公開中の『ビューティフル・デイ』は、元軍人で人探しを専門にしているジョーが、政治家の娘ニーナを救出するという物語です。

今作のように、血縁関係にない“おじさんと少女”が困難に立ち向かう姿を描く作品は、『レオン』(1994年)をはじめ、多くのファンを生み出してきました。実の親子ではないけれど、2人がそれ以上に強い絆で結ばれていく姿が、観客の心を惹きつけるのではないでしょうか? 今回はそんな“おじさん×少女”コンビと、その関係性が生み出していく物語の魅力を、名作映画の中に紐解いていきたいと思います。

かわいい少女と疲れたおじさん…『LOGAN/ローガン』

ミュータント達の活躍を描く『X-MEN』シリーズの中心人物、ローガン(ウルヴァリン)の最後の物語『LOGAN/ローガン』(2017年)。不死身の身体をもつローガンですが、時の流れとともに老いが感じられるようになり、随所に死を意識させる展開が待ち受けています。

その内容は、超能力を駆使した派手なバトルが展開される過去のシリーズ作品とは一線を画しており、西部劇を参考にした、肉体同士がぶつかりあうどこか泥臭い物語です。

本作でローガンと行動を共にする少女がローラ。ローガンの遺伝子から作られたクローンです。見た目はかわいらしい11歳の少女ですが、ローガンの凶暴な性格が受け継がれており、“アダマンチウムの爪”で重武装した大人たちを皆殺しにしていきます。

その一方で、コミックの世界に没入したり、流行りの音楽に耳を傾けたりする姿は、年頃の少女そのもの。嫌々ながらもローラと旅をすることになったローガンは、次第に彼女と心を通わせていきます。

監督のジェームズ・マンゴールドは、Blu-rayの音声解説で本作のテーマの一つが“手を繋ぐ”ことだと明言しています。クローンとして育ったローラが心の底から求めるものは家族であり、その象徴が“手を繋ぐ”という行為です。孤独な2人の大きな身体と小さな身体は、手を繋ぎ合うたび、本物の父娘のように愛情を深めていくように感じられます。

中でも注目なのが、大人と子供、性格も異なる二人が、互いに協力しあうアクションシーンです。ローガンは強靭な肉体を活かしたパワータイプ。一方のローラは小さい身体を活かしたトリッキータイプで、二人の連携がバトルを盛り上げてくれます。いざというときには息がピッタリと合う、まるで親子のような関係がアクションシーンにも垣間見ることができるのは、このコンビの魅力の一つといえるでしょう。

勝気な少女と粗暴なおじさん…『トゥルー・グリット』

父親を殺された14歳の少女マティ・ロスが、凄腕と評判の保安官ルースター・コグバーンを雇い、共に犯人を追跡する西部劇『トゥルー・グリット』(2010年)。

ロスは大人との交渉ごとや口喧嘩でも負けない、勝気で明晰な知性の持ち主。その一方で銃の撃ち方もままならない、未熟な一面を持ち合わせています。彼女に雇われるコグバーンは誰もが認める腕利きですが、大酒飲みで、粗暴で、法律も平気で破るという、典型的なアメリカ映画の英雄像です。

性別も世代も性格も合わない二人は、旅をしていくうちに当たり前のように衝突してしまいます。ロスは現実の認識に甘いところがあり、肝心の復讐相手を目の前にしても、自分の命が逆に狙われることを全く考えていません。一方のコグバーンは一見何も考えていないように見えますが、隻眼が象徴しているように、現実の厳しさを熟知しています。

二人と行動するテキサス・レンジャーを演じたマット・デイモンは、本作を“少女の成長と純真さの消失”と表現しました。物語の中でロスは、自らの甘さと復讐の代償により、身体に取り返しのつかない傷を負ってしまいます。そこに至る旅路の中で、彼女は現実の厳しさと、本当の勇気(トゥルー・グリット)とは何かを知る人間へと成長していくのです。

見た目や性格はまるで噛み合いそうになくても、痛みを知り、そして代償を負ったもの同士だからこそ、揺るがない大きな愛が生まれることがある。ロスの成長とともに、二人の関係が変わっていくところは、本作の大きな見どころといえるでしょう。

優しい少女と強くてかっこいいおじさん…『アジョシ』

細々と質屋を営んでいるテシクと、隣に住む一家の少女で、彼をアジョシ(おじさん)と慕うソミの物語『アジョシ』(2010年)。

テシクは物静かで感情を表にださず、近所では危ない人と噂されています。しかしソミは、そんなことはお構い無しに、テシクの家の中にも心の中にも真正面から入っていく活発な少女。似合うはずもないネイルアートをテシクに描くなどして、交流を深めていくことで、テシクの表情は次第に柔らかくなっていきます。

ところが、ソミはある事件に巻き込まれ、誘拐されてしまうのです。何もできない気弱なテシク……と思いきや、彼は常人では考えられない異常な強さを誇り、テシクを救出するためにたった一人で、麻薬組織や警察と戦います。

主人公テシクを演じるのは、韓流ブーム黎明期に四天王とよばれていたウォンビン。誰が見てもわかる爽やかで一点の曇りもない男前の彼ですが、本作では孤独な男を演じ、何を考えているのかわからない表情を随所に見せています。

これまで紹介してきた映画と一味違うのは、少女が物語の途中で誘拐されるところ。心温まる二人の交流は、前半にギュッと凝縮されています。だからこそ、日常を壊されてしまった悔しさが強調されており、普段は無表情のウォンビンが、少女のことに関することになると喜怒哀楽を露わにする姿にグッときます。

凄惨な暴力描写が目立つ本作ですが、その暴力性は少女を救いたいという主人公の思いと見事に共鳴し、おぞましさよりも美しさが勝る作品になっています。

Copyright (c)Why Not Productions, Channel Four Television Corporation,and The British Film Institute 2017. All Rights Reserved.(c)Alison Cohen Rosa / Why Not Productions

“おじさん×少女”は守るものと守られるもの、人生の先達者と未熟者という関係の中で、二人の間に流れる愛情が物語を盛り上げます。『ビューティフル・デイ』では、二人の間にどんな愛情が流れ、物語が展開されていくのか楽しみですね。

(文/塩谷友幸@H14)