映画の撮影現場訪問で大学キャンパスをお邪魔したときに、その傍らで学生たちが「ゾンビもの」の自主映画を撮影している光景を、ときたま目にすることがある。

生きる屍として人を食らうゾンビ。噛まれた者もまたゾンビと化して人を襲う。そんなシンプルな構造の世界観はホラーとして、ダーク・ファンタジーとして、たとえ低予算でも成立させやすく、また手作り感覚の血糊や特殊メイクなどを駆使することで、日常からほんの少しズらした極限状況を構築しやすいという利点もあるのだろう。

そういった魅力もあってか、昔も今もゾンビ映画は後を絶たないが、最近はただ単にゾンビが人を襲う恐怖そのものを描くのではなく、あくまでもゾンビをひとつのモチーフとしたラブストーリーであったり、コメディであったり、人間ドラマであったりと、さまざまなジャンルに飛躍させたものも増えてきている。

『トウキョウ・リビング・デッド・アイドル』もそういったユニークな仕掛けの1本である。

ゾンビ化するまで72時間!血清求めて闘うアイドル!

本作の舞台となるトウキョウは、ゾンビが害虫のように普通に発生してはゾンビハンターによって駆逐されるという世界観の街である。そんなトウキョウで活躍している3人組の人気アイドル・ユニット“TOKYO27区”の神谷ミク(浅川梨奈)がライヴ終了後、突如現れたゾンビに噛まれてしまった!

噛まれた感染者は即、強制収容されて抹殺される世の仕組みではあるのだが、ミクは隙を見て逃亡! ゾンビ化するまでのタイムリミット72時間のうちに生きる道を求め、偶然見つけた探偵事務所の犬田(尚玄)に協力を要請。かくしてミクと犬田は、ゾンビ化を抑えるゾンビ血清を求め、全国指名手配の網を潜り抜けながら調査を開始する。しかし、そんな彼女たちの前に、ゾンビ狩猟協会会長の娘で最強の女子高生ゾンビハンター如月(星守紗凪)が現れ……。

と、ここまで記せばおわかりのように、本作はホラー映画というよりも、あくまでもゾンビに噛まれたアイドルの生存闘争を描いた、美少女サバイバル・アクション映画である。

また、ヒロインのミクはこのところユニットの現状に苛立ちを隠せず、ほかのふたりと衝突しがちだったのだが、こうした一大トラブルによって逆に仲間との絆や、連帯、友情といった意識を取り戻していく青春ものとしての一面もさりげなく描出されている。

アイドルとゾンビものの相性の良さ

ミクを演じているのはアイドルグループ・SUPER☆GiRLSのメンバーのひとりで「1000年に一度の童顔巨乳」の異名をとり、また『人狼ゲーム マッドランド』(2017年)、『恋と嘘』(2017年)、『honey』(2018年)など女優としても大いに飛躍中の浅川梨奈。

特に、テレビ&映画で展開された女子高生麻雀バトル『咲―Saki―』シリーズの主要キャラ、巨乳ツインテール美少女・原村和(のどか)役はあたかも原作漫画から飛び出してきたかのような好もしい存在感であったが、今回はそのイメージを一新させるに足る好演。アイドルとしての赤裸々な野心やもがき、そして若さゆえのはつらつとした瑞々しさが、ゾンビというグロテスクなモチーフと巧みに対比されながらの相乗効果をもたらしている。

もうひとり、忘れてはならないのが女子高生ゾンビハンター如月に扮した星守紗凪。制服姿での華麗で壮絶なソード・アクションに、美少女アクションものの醍醐味をとくと堪能させてくれる素晴らしさ! さらには意外や意外、彼女がもたらすアイドル映画としてのあっと驚く描写もあるのだが(個人的には、そのシーンが一番好きだった!)、これはもう観てのお楽しみ!

10代を中心とする美少女アイドルにとって、ホラー・ジャンルの映画もしくはドラマ、Vシネマ出演はある種の通過儀礼となって久しいものがある。中でも、ゾンビものの場合は鮮血のバイオレンス・アクションというアクティヴな要素にも重心が傾く分、その肉体を駆使した激しくダイナミックなパフォーマンスが、彼女ら個々の魅力を巧まずして醸し出す効果をもたらしてくれると思う。

(最近では、ヤクザものの要素の中に家族愛を忍ばせた品川ヒロシ監督『Zアイランド』(2015年)の山本舞香や水野絵梨奈、どこかオカルティックで不可思議な雰囲気を保持しながらのサバイバル・アクションを描く鶴田法男監督『Z〜ゼット〜果てなき希望』(2014年)の川本まゆ、木嶋のりこ、田中美晴などが印象深い)

アイドル戦国時代とリンクするゾンビもの

本作の監督は『ゆるい』『ラーメン食いてぇ!』などの熊谷祐紀。やはりゾンビ映画枠の中で美少女たちのパフォーマンスを際立たせながら、双方の資質を魅力的に屹立させようとしている姿勢に好感が持てる。

正直、浅川梨奈&星守紗凪のアクション映画をもっと観てみたいと思った。星守に関しては『ゾンビハンター如月』といったスピンオフ・シリーズを制作してほしいほど。

やはり美少女と鮮血とグロ、そしてバイオレンスは意外なまでに相性が良い。それはアイドル戦国時代と呼ばれて久しい業界そのものの、熾烈な人気獲得生存競争とも、どこかでリンクしているのかもしれない!?

(文・増當竜也)