【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯04】

「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

人生の酸いも甘いも知り尽くした3人の中年オジサマたちが主役の『30年後の同窓会』。うち1人の息子の死をきっかけに再会した彼らが、封印していた過去を振り返り、トラウマや孤独から救済される姿を描いたロードムービーだ。

監督は、シネマ史に残るラブストーリー『ビフォア』3部作(*)で男女の切ない17年越しの関係を、『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年)では少年と家族の12年間をリアルに綴ったリチャード・リンクレイター。オジサマ目線でも、そのオフビートなキャラ設定と切ないムード演出は健在で、あたたかい余韻の残る1本だ。

日米のアピール・ポイントの違いに注目

『30年後の同窓会』6月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他、全国ロードショー
(C)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

そんな同作は、日米におけるアピール・ポイントが大きく違う点も興味深い。

3人が笑顔で寄り添う日本版のポスターからは、すぐにイメージできないが、同作はれっきとした戦争映画でもある。ベトナム戦争やイラク戦争、仲間の死、救えなかった命、うやむやにされる戦死の理由、アルコール、ドラッグ、トラウマ……と、題材は深刻でダーク。

米国では原作の小説と同様、“Last Flag Flying”という国旗を掲げたタイトルで公開され、「愛国心とは何か?」「戦争は誰のためか?」を問い、「退役軍人のケア」について考えさせられる作品として位置付けられている。

本作がアメリカで“反トランプ映画”と呼ばれたきっかけ

さらに同作が米プレミアとなる直前、トランプ大統領と米プロスポーツ界の間で国歌斉唱をめぐる亀裂が生まれたことで、“反トランプ映画”とも呼ばれた。発端は、警官による黒人射殺などの人種差別に抗議したアメリカンフットボール選手たちが、試合前の国歌斉唱の際に、片膝をついたまま起立しなかったこと。

『30年後の同窓会』6月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他、全国ロードショー
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トランプ氏が、これを国家への冒涜だとし、「選手たちはクビ」「ファンは試合をボイコットせよ」という趣旨の暴言を吐いたことで、反発ムードが高まったのだ。NFL側も選手たちを擁護する姿勢を見せたが、一方で、「スポーツと政治は切り離すべき」「愛国心と現政権への反発心は混同すべきでない」といった声も上がった。

こうした一連の混乱により、“星条旗”がホットなトピックとなり、同作がその議論の象徴となったのだ。12年もあたためていた企画が期せずして、反トランプ映画として見られるようになったリンクレイター監督だが、前述の舌戦について「トランプが選手たちに憎まれ口をたたいたとき、抗議せずにはいられない深い理由を感じたよ。だから、選手たちの姿勢をうれしく思う。それが必要な時期なんだ」とコメント。“反トランプ映画”と呼ばれることに、暗黙の理解を示しているかのようにも思えた。

日本での受け止められ方は…?

『30年後の同窓会』6月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他、全国ロードショー
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一方、日本での公開タイトルは『30年後の同窓会』。米国の戦争や政治的な要素はあくまでも舞台であり、中年世代の友情ドラマが軸であることを押し出している。それも納得だ。悪友3人がはしゃぎながら、人生初の携帯電話の契約をするシーン(でも、ガラケー)、インターネットのことを「WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)」と呼び続ける時代錯誤な姿、初体験をからかいあって爆笑するボーイズトーク、添い寝しながら、「一緒に生きてこうよ」と誘うシーンなどは、微笑ましさに溢れている。

3人の経歴が元軍人ではなく、元不良グループでも、仕事の元同僚でも、学生時代の親友でも、苦楽をともにし、当人同士にしか共有できない“あの頃”を持っている大人なら、誰でも共感できるものだろう。

『30年後の同窓会』6月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他、全国ロードショー
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ブライアン・クランストン、スティーヴ・カレル、ローレンス・フィッシュバーンという配役も最高だ。爆笑シーンなどは心の底から爆笑しているのがわかるのだが、この絆を築くために、3週間のリハーサルを行ったというのも、リアルさと自然な相性を大切にするリンクレイター監督らしい。

『30年後の同窓会』は、6月8日(金)、全国ロードショー。

(Avanti Press)

*『ビフォア』3部作とは、『ビフォア・サンライズ/恋人までの距離』(1995年)、『ビフォア・サンセット』(2005年)、『ビフォア・ミッドナイト』(2014年)のこと。