文=金田裕美子/Avanti Press

カフェで出会った女性に一目ぼれしたプレイボーイ。さっそく声をかけて意気投合するものの、彼女は一日しか記憶がもたない短期記憶障害者でした。前日の出来事をすべて忘れてしまう彼女と、毎日初対面の相手として出会い、毎日恋に落ち、毎日ファーストキスを交わす――。アダム・サンドラ―、ドリュー・バリモア主演で大ヒットした2004年のロマンティック・コメディ、『50回目のファースト・キス』の日本版リメイクが登場しました!

『50回目のファースト・キス』
(C)SUPPLIED BY LL/GLOBE PHOTOS, INC

日米両作品とも、舞台はハワイ。サンドラーが演じた主人公ヘンリーは水族館に勤める海洋生物研究者でしたが、日本版で山田孝之が演じる大輔はツアーガイドで生計を立てている天文学研究者。設定は多少変更されているものの、コミカルかつロマンティック、そしてちょっぴり泣かせる映画のテイストはどちらも共通しています。

昨日の記憶をなくしてもワッフルの家の作り方は忘れない

ふたりのヒロイン、オリジナルでバリモアちゃんが演じたルーシーと、リメイク版で長澤まさみが演じた瑠衣は、ともに学校の美術の先生。毎日同じカフェの同じテーブルについてワッフルを注文し、お皿の上にお菓子の家ならぬワッフルの家を組み立てているところも同じです。このワッフルの家がこんがり黄金色で美味しそう! 今回はこの「ワッフルの家」を作ってみたいと思います。

『50回目のファーストキス』6月1日(金)全国ロードショー
(C)2018 『50回目のファーストキス』製作委員会
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給

大輔が瑠衣と出会うのは、車が故障してロードサービスが到着するまでの時間つぶしに入ったローカルなカフェ。朝食はもう済んだからコーヒーだけ、と注文する大輔に、カフェで働くスー(Myhraliza Aala)が「朝食には何を食べたの?」とたずねます。「ピーナツバター・サンドイッチとミルク」と大輔が答えると、「そんなもの朝食じゃないわ。スパム&エッグを持ってくる」と勝手にキッチンにオーダー。この会話を聞いていたシェフは、「ピーナツバターが好きなんだって? スパム&エッグにピーナツバターを入れてやろうか?」と大輔をからかいます。

『50回目のファーストキス』6月1日(金)全国ロードショー
(C)2018 『50回目のファーストキス』製作委員会
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給

このシーン、オリジナル版でヘンリーが白状する朝食は「ピーナツバターカップとゲータレード」。ピーナツバターカップとは、アメリカのスーパーのレジ横などで売られている、激甘かつしょっぱいピーナツクリームが入ったカップケーキ型のお菓子。確かに「食事」じゃありません。これに比べれば、大輔のメニューなんてとっても健康的です。

Reese'sのピーナツバターカップ

けっこうボリューミー!? ハワイの朝食

ちなみにこのスパム&エッグの完成品は画面には映らないのですが、ハワイではマクドナルドの朝メニューにもあるくらいポピュラーな朝食ということで、ついでにこれも作ってみます。

スパム&エッグが出てくるのを待つ間に大輔は、お皿の上のワッフルを切ったり重ねたりして「ワッフルの家」を作っている瑠衣を見かけて彼女に一目ぼれしてしまいます。女性の扱いには自信のある大輔、さっそく彼女に話しかけて同じテーブルにつくことに成功。得意の星座の話でふたりの会話は盛り上がります。そしてお互いに「運命の人に出会った!」と確信したふたりは、「明日もここで会おう」と約束して別れます。

『50回目のファーストキス』6月1日(金)全国ロードショー
(C)2018 『50回目のファーストキス』製作委員会
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給

翌朝、再びカフェを訪れた大輔が意気揚々と瑠衣に話しかけると、彼女は「なにアンタ!」と大輔を完全に不審者あつかい。「え、昨日あんなに楽しく盛り上がったのに……」とあまりの豹変ぶりに驚く大輔に、カフェのスーが事情を説明してくれます。瑠依は一年前、父親の誕生日に交通事故に遭い、頭に重傷を負ったせいで新しい記憶が1日しか継続しないこと。一晩眠ると記憶が事故当日に戻ってしまい、毎朝同じようにカフェに来ていること。彼女にショックを与えないよう、父親の健太(佐藤二郎)と弟の慎太郎(太賀)が苦労して毎日「お父さんの誕生日」を演出しているのでした。

『50回目のファーストキス』6月1日(金)全国ロードショー
(C)2018 『50回目のファーストキス』製作委員会
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給

どんなにお互いの気持ちが通じても、明日になったら忘れられてしまう――そう知りつつも、瑠衣を諦められない大輔は、毎日カフェにやって来ては彼女に話しかけます。でも最初の日と違い、毛嫌いされてなかなか近づくことができません。彼女がワッフルで作っている家は、山小屋風の日もあれば、平屋の日も、インディアンの住居・ティピー風の日もあります。でもなぜか必ず家の形。大輔は爪楊枝を使って器用に家のドアを取り付けてあげたりしますが、「他人の食べ物に触るなんて」と嫌がられてまたもや失敗……。

アメリカン・スタイルのワッフル、作ってみます

このあと、あの手この手でアタックを続ける大輔に新たな光明が――というお話の続きは映画をご覧いただくとして、さっそくワッフルを作ってみましょう。ワッフルには大きく分けて2種類あります。ベルギー・ワッフルに代表される、イーストを使って生地を発酵させるものと、発酵はさせずにベーキングパウダーで膨らませるアメリカン・ワッフル。映画の舞台はハワイなので、当然ここはアメリカン・スタイルを採用いたします。

