不死身の治癒能力を持った赤いマスクのおしゃべり傭兵が卓越した戦闘技と軽口連発で悪党どもを容赦なくぶっ倒していく、『デッドプール2』(現在公開中)はいわゆるスーパーヒーロー映画でありながら、一筋縄でいかない毒と楽しさを持ったチャーミングなアクション・エンタテイメントです。

特徴のひとつは、なんと言っても15歳未満鑑賞不可のR指定。

ヒーロー映画は、ファミリー層つまり親子連れにも楽しんで欲しいため、R指定になる例は非常にめずらしい。しかし、本作で描かれる戦いはかなりバイオレンスだし、きわどいジョークも連発します。原作のコミック自体、そういった描写が多く、こういう過激さがデッドプールの魅力です。映画でも、その良さを損なわさせないために、R指定覚悟の表現にふみきっているのです。

映画から飛び出す「いじり」の演出

(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

コミカルなバイオレンス活劇としても楽しめますが、デッドプールがユニークなのは“第四の壁を超える”という力。

この“第四の壁”というのは舞台の演出方法の1つで、登場人物がステージからお客さんに向かって話しかけてくるやり方。デッドプールはコミックでは読者に、映画ではスクリーンから観客に語ってきます。つまり、デッドプールは自分がフィクションの中の人物と認識しているわけです。だから、デッドプールのギャグは、他のアメコミ映画やポップカルチャーをいじったものが多い。

たとえば、デッドプールは元々、X-MENシリーズに登場する1キャラとして誕生しました。そのため、デッドプールの映画にもX-MENが登場しますが、その出演シーンが少ない。これに対しデッドプールは、「予算をケチったからこれだけしか出ないのか」と言うのです。

新作はさらに過激なギャグ満載

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『デッドプール2』では、前作よりもさらにエスカレートしたギャグが満載。ネタバレになるので詳細は控えますが、デッドプールと対決する“ケーブル”を演じるジョシュ・ブローリンのネタが目立ちます。

ブローリンが、過去に出演した『グーニーズ』(1985年)や、DCコミックが原作の『ジョナ・ヘックス』(2010年)に関するネタ、さらに『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のサノス役であることを意識したおちょくりが出てきます。またブローリンは、名女優にして歌手のバーブラ・ストライサンドの義理の息子で、そのことに触れたある“すごいネタ”も出てきます(笑)。個人的に一番過激発言でした。

また、デッドプールを演じるライアン・レイノルズ自身のキャリアにもメスを入れています。劇中“デッドプール=ライアン・レイノルズ”と明確に宣言するシーンがあるのでお見逃しなく。

僕らがデッドプールを応援したくなる理由

(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

こう書くとおふざけ映画っぽいですが、ヒーロー映画としても筋が通っていて、今回は一人の少年の心と未来を守るために戦います。また前作よりX-MEN色も強まりました。X-MENコミックの人気キャラで、今まで映画にも登場したけど今一つ活躍できなかった、ある悪役キャラが思う存分暴れてくれるのでこれも嬉しい。歴代X-MEN映画の中で『デッドプール2』はアクションが最もかっこいい。

ちょっと過激なシーンはあるけれど笑えるし、ヒーロー映画としても見応えあり。それがデッドプール映画の魅力ですが、やはりこれだけ人気があるのは主人公の持つ“愛らしさ”ではないかと思います。

デッドプールは、元はすご腕の傭兵でした。しかし、死の病に侵されたために参加した人体実験で現在の、ほぼ不死身の体になってしまったのです。さらに、その代償として顔がただれてしまいました。

人生も顔も奪われたが、それをマスクで隠し、つらく重い人生にギャグを飛ばしながら、前向きに進んでいるのです。デッドプールは死ぬことができないので、生きるしかない。だから彼なりに現実を茶化しながら受け入れている。どこか共感しちゃう奴です。

しかも“ここ一番”で、かっこよく決めてくれます。そんな彼が画面の向こうからガンガン僕たちに話しかけてくれる。応援したくなっちゃいますよね。デッドプール好きの人はきっと彼を憧れのヒーローというより、友だちみたいに愛しているんでしょう。

ライアン・レイノルズのデッドプール、この先も続けて欲しいのです!

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(文・杉山すぴ豊)