人気脚本家・内館牧子と中田秀夫監督、さらに舘ひろしがイメージと真逆の定年男を熱演することで話題の本作で、彼に夢を与える女性を演じた広末涼子が、年上男性との恋愛観や夫婦観を語った。

30歳も年上の男性との恋はNG!?

Q:チャーミングかつキュートでいながら、主人公を惑わせる罪作りな女性役でしたが、演じることの難しさはありましたか?

サジ加減は難しかったです。台本では、いわゆる愛人になりそうな小悪魔的な女性とも、そんなつもりはないのに勘違いさせてしまう天然で文学的な女性とも、どちらにもイメージできました。男性の夢の存在としても、女性からの共感という意味でも、わたしは後者で演じたいと思っていて、中田監督も同じ意見だったので、スタート地点でのブレがなくてよかったです。ただ、意外と芝居のストライクゾーンが狭かったです。女性は天然を装っている人を見抜きますからね(笑)。そこのバランスは、彼女の文学少女の部分が助けになってくれました。舘さん演じる壮介さんとの接点の部分でもあるので。

Q:壮介は30歳ほど年上。広末さんご自身は、その年代の男性と恋はできますか?

リアルに考えると、自分の父親くらいの年なので、ちょっと複雑な気持ちになります(笑)。わたしが演じた久里(くり)さんも、壮介さんに対する思いは、同郷で趣味が似ていたことから生まれた好意で、男女という感情ではなかったと思います。ただ、舘さんのお美しさとセクシーさなら、ありかもしれません(笑)。

期待を裏切らない舘ひろし

Q:舘さんと共演された感想は?

わたしが一番テレビっ子だったころに『あぶない刑事』シリーズが大人気だったので、世代的にド・ストライク。憧れていた人ですから、最初にリハーサルでお会いしたときに、すごく緊張しましたがとてもうれしかったです。久しぶりに特別なものを感じました。舘さんは期待を裏切らない方でした。ダンディーで、セクシーで、スレンダーでいらっしゃる。わたしはもっと「オレについてこい」的なイメージを持っていましたが、すごく腰が低くて謙虚。格好つけずに、いろいろなお芝居を監督にプレゼンして、セッションしていらっしゃいました。黒木瞳さんとの夫婦役も、お二人とも美しすぎて「こんな夫婦いない!」と思ったんですが、実際に役となるととてもリアリティーがあって、さすがだと思いました。あのお二人だからこそ出せるキュートさがありました。

Q:壮介が久里に恋したと知って、妻である千草は応援しますよね。そういう夫婦像を、広末さんはどう感じられましたか?

黒木さん演じる千草の妻としての強さや現実感にとても共感できました。恋を応援するというのも、一番大切な人の喜びや生きがいを応援しているわけで、恋の後押しをしているわけではない。自分がすごくこの人を理解していて、自分が夫にとって、いつか帰ってくる“港”だとわかっているんです。そういう、人としての大きさみたいなものを持つ妻像が素敵だと思いました。ただ、わたしはまだこの世代を経験してないので、この世代に夢を抱いています。いわゆる定年的なことで夫婦の共有する時間やリズムが変わっても、求めあう関係でありたい。子育てや仕事から解放されたら2人で一緒の趣味を持ちたいとか、旅行が楽しめるんじゃないかとか、そういう夫婦の形に憧れます。甘いですかね(笑)。

終わらない女であるために

Q:「終わった人」ならぬ「終わらない女」になるために、ご自身がしていることはありますか?

若いころは、年を取って「太った」「劣化した」と言われるようになったらこの仕事を辞めようと思っていました。女優イコールきれいであらねばというイメージがありました。でも、自分が年齢を重ねて、若いときには見えなかった視点や視野ができて、表現できることも増えました。10代のころより30代のいまのほうが役の幅が広がって、表現もメッセージできることも変わってきたと思うんです。だから、40代や50代になったら、もっと見えるものが変わって、表現も増えると信じています。この仕事は終わりのない仕事です。ずっと続けていきたいと思っているので、「ちゃんと年を重ねること」が、わたしの“終わらない秘訣”だと思います。

Q:近年の広末さんは、本作での天然系文学女性をはじめ、モラハラにあって過ちを犯す主婦や、元ヤンキーの医者の奥さん、人間離れした女医など、正統派ラブストーリーから少し離れた役柄が多いように思います。何か心境の変化があったのですか?

自分でも似通った役よりはいろいろな役にチャレンジしたいと思っていますけど、わたしが企画を立てているわけではなく、こればかりは出会いだと思っています。世代的にそういう時期なのかもしれません。でも、そういうチャンスをいただけるのはありがたい限りです。できるだけ真っさらで、いろいろな色にしてもらえるのが、役者としてはラッキーだと思っていますし、そういう素材でいたいと思っています。

Q:そのために心掛けていることはありますか?

いろいろな役をやることで、「こんな役はやらないよね」と思われないようにしているかもしれません。わたしとしては、役の種類にとどまらず、主演かどうかとか、舞台なのか映画なのかというフィールドにもこだわっていないので、その意味では、窓が大きく開いています。今後もそれは変わらないです。

取材・文:早川あゆみ 写真:杉映貴子