『ミラノ、愛に生きる』(2009年)の脚本家イヴァン・コトロネーオが、監督を務めた映画『最初で最後のキス』(6月2日公開)。本作では、3人の多感な少年少女が織りなす青春のきらめきと、彼らを取り巻く過酷な現実が描かれます。本作の公開にちなみ、「女性1人×男性2人」の三角関係を描いたLGBT映画の名作をまとめてみました。

男女3人の27年にわたる友情と切ない三角関係を綴った『GF*BF』

最初にご紹介するのは、戒厳令下の1985年から2012年までの激動の台湾社会を背景に、男女3人の27年にわたる友情と切ない三角関係を綴った『GF*BF』(2012年)です。

同時期に青春時代を過ごしたヤン・ヤーチェ監督が、自らの体験を基に脚本を執筆。自由を求めてさまざまな抗議運動がさかんに行われた時代に、高校、大学、社会人へと進んでいく若者たちが直面する普遍的な悩みや葛藤を、見事に映し出しています。

登場するのは、ゲイであることを誰にも言えずにいる忠良と、報われない愛に苦しむ美宝。そして、自分本位な言動で美宝や忠良を翻弄する心仁。それぞれの思惑を胸に秘めながら、新緑の中をスクーターで疾走し、川で水遊びに興じる若者たちが放つきらめきに、思わず目を奪われる瞬間が何度も訪れます。

互いに苦しみを受け入れながら、長い歳月をかけて育まれた忠良と美宝の絆の深さは、もはや「三角関係」から出発したとは思えないほどの大きな感動となって、観る者の心を揺さぶります。

映画の終盤に映し出される、真夜中のプールに忍び込んだ忠良と美宝が、水の少ないプールの底に寝っ転がってじゃれ合うシーンは、二度と戻らない青春時代の一瞬を捉えた名場面として、きっと多くの人の脳裏に刻まれることでしょう。

中国映画のタブーに挑んでロウ・イエ監督が完成させた『スプリング・フィーバー』

続いてご紹介するのは、『スプリング・フィーバー』(2009年)。中国当局の許可を得ずに撮影した『天安門、恋人たち』(2006年)をカンヌ映画祭に出品し、中国での映画製作禁止処分を受けていたロウ・イエ監督が、なんとそれを無視して家庭用デジタルカメラでゲリラ撮影して完成させた作品です。

中国の作家・郁達夫による『春風沈酔の夜』の一節とともに映し出されるのは、狂おしいほどの欲望に苛まれながらも、複雑な愛情によって絡み合い、絶望の淵をさまよい歩く若者たちの姿。中でも注目したいのが、浮気調査を行う過程で、謎めいたゲイの男ジャンに惹かれていく探偵ルオと、その恋人リー・ジンによる「男性2人×女性1人」の関係なんです。

その後、奇妙な三角関係に陥った3人が、互いに戸惑いを抱えながらもあてのない旅に出ます。切なさ全開でカラオケをするシーンは、涙なくしては観ることが出来ない名場面。もはや同性であることや、恋のライバルであることすら超越し、人間同士が肉体的に惹かれ合ってしまうことのどうしようもなさや、移ろいゆく心のやるせなさを、静謐な映像と美しい音楽で、情感たっぷりに描いています。

検閲を受けなかったからこそ、とことんまで自由な表現に挑むことができたロウ・イエ監督による「純粋なる性愛」に圧倒されることでしょう。

(C)2016 Indigo Film – Titanus

若さゆえの無知が取り返しのつかない悲劇を巻き起こす『最初で最後のキス』

最後にご紹介するのが、“新たな青春映画の金字塔”ともいうべき『最初で最後のキス』。

イタリア北部の小さな町を舞台に、はみ出し者の高校生の男女3人が、ひょんなことから意気投合して絆を深めるも、若さゆえの無知によって傷つけ合い、取り返しのつかない悲劇を巻き起こしてしまう…という衝撃作。

物語の前半は、まるでコメディ映画かと見まがう程に、カラフルでポップな映像や音楽に溢れています。中でも圧巻なのは、レディ・ガガに憧れる超個性的な転校生ロレンツォの初登校シーン。ミュージックビデオさながらの、デジタルを駆使したファンタジックな映像には、目を奪われてしまいます。

一方、ある噂話をきっかけに、“尻軽女”と囃し立てられている少女ブルーと、バスケは得意なものの、皆から「トロい」とバカにされているアントニオは、ロレンツォとの出会いをきっかけに、徐々に自分の殻を打ち破り、自分たちを阻害する生徒たちに復讐を試みます。しかし、ロレンツォがアントニオに対する想いをストレートに表現するやいなや、彼ら3人の歯車が狂い始め、事態は思わぬ方向へと転がっていくのです。

本作が突き付けるのは、物語の前半と後半でガラッと変わる「落差」によって生み出される強烈なメッセージ。それは、差別や偏見がいかに人を傷つけ、結果的に自分自身をも苦しめるのだということ。実在の事件に衝撃を受け「二度とこんな不幸な事件が繰り返されないように」との思いでこの映画を作ったイヴァン・コトロネーオ監督の強い祈りが、スクリーンの端々から伝わってくるかのようです。

(C)2016 Indigo Film – Titanus

今回ご紹介した3本は、青春映画の佳作が生まれやすいとされる、いわゆる「ドリカム編成」(女性1人×男性2人)の中でも、LGBT問題としっかり向き合って作られた名作ばかり。是非この機会に、スクリーンやDVDで、さまざまな愛の形に触れてみてはいかがでしょうか。

(文/渡邊玲子@アドバンスワークス)