本光寺や富山県の総持寺など、縁切り祈願を行ってくれるお寺は、現代でも全国に存在しています。

(C)2018「のみとり侍」製作委員会

昼は猫を喜ばせ、夜は女性の相手…?

最後に紹介するのは小松重男の小説を映画化した『のみとり侍』(5月18日公開)の題材にもなっている「猫の蚤とり」です。

犬よりも猫が人気だった江戸時代に存在したこの職業。狼の毛を使い、客の猫について蚤を取り払うという仕事ですが、喜ばせていたのは猫だけではありません。女性の夜の相手もしていた裏稼業だったんです。

映画は、ひょんなことから江戸の蚤とり長屋へと左遷されてしまった生真面目な藩士・小林寛之進(阿部寛)が、蚤取りとして女性を喜ばせるため、床上手を目指して奮闘する姿をユーモラスに描いています。

一見華やかにも見えるこの職業ですが、一説によると猫の蚤取りが素人でもできる簡単な作業だったため次第に衰退し、貧乏に困り果てた末、夜の相手もつとめるようになっていったとも言われています。

浮世絵などによると、これら以外にも、客の耳そうじを行う「耳の垢取り」から、老いた人のハリボテを背負いながらカンパを募る「親孝行」まで、江戸時代は珍職業のオンパレードだったようです。生きるためにどんな仕事でもやるという心意気は、現代に生きる我々も見習いたいものですね。

(文/ケヴィン太郎・サンクレイオ翼)