36歳の時に第69回カンヌ国際映画祭へ出品した監督作『淵に立つ』が、ある視点部門審査員賞を受賞した気鋭・深田晃司。彼が監督し、国際派俳優ディーン・フジオカが主演したファンタジー映画『海を駆ける』が、5月26日(土)より公開される。映画の舞台はディーン・フジオカの活動拠点のひとつ、インドネシア。ディーン・フジオカは、2004年のスマトラ島沖地震で壊滅的被害を受けたインドネシア、バンダ・アチェの海に突然現れた謎めいた男に扮している。監督が“自然のように、植物のようにただそこにいる”と表現した難役ラウ(※インドネシア語で「海」の意味)に果敢に挑戦。セリフや感情表現を極力抑えた演技で新境地を開拓したディーン・フジオカにお話を伺った。

繊細な演技でこの世のものとは思えない存在を表現

Q:ラウはセリフが少ない難しい役です。どのようにして役を作り上げていったのでしょう。

監督からラウの役柄について伺った時、まずは彼の国籍やバックグラウンドなどが分からないように演じなければならないと思いました。そこを出発点にし、体の姿勢、声のトーン、目線や表情など、細かい部分を監督と話し合いながら、ラウを作り上げていきました。具体的には、監督から、いつも笑顔をたやさず、猫背でいて欲しい、このシーンでは瞬きしないで、という演技指導がありました。

Q:この作品に惹かれた理由を教えてください。

2009年以来、僕は台湾と台北とジャカルタを仕事の拠点にしていました。その頃から、いつかインドネシアで俳優の仕事をやってみたいと思っていました。この映画でやっと夢が叶いました。バンダ・アチェは2004年のスマトラ島沖地震で壊滅的被害を受けた特殊なエリアです。この映画が、通常、映画を撮らないような場所を舞台に設定したところやラウをめぐる不思議な物語にも惹かれました。僕自身、バンダ・アチェはもちろんのこと、スマトラ島に行ったこともなく、現地へ行ってハッとさせられることがたくさんありました。日本とインドネシアでは、特に災害や失った命に対する考え方がすごく違っていて。インドネシアの方々は、家族や隣人が被災者となっても神の思し召しだと考えて受け入れるんです。スマトラ島沖地震による大津波が起こる前、バンダ・アチェは長い間、内戦で苦しんでいました。悲しい歴史があるため、津波のおかげで争いを止められたと考える方もいます。そういう話を直接、現地の方から聞いた時は魂が震えるような感覚を抱きました。

Q:ともに震災からの復興を遂げようとしている日本とインドネシアは今年、国交60周年を迎えました。この映画の舞台となったインドネシアの魅力とは?

インドネシアの魅力は多様性です。いろんな民族、文化、言語、食べ物があり、宗教も肌の色も違う。みんな違うことが前提で社会が成り立っていて、心地良さや開放感を覚えます。僕は寒さが苦手なので、1年中暖かいところも気に入っています。暖かい島国ですから、農作物やシーフードが豊富に獲れます。コーヒーだっておいしい。イスラム教徒が多いので、ラム肉の処理も上手いんですよ。

もし、ラウのような不思議な力があったら……ディーン・フジオカが起こしてみたい奇跡とは?

Q:劇中、ラウは不思議な力で数々の奇跡を起こします。彼のような不思議な力を持っていたら、どのような願いを叶えたいですか?

ドアを開けてすぐに、ジャカルタに住んでいる家族に会えたら良いですね。その逆で、ジャカルタにある自宅のドアを開けたら、仕事の現場に行けるとか。もし、そんなことが出来れば、移動の時間が短縮出来ますね。

Q:もし、オフがあったら何をしたいですか?

スキーへ行きたいですね。インドネシアではできないので、スキーは何年もやっていません。

Q:ディーンさんのインスタグラムには、しばしば果物のお写真が登場します。映画の撮影期間中においしい果物を食べることが出来ましたか?

マンゴー、スネークフルーツ、ドラゴンフルーツ、ロンガン、ランブータンなどを食べました。

Q:スネークフルーツ? 

蛇のような茶色の皮をした果物です。

Q:日本では滅多にお目にかかれないフルーツですね! 最後の質問です。この映画をどのように楽しんで欲しいですか?

まずご覧になって、映画の世界観にハマっていただきたいです。登場人物の視点によって、見えてくるものが変わってきますし、バンダ・アチェのことを知らなくても魅力を感じていただけると思います。いろんな見方が出来る不思議な物語です。ラストシーンの高揚感を体験した後、ラウは一体何だったのか、観た方それぞれで答えを出していただきたいですね。

(c) 2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

映画『海を駆ける』
5月26日(土)より全国公開
公式サイト:http://umikake.jp/
配給/日活、東京テアトル
(c) 2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

ヘアメイク/RYO
スタイリスト/カワダイソン(インパナトーレ)
取材・文/田嶋真理 撮影/横村彰