薄力粉、ベーキングパウダー、塩はあわせてふるっておきます。卵は割って白身と黄身に分け、ボウルに白身と砂糖を入れて泡だて器で泡立てます。目安はツノが立つくらいまで。

卵黄に牛乳と溶かしバターを加えて混ぜ、さきほどの薄力粉の入ったボウルにジャーッ。泡だて器でよく合わせたら、泡立てた卵白とバニラエッセンスを加え、生地が均一になるまでざっくり混ぜ合わせます。ここで、混ぜすぎて粘り気を出してしまったり、泡を潰してしまったりすると、焼いたときにあまり膨らまなくなるので要注意です。

卵白はツノが立つくらいまで泡立ててからざっくり混ぜ合わせます

卵白を泡立てるところから作らなくても、お手軽にホットケーキミックスを使う方法もあります。この場合、ホットケーキの生地に溶かしバターを加えると、ワッフルのまわりがカリカリ、サクサクに仕上がります。

ワッフルの型を温めて全体に油をひき、生地を均等に流し込みます。蓋をして弱火で3分、ひっくり返してもう3分。時々型を動かして、焼きむらができないようにします。途中、蓋の隙間から蒸気が出てきて、甘~いいい香りが漂ってきます。蓋を開けてみて、こんがり色がついていればワッフルの出来上がり。

作ったら食べるのがもったいなくなるワッフルの家

さて、ここから家を組み立てるには、ワッフルが5、6枚ほど必要になります。今回使った、1度に1枚しか焼けないワッフル型だと、6分×5枚=30分はかかる計算。最後の1枚が焼けるころには、最初の1枚が冷めちゃう……。数枚まとめて出てくるお店と違い、ワッフルでの家づくりは、大きなワッフル型のない家庭では結構時間がかかるのでした。

なんということでしょう。ワッフルで家が出来上がっていきます。ドアは爪楊枝を使って開閉式に

結局1時間近くかかって6枚の建材をそろえ、いざ建築現場(お皿)へ。1枚を床に敷き、4分の1に細長く切ったものを積み重ねて壁に。この作業、結構楽しい。子どもの頃、こんなことをしていたら「食べ物で遊ぶんじゃありません!」と怒られたと思いますが、いい年をした大人なので誰にも叱られず、心ゆくまで楽しむことができます。

2枚に切ったワッフルは上にのせて屋根に。屋根の上に小さく四角く切ったものを積み重ねて、煙突をつければワッフルの家の完成!

全米トップ!? ハワイ州のスパム消費量

お次はスパム&エッグを作ります。「スパム」は、ホーメル社のポークランチョンミート缶の商品名。ハワイ州のスパム消費量は全米トップで、年間700万缶食べられているという超ポピュラーな食材だそうです。これを薄切りにして焼いたものをご飯にのせて海苔で巻いた「スパムむすび」は日本でもよく知られています。

ハワイのお話ではないけれど、クリント・イーストウッド主演の『人生の特等席』(2012年)では、メジャーリーグの老いたスカウトマン、イーストウッドが冷蔵庫から食べかけのスパム缶を取り出し、「チャンピオンの朝食だ」などと言いながら缶からそのまま食べていました。

カロリー高そうなハワイの朝食

ちなみに迷惑メールの意味で使われる「スパム」の語源もこのスパムだという説が有力です。イギリスのコメディ集団モンティ・パイソンのテレビ・スケッチに、レストランでメニューのすべてにスパムが使われている上に「スパム、スパム、スパム……」と連呼されてうんざりするというギャグがあり、そこからしつこくて迷惑なメールをこう呼ぶようになった、という説がひとつ。

もうひとつは、米軍の軍用食料として採用され、毎日毎日スパムばかり食べさせられた兵士がうんざりするものを「スパム」と呼んだ、という説。確かに、ジョン・ウェイン主演の第二次大戦映画『男の叫び』(1953年)では、不時着した輸送機のもとに投下される救援物資のスパムを、機長のウェインが投げ捨てていました。

作り方はシンプル! スパム&エッグ

さて、スパム&エッグ。これは薄切りにしたスパムをフライパンで焼き、スクランブルエッグとライスを添えれば出来上がりという、超簡単メニュー。パンでなくライスを添えるところがハワイっぽい感じです。ところで「スパム&エッグにピーナツバターを入れてやろうか?」と言ったシェフは、一体これのどこにピーナツバターを使うつもりだったんでしょうか。

ワッフルの家は、せっかく作ったので崩してしまうのがもったいない気もしましたが、煙突、屋根、ドア、壁の順番にひっぺがして、メープルシロップをかけていただきました。映画の中の瑠衣はというと、ワッフルを食べるより、ワッフルで家を組み立てることのほうに夢中だったようです。これが彼女には、なんらかのセラピー効果をもたらしていたのかも。食べ物で遊ぶのはお行儀が悪いけれど、粗末にしたりしなければ、たまには童心に返ってこんなことをやってみるのも楽しいものです。

【材料】
《ワッフル》
薄力粉、ベーキングパウダー、卵、砂糖、塩、牛乳、バター、バニラエッセンス、サラダ油、メープルシロップ
《スパム&エッグ》
スパム、卵、塩、こしょう、サラダ油、白いご飯
《映画っぽい雰囲気を盛り上げる小道具》
ピーナツバター、ユリの花、パイナップル、天体望遠鏡、赤いカクテルストロー、ピンクのTシャツ、アロハ、画材