彫りの深い整った顔立ちに、引き締まった堂々たる体躯――生田斗真が、人を惹きつけてやまない華のあるスター俳優であることは言うまでもありませんが、スクリーンの中で見せる暗い影を落とした表情に、演技と分かっていても、時々ぎくりとさせられることがあります。それは、まるで本当にその人生を受け入れ、歩んできたかのような生々しさがそこに感じられるから。

ジャニーズという冠、アイドル的なルックス……良くも悪くも先入観を持たれがちな状況にあって、俳優として16本もの映画出演を重ねてきた生田斗真。その実力を発揮してきたこれまでの「静の演技」を紐解いてみたいと思います。

(C)薬丸 岳/集英社 (C)2018映画「友罪」製作委員会

主演俳優として“尋常じゃない覚悟”をもって挑んだ史上最難関の役柄とは?

「この映画、はっきり言って問題作です。ですが、瀬々監督の指揮の元、全てのキャスト全てのスタッフが尋常じゃない覚悟をもって作り上げた作品ですので、この映画をしっかりと受け止めてほしいなと思います」

これは、瑛太とともにW主演を務めた最新作『友罪』(5月25日公開)の完成披露試写会で発した生田斗真の言葉です。

生田斗真と瑛太が演じるのは“史上最難関”とまで言われた難役。90年代に日本中を震撼させた「神戸連続児童殺傷事件」をモデルにした原作(薬丸岳の超問題作)を映画化したとあって、生田が並々ならぬ意気込みを見せるのも納得です。

生田斗真の代表作は問題作ばかり!?

生田斗真のフィルモグラフィーを振り返ってみると、衝撃的なテーマをはらんだ問題作ばかり。映画人として数々の武勇伝をもつ鬼才・荒戸源次郎が監督した太宰治原作の『人間失格』(2009年)がスクリーンデビューというあたりも、その後の経歴を暗示させるものがありますね。

俳優・生田斗真が、世に鮮烈な印象を残した作品といえば、『脳男』(2013年)の無表情の男、鈴木一郎役が挙がります。一切の感情を持たず、痛みという感覚すら持ち合わせていない殺人ロボット(=脳男)という役どころですが、躊躇なく悪人を滅ぼしていく様は、狂気的ですらありました。

問題作という意味では、法律では裁かれない不正義への制裁を繰り返す謎の男“シンブンシ”の首謀者を演じた『予告犯』(2015年)や、不可解な死を遂げた婚約者の復讐を果たすために闇社会へと足を踏み入れる元教師を演じた『グラスホッパー』(2015年)もまたしかり。

いずれも現代の闇に切り込む社会的テーマをはらんだ設定ゆえに、その衝撃度は凄まじいものがありましたが、そこに共通するのは“暗い影”です。主役でありながら、太陽のような熱量のある「動」とは対極にある、月のようにひっそりと佇む「静」の存在感。逆にチャレンジングな役柄であればあるほど、それをただただ受動する彼の「静の演技」が際立ってくるのです。

問題作『友罪』の物語の軸は、人生を捨てた益田の心境の変化

出演者自ら“問題作”と言い切る『友罪』ですが、生田演じる「益田」と瑛太演じる「鈴木」が、町工場で働く見習い工員同士として出会うところから物語は始まります。

ジャーナリストの夢に破れて、寮のある町工場を選び働き出した益田に対し、自分のことを一切語ろうとせず、他人との接触を頑なに拒もうとする鈴木。慣れない肉体労働を共に繰り返す日々の中で、彼らは次第に距離を縮めていきますが、ある事件がもとで「17年前の凶悪事件の犯人だった“少年A”が鈴木かもしれない」という疑惑が、益田の胸中を支配していくことになるのです。

さらに、恋人の口車にのせられAV女優となった過去を持ち、東京から逃げてきた美代子(夏帆)や、交通事故を起こして人命を奪った息子の贖罪のために生きる山内(佐藤浩市)ら、消してしまいたい過去や、許されない罪を抱えた人物の背景がつぶさに描かれており、劇中には重苦しいまでの空気が漂います。

そんな本作にあって、生田が演じた益田もまた、過去に“ある罪”を犯し、暗い影を秘めている人物。無意味な日々を重ねていただけの彼が、鈴木との交流を経て、どのような変化を遂げているのか? そんな益田の心境の変遷こそ、本作の軸となるのです。

(C)薬丸 岳/集英社 (C)2018映画「友罪」製作委員会

「生田さんは、あまりカテゴライズできない感じの俳優ということで、以前からとても気になっていました。正直、鈴木役でもハマっていると思ったぐらいですが、今回は、巻き込まれる側である益田をどう演じてくれるのか、と期待がありました」

そう明かすのは、『友罪』の監督であり、人間の本質に迫るサスペンス映画『64-ロクヨン-』(2016年)のヒットでも知られる瀬々敬久監督。本作の現場を振り返って、「益田役を演じた生田さんは“受け”の芝居が多かったと思うんです。直感的な瑛太さんに対して、生田さんはテストから本番へ役を仕上げていく。2人は芝居に対する取り組み方が真逆なので、どちらというと生田さんのタイミングでカメラを回していました」と語っています。

この瀬々監督の言葉からも、鈴木という存在を受け入れる側の益田を重視していたことが分かります。問題作に覚悟を持って臨み、その役の人生ごと受け止める「静の演技」を見せる生田斗真。『友罪』の益田役は、まさにその真骨頂といえるかもしれません。

(文/晴スミス・サンクレイオ翼)