取材・文=高村尚/Avanti Press

「自分が楽しんでやれるかどうか、かな?」。

こう答えるのは、ハリウッドスターで元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーを父に、ジョン・F・ケネディの姪でジャーナリストのマリア・シュライヴァーを母に持つパトリック・シュワルツェネッガー。

初主演作『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』のプロモーションで来日した際のインタビューで、「キャリアを積み上げるときに大事なことは?」と問われてのこと。

『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』は日本映画『タイヨウのうた』のハリウッド版
5月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(C) 2017 MIDNIGHT SUN LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

セレブな両親には、結構厳しく育てられたようだ。16歳の時、友人らとチャリティファッションブランドproject360を設立。17歳の夏には、ロサンゼルスの高級ショッピング・モール、ザ・グローブでインターンとして武者修行。20歳で、このモール内に人気ピザ屋ブレイズ・ピザのフランチャイズをオープンさせている。

若くしてビジネスの才能を開花させ、それを伸ばすように南カリフォルニア大学では、映画の製作とビジネスを学んだ。

しかし親譲りの恵まれた容姿を持つパトリックを、ハリウッドが放っておくはずがない。ラルフ・ローレンやアルマーニのモデル、数本の映画やドラマの脇役を経験。そして今回、切ない恋を描く『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』で初主演。陽光を浴びると命にかかわる難病XP(色素性乾皮症)と診断され、昼間は家から出ることのできない少女ケイティ(ベラ・ソーン)が窓越しに憧れ続けた、高校水泳部のスター、チャーリーを演じる。

パトリック・シュワルツェネッガー 撮影=谷岡康則

パトリック:僕は、演じることももちろんだけど、ビジネスにも興味があるので、そちらも続けていきたい。もっと多くのことを学びたいとも思ってる。それらを同時進行でやっていくのは、結構ハードだけど、自分の時間をどう管理するかだけの問題だと思う。うまくいくと感じている。

自分の初恋を投影したかという質問にも素直に答える

――それでは質問。病を抱える女の子を好きになる難しい役どころ。演技で一番苦労したのは?

パトリック:僕が演じたチャーリーは、映画の終盤まで彼女が病を抱えていることを知らないんだ。だから撮影中もふつうに彼女に接していた。にもかかわらず最後、感情がたかぶるシーンまで一気にもっていけたのは、ベラ・ソーンに負うところが大きいと思う。彼女と親しくなる過程の中で、お互いを知り、お互いを支えていった。そして、愛する人を亡くすとはどういうものか、チャーリーだったらどうするだろうと、自分の身に置きかえて演じたんだ。

『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』
5月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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――チャーリーには自身の初恋も投影させた?

パトリック:初恋はやはりとても大事なもの。一生ものだと思う。恋愛は、人との付き合い方や人間関係を学ぶ機会でもある。だから何かあると、いつもそこに戻ってしまうんだ。幸いなことに僕は高校時代に恋愛を経験をしているけど、ベラ・ソーンは子どもの時からショービズの世界で活躍していたから、高校に通えなかった。だから経験値による部分は、二人で共有しながら演じたんだ。

パトリックに影響を与えた人物とは?

昼間、外に出られないケイティの生きがいは、歌を歌うこと。ギターを弾いて曲を作り、夜になると駅前でストリートライブをする。チャーリーは、歌うケイティと出会い、恋に落ちる。二人は、アイスクリーム店でデートし、クラスメイトの家でのハウスパーティを楽しむ。どれもこれもケイティにとっては初めての体験だった。

――チャーリーは、サプライズといえる、ある体験をケイティにプレゼント。それはケイティを知る人々にとっても大切なものとなりますが、パトリックならどんなサプライズを計画する?

パトリック:僕はあまりクレイジーな発想をしないタイプ。だから、サプライズはしないかな。一緒に映画を観て、他の友だちを交えて食事するとか、彼女をとびきりのディナーに連れていくくらいだ。行き先も知らせず、電車に乗って違う町に行くなんてアイデアは出ないよ。逆にサプライズを受けたこともないな。

『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』
5月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(C) 2017 MIDNIGHT SUN LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

――本作は、ラブストーリーだが、チャーリーの成長物語でもある。チャーリーがケイティと出会って成長したように、パトリックに影響を与えた人物は?

