眉月じゅんのベストセラー漫画を実写映画化した『恋は雨上がりのように』。ケガで陸上を諦めた17歳の女子高生、橘あきらが恋をしたのはバイト先のファミレスの店長で、しかもバツイチ子持ち。二人の恋の行方は? あきらを演じる小松菜奈から「好きです!」と告白される店長を演じた大泉洋が、女子高生に片想いされる心境や盟友・戸次重幸との撮影秘話を語った。

挫折を乗り越える、さわやかで前向きな物語

Q:ファミレスの店長・近藤正己を演じる際、原作はどの程度意識しましたか? どのような作品になると思われましたか?

だいぶ原作に寄せたんですよ、髪型も。原作の近藤みたいに10円ハゲはないですけど(笑)。永井聡監督は、あきらが近藤のことをどうして好きになったのか、 観客の方がわからなくなると困ると思ったんじゃないでしょうか。僕としては最初、女子高生に片想いされるファミレスの店長の役ってやったことないな~、面白そうだな! と思いました。その近藤には学生時代に諦めた夢があって、ヒロインのあきらも陸上を諦めている。そんな二人が出会い、少しずつ影響し合って前に進んでいく、さわやかで前向きな物語になるのかなと。

Q:あきら役の小松菜奈さんに「好きです!」と告白される役は、ラッキー! と思う瞬間も?

どうやらこの作品の中で僕は5回ほど告白されるらしいんですけど、さすがに「ラッキー!」というのはないですね。そこはやっぱり、役に入っているので。とはいえそう言われたら近藤としてドキっとするわけですけどね。

Q:もしご自身の娘が17歳になったとき、あきらのように45歳でバツイチの子持ち男を「好きな人」として紹介してきたらどうします?

う~ん……17歳だとある程度は大人かなという気はしますからね。17歳の同級生を連れてきて、「結婚したい!」と言われるほうが嫌かも(笑)。それはもう少し考えなよ! と言うかもしれない。それよりは近藤のほうが、年は離れているけど実際にファミレスで店長をしているわけで、キチンとしているし、話す余地はある気がする。一番嫌なのは、小学校6年生くらいの娘が、中学生の彼氏を連れてくることかも! 僕を当て書きして作られた「騙し絵の牙」という小説に、まさにそういうエピソードが出てくるんですよ。それで反対したら娘に「だからお父さんには言いたくなかったのよ!」と言われ、お父さんが孤立するという、ウソでしょ!? みたいな展開なんですけど。

戸次が相手だからこそ生まれた空気

Q:近藤の学生時代の友人で、売れっ子の小説家である九条ちひろを同じ演劇ユニット「TEAM NACS」に所属する戸次重幸さんが演じています。実生活同様学友であるという設定は、より強く説得力が出るものですか?

いやシゲじゃなくてももちろん出たと思いますけど(笑)、シゲだからこそ生まれた空気はあったでしょうね。学生時代からの付き合いって、まったくそのままの設定だから。最初にちひろをシゲが演じると聞いて、「え、シゲ? これシゲがやんの!? マジか~」と驚きました。シゲからも「ちょっと俺がやるから」と聞いて。アイツがまた「お前のあれだろ、大学時代の友達なんだよな。まんまでいいんだろ?」というから「いや、ちゃんと役柄としての設定がいろいろあるんだから、まんまじゃないでしょ」という話をしました(笑)。

Q:劇中、久しぶりに再会した近藤とちひろが居酒屋に行きますよね?

いやぁ、実際にああいうところでも飲んだりしていました。僕自身は学生時代、あんまりお酒を飲まなかったんです。飲まないんで延々、戸次さんとかと話していられました。稽古終わりにただただ稽古場に残って、コンビニでいろんなものを買ってきて、朝までしゃべっていました。みんなやることがない大学生でしたからね。最後には本当にやることがなくなって、屁をこいて遊んでいました(笑)。帰りゃあいいのに、誰も帰らない。それで誰かが「ぶー」と屁をこいて。「そんなこと言うなよ」「そんな言い方あるか?」って屁と会話する(笑)。

Q:そうした記憶を共有した戸次さんと学生時代からの友人役を演じると、「俺たちは大人じゃねーよ。同級生だろ」というセリフがより響いたのではないですか?

わかる気がします。近藤が何年かぶりにちひろに会った気持ちも、それまではなんとなく会いにくかったのも。二人は学生時代に小説家という同じ夢を追っていて、片やちひろはある意味その夢を叶え、近藤は小説家の道を諦めていたわけで。でもなんとなく会いたくなって、久しぶりに会ったときにそいつがちょっと励ましてくれたわけですよね。すると近藤はうれしかったんだろうなと思うけれど、僕自身の場合はそいつらと今もず~っといるという(笑)。それがなんか、うれしいです。

Q:学生時代に組んだバンドや劇団って、どこかで大きなケンカをして仲たがいをしたりするものですよね?

僕らも大きなケンカはいっぱいしています! いくらでも解散の機会はあっただろうけど、なんとなく離れがたいな~という気持ちがあって続いている。戸次ともお互いに気に入らないこともあるだろうし、ケンカもするんだけど、結局この撮影現場でも一緒にいて、ずっとしゃべっていました。くっだらねえ話をず~っと。「TEAM NACS」のみなさんというのは、僕にとってかけがえのない人たちなんですよね。

永井監督は自分で演じてみせる系

Q:永井聡監督の演出の印象はいかがでしたか?

どちらかというと自分で演じてみせる系の監督で、セリフの言い方なども実際に言ってみせてくれるのですが、とにかく上手なんですよ! 菜奈ちゃんのセリフもそうで、うまいな監督! という感じ。面白くて、役者としてはなかなかそれを超えられないんですよね。画的にも笑いのツボをつくのがうまくて、撮影現場で演出に迷うということがない。役者が安心して芝居ができる方でした。

Q:近藤が店長を務めるファミレスで働く吉澤を演じた葉山奨之さんとはNHKの連続テレビ小説「まれ」以来の共演ですよね。「大泉さんは、振り向き方がうまい!」と絶賛されていましたが?

どこの振り向き方の話をしているんだろう? それもわかりません(笑)。でも僕に言わせると、葉山君は面白いですよね~。葉山君はいい! なんだろうね? もちろんバ〇にはできないんだけど、バ〇っぽい役がやたらうまいんだよ。素のアイツと非常に近い。撮影現場ではムードメーカーでした。

Q:共演者のみなさんとの息もぴったりだったようですね。できた映画を観た感想は?

映像も美しく、この原作を映画化するのにパーフェクトなチームだったと思います。自信を持って、観ていただきたい! 言える作品になったと思っています。

取材・文:浅見祥子 写真:杉映貴子