5月18日公開の『ピーターラビット』は、絵本でおなじみのあの世界を実写映画化した作品です。イギリスの農村を舞台に、ピーターをはじめとした動物たちが、活き活きと動き回ります。CGの技術が向上するにつれて、映画に登場するウサギの姿はよりリアルになってきました。作中でピーターが飛び跳ねている姿は、本物のウサギのように見えることすらあります。

今回は本作をはじめ、ウサギが登場する映画の中に、彼らのカワイイだけじゃない、生き物として優れた能力を垣間見たいと思います。

犬やオオカミに追われても大丈夫!?

動物たちが人間と同じように街を作り、服を着て、仕事をしている。それがディズニー・アニメーション『ズートピア』(2016年)の世界です。主人公のジュディはウサギの新米警察官。職場にはクマやゾウといった大型動物が多く、小柄なジュディは同僚に冷やかされる日々を送っていました。やがて、肉食動物が次々に失踪し、凶暴化する事件を担当することになったジュディは、街で出会ったアカギツネの青年ニックと共に捜査を始めます。

作中でジュディは交通整理を任されると、ウサギならではの耳の良さを活かして、駐車違反のパーキングメーターの音を聞きわけます。さらに、俊足と後ろ足によるジャンプ力を活かして、自分よりも大きなキリンが運転する車に駐車違反の切符を貼っていくのです。

現実でもウサギは俊足で、速いものでは時速80キロメートルで走ることができます。グレートハウンド犬が時速68キロ、コヨーテが時速64キロ、オオカミが時速56キロ~68キロですから、捕食者よりも速く走れるんですね。4本脚で走る獣よりも、飛び跳ねるウサギの方が速いというのは、ちょっと意外な気がします。

ちなみに、アナウサギは巣穴に戻るとき、追跡者をまくために大きく飛び跳ねることもあるそうです。この時の飛距離は4メートルを超えることもあるとか。

チャームポイントの尻尾は、実際に仲間もメロメロにする!?

『イースターラビットのキャンディ工場』(2011年)の主人公イービーはイースター島にいるうさぎの王子様。子供たちにお菓子を配ったり、卵を隠したりするイースターラビットの継承者です。しかし、ドラマーになりたいイービーは家出をすると、一人ハリウッドを目指します。そこで知り合った青年フレッドに後押しされて、イービーは公開オーディション番組に出演するのでした。

本作でCGを担当したのは、日本でも人気の『怪盗グルー』シリーズなどを手掛けるイルミネーション・エンターテインメント。イービーをはじめとするキャラクターには、同社の色が強く出ていて、顔が大きく、デフォルメされたその姿は、どちらかというとリアルというより、ぬいぐるみのような印象です。

イービーの仕草の中でもひと際かわいかったのが、街で出会った青年フレッドに食事をねだろうと尻尾を振る姿。“喋る動物”に何をあげればいいのか戸惑うフレッドに、自分がウサギであることをアピールするのですが、お尻をフリフリする姿がかわいすぎます! 

ちなみに、現実世界でウサギは尻尾を求愛のときに使うようです。最初に発情したオスがメスの周りを飛び跳ねると、それを受けてメスは尻尾をピンとたてて、同じように飛び跳ねるのだとか。このとき、オスは好意を示すために、メスにおしっこをかけることもあるのだとか。映画の中ではそんなシーンはありませんので、どうかご安心を。

リアルなウサギの世界に迷い込んでみませんか?

『ウォーターシップダウンのうさぎたち』(1978年)は、うさぎの主人公ヘイゼルが、人間による開発の手が迫る故郷を離れ、兄や仲間とともに旅をする物語。安全で理想的な新しい棲家「ウォーターシップダウン」を目指しますが、その道中でときにウサギ同士の争いがおき、さらには天敵となる動物たちも姿を現すのでした。

本作に登場するウサギは、今回紹介した中でも一番リアルに描かれていると言っても過言ではありません。本作のアニメーター、ゲイリー・シカモアも「写実的な動きを取り入れた」と、特典映像で語っているほど。

鼻をヒクヒクさせて、仲間や異変などを察知する。2本足で立ち上がって辺りを見回す。手を舐めて、顔を洗うような仕草をする。後ろ足で耳を掻く。後ろ足で地面を叩いて、仲間に危険を知らせるなど……。ウサギの一つ一つの仕草が細かく描写されており、さらに画面に登場するウサギの動きが各々別々の動きをする細かい演出で、よりリアルに感じられる映像になっています。

この作品に登場するウサギは巣を作っているので、ピーターラビットと同じアナウサギだと推測できます。学校などで良く見る飼いウサギ(イエウサギ)は、アナウサギを家畜化したもの。穴を掘るために足はやや短めで、耳もコンパクトです。

その血筋をさかのぼると、祖先はイベリア半島にたどり着きます。スペインには今もアナウサギが生息していますが、彼らは19種類の猛禽類、10種類の肉食獣に捕食される“ごちそう”です。人間だけでなく、昔から多くの動物たちに追われる存在だったんですね。

同じ巣に住むアナウサギの間では、明確な格付けがされていて、ヘイゼルのようにリーダーとなる存在がいます。ヘイゼルが、安全な棲家を求めて「ウォーターシップダウン」を目指すのも、リアルな部分なのかもしれません。

『ピーターラビット』/5月18日(金)全国ロードショー

『ピーターラビット』ではウサギのピーターと、その妹やいとこ達が、近くに住む老人マグレガーの畑に忍び込み、色とりどりに実った野菜を頂戴してしまいます。そんなピーターたちの前に姿を現したのが、マグレガーの親戚トーマス。彼はあの手この手でピーターを家から追い出そうとしますが、トーマスが恋をした隣人のビアは、ピーターたちのことが大好きだったのです。

本作を今回紹介した作品たちと比較すると、動きや質感がよりリアルになっており、アニメーション技術の進化を改めて実感させられます。柔らかな毛並みに覆われたお腹には、ポヨポヨとした肉感まで出ていて、思わず触ってみたくなりました。

しかし一方で、2本足で歩く姿は人間のようで、トラックの荷台に飛び乗ったり、電気柵に細工を仕掛けたりと、身のこなしにピーターの活き活きとした姿が見事に表現されていました。

撮影中には“バニー一座”とよばれた俳優たちが、ピーター達の動きを演じ、俳優が自分の立つ場所を決めるときなどに一役買ったそうです。ピーターたち動物はCG、俳優は実写なのに、違和感なく見られるのは、そんな撮影テクニックがあってこそかもしれませんね。

そんなピーターの仕草の中でも、たまらなく愛らしいのが、「ごめんね」と謝るためにおでこを合わせようとするシーン。プロダクションノートによると、ウサギは実際におでこをくっつけて、飼い主に「撫でて」とせがむそうで、コミュニケーションの上でおでこは重要な場所なのだとか。本物のウサギ好きにはたまらない一幕ではないでしょうか。

ピンと立てた耳を音の鳴る方向に向けて警戒したり、欧米では“鼻ウインク”とよばれる鼻をピクピクさせる仕草など……。現実でもその一つ一つの動きが、たまらなくかわいいウサギたち。そこに、ピーターのユーモアあるキャラクターが組み合わさった『ピーターラビット』は、かわいい動物映画が大好きなら必見の作品です。

(文/デッキー@H14)