パトリック:僕を触発してくれる人は、両親かもしれない。彼らから学ぶことは多いし、今も継続中だ。メンターとしてアドバイスももらっているし、家族だけど友人で、サポートもしてもらっている。

――俳優という仕事を選んだのも両親の影響が大きい?

パトリック:そうだね。でも演技だけではなく、ビジネスにも興味があるし、何か社会的貢献につながることもしていきたい。俳優業は、興味深いし、好きだけど、一つに絞りたくはないんだ。父が、ボディビルダーであり、俳優であり、政治家であり、ビジネスマンであるように。そういう父の姿を僕も追っていきたい。

パトリック・シュワルツェネッガー 撮影=谷岡康則

パトリックに影響を与えた人物とは?

アーノルド・シュワルツェネッガーは、21歳の時、ボディビルダーとしてオーストリアから渡米している。そして23歳の時に『SF超人ヘラクレス』(1969年)で俳優デビュー。その体格と力を活かした役が多かった父シュワルツェネッガーには、純愛する高校生の役を演じる機会はなかったと思う。そういう意味では、初めて父が演じたことのない役に挑戦した、と彼はいう。

――初主演にあたり、父シュワルツェネッガーからのアドバイスは?

パトリック:この映画に対して、というよりも人生におけるアドバイスかな。父が僕に言ってくれたのは「自分の夢を追いかけろ」ということ。演技であれ、学業であれ、ゴールを明確に描いて、決意を持って取り組めと。「無理だ」という人がいても、安易に耳を貸すことなく自分の道を進み、たやすく諦めてはいけないというアドバイスしてもらった。

*         *

そんなパトリックを、スコット・スピアー監督は、ジェームズ・ディーンやアラン・ドロンのように描こうしていたようだ。『理由なき反抗』(1955年)や『太陽がいっぱい』(1965年)を彷彿させるシーンがある。

――監督は、あなたをより美しく描きたいと思っていたのでは?

パトリック:あはは。ジャンルに縛られることなく、いろいろな役を演じたいと思ってる。

『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』
5月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(C) 2017 MIDNIGHT SUN LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

――演技では、インスピレーションを大事にするタイプ? それとも緻密に計画するタイプ?

パトリック:僕はリサーチをして、緻密に準備して役に臨むタイプ。リサーチは大好きだ。

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そう。彼が父アーノルド・シュワルツェネッガーと大きく違うのはそこだ。そこに降り立っただけで空気が震えたと錯覚させる、直感型の父とは違う。だが彼にはしなやかさという魅力がある。きっとそれはリサーチした情報を取り扱う経験値とともに、味になっていくのだと思う。

パトリックは、サプライズを仕掛ける発想はないというが、劇中、ケイティを楽しませようと、様々な演出を取り仕切るシーンにはリアリティがあった。現在は俳優であるが、いつかプロデューサーとしても才能を発揮するのではないか。

最後に、父シュワルツェネッガーとシルヴェスター・スタローンとの付き合いについて聞いてみた。昨年のクリスマス、父君がスタローン宅を訪ねた写真が、スタローンのインスタグラムにあがり、話題となった。本作の話題から離れて恐縮ではあるが、二人ともに企画中の『エクスペンダブルズ4(仮題)』からの離脱が伝えられ、父君は3月に心臓の手術を受けたという報道もあり、気になっていたのだ。

パトリック・シュワルツェネッガー 撮影=谷岡康則

パトリック:スライ(スタローン)は父の親友なので、家族ぐるみの付き合いをしている。お互いの家も行き来するしね。父も元気だよ。

とのこと。本作では、アイビーリーグの大学に推薦される水泳選手という設定にリアリティを出すため、肉体改造を行ったのだそう。彼の泣ける純愛映画へのアプローチを、まずは見届けたい!