『海猿』シリーズの羽住英一郎監督が、公道自動車レース「ラリー」に生きる兄弟を描いた『OVER DRIVE』。そこで、若き天才ドライバーである弟・直純を演じた新田真剣佑が劇中同様、熱のこもった撮影エピソードを振り返った。

弱みを見せない魅力的なキャラクター

Q:本作の台本を最初に読んだときの印象を教えてください。

もともとモータースポーツについて、よく知らなかったのですが、脚本を読んだときに、とにかく面白かった。それで、この素晴らしい直純という役を何としてもやりたい! と思いました。もちろん、モータースポーツについて知らなくても、100%楽しめる映画になっていますが、僕はモータースポーツの魅力にハマリました。本当はブラジルや海外にも観戦に行きたかったんですが、スケジュールが合わずに行けなくて残念でした。いつか、行きたいです。

Q:レースで攻めの走りをする直純の激しいキャラクターについては?

直純は怖いもの知らずのレース馬鹿というイメージかもしれませんが、彼は彼なりに、いろんなことを抱えながら走っているドライバーだと思うんです。ある人との約束を守るために、プレッシャーと戦いながら走っている。でも、その弱みみたいなものを誰にも見せない。そこが僕にとって魅力的なキャラクターでした。

Q:ちなみに、ご自身と直純との共通点があれば教えてください。

直純に成り切らなければいけなかったので、直純のことばかり考えていました。直純に限らず、自分はこのキャラクターに似ているとか、似ていないとかを考えることはないです。そもそも、僕は普通の人間としての真剣佑に興味がない。演じている新田真剣佑にしか興味がないです。

Q:直純はかなり負けん気の強いタイプですが、ご自身はいかがですか?

基本的に、僕は相手に譲るタイプですが、今回の直純もそうですが、役に関しては譲りたくないです。自分じゃなきゃできない役もあると思っています。弟とは仲がいいので、兄弟ゲンカをした想い出もありませんし……。ただ、アメリカで空手の大会に出場したとき、友達が一回戦で負けてしまったんです。その相手と決勝で戦うことになったときは、さすがに「こいつには負けられない」と思いました。もちろん、友人の仇を取りました。

初めてわかった弟の気持ち

Q:劇中、素晴らしい肉体美を披露されますが、どのようなトレーニングをされましたか?

実際のドライバーさんはみなさん、とにかく細いんです。監督から別に「こういう身体づくりをしてほしい」と言われたわけではありませんが、“世界に通用するドライバー”という直純のキャラクターに説得力を持たせたかったこともあって、自分なりに役に近づけるよう心掛けました。とはいえ、特に語れるようなことはしていません。普段もジム通いなどはしていませんし。

Q:設定上、ドライバーである直純と兄・篤洋率いるメカニックチームは常に衝突していますが、演じる上ではいかがでしたか?

衝突する芝居は、お互い信頼し合っているからこそできるわけで、東出(昌大)さんをはじめ、メカニックチームを演じられた役者さんには遠慮なく、全力でぶつかっていきました。北九州で1か月間一緒に生活しながら撮影していたので、そうやって仲良くなれたのは、とてもありがたいことでした。休憩中はみなさんと盛り上がっていても、スタンバイエリアに入ると、勝手にスイッチが入って、直純に成り切ることができました。

Q:兄役である東出さんとの撮影エピソードを教えてください。

一緒に自転車レースをするシーンがあるんですが、北九州ではずっと2人で自転車移動していて、気持ち良かったです。さすがに、劇中で使う自転車を使うと怒られてしまうので、別の車種でしたが……。あと、印象的だったのは、夕日を狙って撮影をしたシーンがあって、30分の間にすべてを撮り切らないといけないことでした。そのため、当日は朝からずっとリハーサルをして、その30分に懸ける想いがとても刺激的でした。

Q:男同士のぶつかり合いが非常に熱くてカッコよかったです。

篤洋と直純のシーンは、男同士のぶつかり合いだけではなく、いろいろ熱いものがこみあげるシーンになっていて好きです。撮影現場での緊張感もスゴいものがありましたし。僕には弟がいるんですが、演じているうちに、「弟って、こういう気持ちなんだ」という新しい発見ができました。それをどういう気持ちか、言葉にすることは難しいですが、私生活ではお兄さんがいる東出さんも「兄貴ってこんな気持ちなんだ」と言っていましたし、どこか通じるものがあったのかもしれません。

20代は挑戦の時期

Q:現在21歳である新田さんにとって、カッコいい男、大人の男の条件とは何だと思いますか?

年齢はあまり関係ないと思っていて、その人の考え方や生き様に惹かれます。俳優としては、引きこまれるような素晴らしい芝居をする方に惹かれます。先輩で言えば、吉田鋼太郎さん、小市慢太郎さん、寺尾聰さん、國村隼さんなど、名前を挙げるとキリがありません。

Q:『パシフィック・リム:アップライジング』というハリウッド大作の出演を経た今、今後の展望のようなものはありますか?

世界を意識するというよりは、今は目の前にある仕事をひとつひとつやれることに意識を集中してやっていきたいです。役はタイミングだと思っているので、今後もいい役とめぐり合っていけたらと楽しみに待っています。20代は挑戦の時期だと思っているので、お芝居ができるのであれば、映画、テレビ、舞台など、どのジャンルでも挑戦していきたいと思っています。

ヘアメイク:粕谷ゆーすけ(ADDICT_CASE)

スタイリスト:櫻井賢之

取材・文: くれい響 写真:日吉永遠